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【premium限定ニュース】ファッションとITの新たな関係

テクノロジーに疎いファッション業界は絶滅する!? 3Dサイトで10億通りのシャツがオーダー可能なECが誕生

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「ファッション業界はテクノロジーに疎い」とは、業界内外を問わずよく聞く言葉だろう。だが、いまやこの業界にもテクノロジーによって変化が起きようとしている。その変化とは、「流行に左右されず、自分好みのカスタマイズを楽しむ」こと。

 さらに、変化を起こそうとしているのは、既存のファッションブランドではなく、ECサイトや工場直結のオーダー型サービスなどを展開する新興勢力だ。

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BleuFlamme創業者のJin Koh氏(右)とInsproutの代表取締役 三根一仁氏(左)

 例えば、海外では、3Dシステムでデザインしたジュエリーを工場に直接オーダーすることで自分好みのジュエリーを格安で購入できる「Gemvara」や、Tシャツや、バッグ、iPhoneケースマなどさまざまなものをカスタマイズして購入や販売ができる「Zazzle」などが注目されている。どちらも40億円を超える資金調達を行い、規模を拡大中だ。そして日本でも、DIYを基軸にしたアクセサリーや小物類をカスタマイズできるサービスが増えてきた。洋服に目を向けると、自分で描いたイラストや絵が服になる「STARted」や、3Dデザインで10億通りのオリジナルシャツが作れる「Original Stitch」などのサービスが登場し、新しいサービスが加速している。

 そうした流行の中で、今回は、「Original Stitch」を運営しているBleuFlamme創業者のJin Koh氏と、BleuFlammeに出資をしており、日本でのローカライゼーション業務を担当しているInsproutの代表取締役 三根一仁氏に話を聞いた。驚くべきことに、2人はどちらもアパレル業界出身ではない。Koh氏はこれまでBtoB向けのサービスを展開しており、三根氏はベンチャー企業に投資をしてきた経歴を持つ。ファッションと無縁だった2人が、オーダーメイドを軸としたファッションサービスをなぜ立ち上げたのか——?

Original Stitch

今年4月に日本でサービスをローンチした、10億通りのパターンの組み合わせから、自分だけのシャツをオーダーできるシリコンバレー発のサービス「Original Stitch」。200種類の生地と、袖、襟、ボタン、プリーツ、イニシャルなど、シャツの細部までインターネット上でカスタマイズ可能。店舗を持たず、同社が工場と直接やりとりすることで中間コストを削減し、オーダーメイドシャツでありながら、既成品と同等の約8000円($75)で販売している。オーダーページ<https://originalstitch.com/

――まず、Original Stitchのサービスはどのような点が既存のシャツブランドに比べて新しいのでしょうか?

Jin Koh (以下、Jin) Original Stitchは『ドレスシャツの新しい買い方を提案するウェブサイト』です。新しさは2つあります。1つは、200種類以上ある生地から好みの柄を選んで、自分の体にジャストフィットするシャツを購入できること。ショップだと、2〜3件巡って好みのシャツを見つけるのが普通ですが、Original Stitchはラージセレクションを取り揃えており、理想のシャツがワンストップで選べます。

 もう1つは、シャツのデザインをカスタマイズできること。ベースの生地はカスタマイズできないですが、それ以外、例えば襟の形、襟の裏地、袖の形、袖の裏地やボタンなど、既成品ではできない細かいカスタマイズができます。ほかにも、イニシャルのカスタマイズも。シャツにイニシャルを入れるのは結構楽しくて、自分の好きな言葉をいれてストーリーを作ったり、自分なりの表現を楽しめます。

――200種類以上の生地から、裏地やボタンまでカスタマイズできるとなると、他の人とかぶらない、自分だけの組み合わせでシャツを作れそうですね!

三根一仁 (以下、三根) そうです。10億通り以上のシャツをデザインできます。バスト、ウエスト、首回り、裄丈の4箇所を測るだけで、オリジナルデザインのシャツをオーダーメイドでお届けします。

――ただ、ウェブでオーダーメイドシャツを買うとなると、購入までのハードルが高そうに思えますが…?

Jin 購入するにはサイトにログインして、3Dデザインで生地をセレクトして襟の形や、ボタンの色、襟の裏生地などをカスタマイズしていきます。慣れれば、最短5分でオーダーメイドシャツを購入できます。ここで1番大事なのは、3Dの技術を使ってプレビューできること。10億通りのデザインができるならプレビューを見たいですよね? Original Stitchは3Dで瞬時にデザインを反映するので、襟や袖を単一生地にするかクレリックにするかを見比べたり、襟の形をラウンドにするかスタンドにするかを変えてみたりなど、見比べたり悩んだりしながら納得のいくデザインができます。この技術はシャツブランドの中ではOriginal Stitchしかありません。

――確かに他のファッションブランドでは見たことがありません。ただ、こうした3Dの技術はすでにゲームやアプリなどの分野ではあたりまえのものように見えます。他のファッションブランドが3D技術を使って似たようなことをやっていないのは、なにか理由があるのでしょうか?

Jin Original Stitchは、このシステムを開発するのに3年かかりました。スマホでも見えるようにHTML5で作ろうと思うと技術的に難しい。コピーしたいと思ってもなかなか真似できないと思います。

三根 通常のアパレルメーカーさんがやっていないのは、オーダーメイドシャツの市場が小さいので、売り上げがそこまで見込めない中であえて難易度が高いことをやるという問題が1つ。あとは、比喩として正しいかは分からないんですけど、アパレルメーカーさんが経営体質の古い会社が多いなので。工場自体もこういった受注生産に対応していないことも多いです。

 あと、既存のビジネスモデルの逆を行っているのもあります。通常、アパレルメーカーさんは、流行をキャッチアップしつつ、大量生産でものを作ってないといけない。我々は、カスタマイズオーダーなので流行に左右されない。在庫を抱えて収益ロスになることもありません。

――と言うことは、流行をキャッチアップするというよりは、選択肢を提供するという発想なのでしょうか?

三根 ところが、実はけっこう流行もキャッチアップしていて、Original Stitchはフレックスジャパンという業界の中で3本の指に入る生産工場でシャツを作っています。ブランド名は明かせませんが、結構なハイブランドやお馴染みのブランドの生産もしています。なので、流行の生地はたくさんある。その中でも流行に左右されにくいクラシカルな生地を提供しています。

――なるほど。工場に知見があるわけですね。ところで、Original Stitchの売りはネットでオーダーメイドシャツが作れることです。ただ、自分の体のサイズって普通は分からないと思うのですが、そのことについては?

Jin 自分のサイズが分からない方に、サイジングガイドを用意しています。それを見ながらメジャーで測ってもらえれば。

三根 ガイドはできるのですが、結局、最終的には測らないとサイズは入れられないですね。

――でも、素人が測るとサイズミスとかあると思うんですが。

三根 そういった方のために1ヶ月は返品無料にしています。返品無料ではありますが、カスタマーサポートで工夫しているのは、お客様にもう1回サイズをいれてもらって、もう1着送るようなサポートも用意しています。そうすることで自分のサイズをお客様にわかってもらって、サイトに入力してもらうことで、次回からはフィットした商品を購入していただけると思うので。単なる返品という形ではなく、しっかりしたものを着てもらうことでリピートしてもらう方向を考えています。

――いいコトずくめな感じもしますが、一方で、ウェブで買うからこその痛烈な批判などはありますか?

三根 これは仕方がないことですが、「もっと薄い素材だと思った」とか、「厚い素材だと思った」っていう手触りの部分についてのご意見は結構あります。これは現状ネットの3Dデータでは表現しきれていません。

 ただ、シャツの品質については自信を持っていて、日本の工場で職人さんが手間暇をかけて手作業で縫っています。これについては、口頭で話すよりも動画のほうが分かりやすいので動画を作りました。

日本はカスタマイズ文化が根付いたマーケット

――最初にシャツのカスタマイズという言葉を聞いた時、日本人はあんまり手を出さないのではと思ったのですがこれについてどう考えていますか?

Jin いやいや、実は日本はカスタマイゼーションのカルチャーが大きいと見ています。例えば、スニーカーを自分好みにデザインできるNIKEの「NIKEiD」では、日本がNo.2のマーケットです。あと、スマホのケース。スマホケースをiPhoneのカスタマイズと捉えれば、売り上げは日本が世界でNo.1です。

 ほかにも、パソコンはウェブでスペックなどをカスタマイズして買うようになってきたし、音楽もアルバムではなく自分の好きな曲をダウンロードしてプレイリストを作るようになった。これもカスタマイズです。

――なるほど。日本人が気づいてないだけでカスタマイズの文化は元々あったわけですね。ではなぜ、Jinさんはシリコンバレーで起業したにも関わらず、日本から正式サービスを開始したのでしょうか? 日本はユニクロをはじめとしたファストファッションや、ドン・キホーテや100円ショップでもシャツが買えるので厳しい市場ではないでしょうか?

Jin シャツをカスタマイズできるのはオーダーメイドシャツですよね。今、日本でオーダーメイドシャツを購入しているのは55歳以上。そういうマーケットです。値段も高いから、市場規模が小さい。そして、既成品やファスファッションもクオリティはいいし、値段も安い。だから、オーダーメイドシャツを買う必要はない。でもそこに、Original Stitchはチャンスがあると思いました。25歳〜50歳までの人に、簡単に作れて既成品と同等価格のオーダーメイドシャツを提供できれば市場は広がります。この市場にいち早く参入してフラッグシップを狙っています。

2015年の春までに1日100着 2〜3年の間に100億を目指す

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――現在のOriginal Stitchの規模を教えてください。平均で1日に何枚くらいシャツが売れているのでしょうか?

Jin 現在は日本は1万8千人の登録者がいて、全世界で7万人の規模です。毎日平均50着売れています。

――今後はどれくらいの規模を目指されていますか?

Jin 来年の春までに1日100着を目指したい。

三根 国内だけを見ていると、ファッションブランドの1ブランドの売上上限が100億ぐらいだと考えていて、そこを目指していきたいというのはあります。日本のシャツの市場が3000億と言われているので3%ぐらいをとりにいくイメージです。

――ネットが発達したことでこうした技術が一般の人にも身近になりましたが、カスタマイゼーションの市場は今後どうなっていくと予想していますか?

Jin これからもっと大きくなります。まだピークではなく、波が来たぐらい。その中でコンシューマグッズのブランドは、NIKEがどちらもやっているように、既成品に加えて、カスタマイズできる商品も必要になってくる。Original Stitchは、この波に乗ってNo.1になりたい。

――No.1になるための特別な戦略などはあるのでしょうか?

Jin ネット上でユーザーにカスタマイゼーションを提供する技術と、それに対応する工場のノウハウのどちらも持っています。そこで、これからシャツだけではなくて、他のブランドのグッズをカスタマイズするコラボレーションをしたい。NIKEやユニクロは自社でカスタマイゼーションを提供することができるが、他のブランドは規模も小さいし技術もないので難しい。Original Stitchのプラットフォームを使って、他の企業とコラボレーションすることでカスタマイゼーションの市場を早めに抑えていきたい。

三根 そもそも私がBleuFlammeへ投資したのは、ファッション会社に投資したというよりはテクノロジー会社に投資したイメージです。既存のファッションブランドが見れていなかったオーダーメイド市場に投資したのです。インターネットビジネスで考えれば、ファッション会社はテクノロジー化が遅れているので、他がやってくることも少ないし、リーダーシップをとれるチャンスがあると考えています。

(文/砂流恵介)

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