サイゾーpremium  > 連載  > 彼女の耳の穴  > 【福嶋麻衣子】Pファンクの おむつをしてライブする姿に「カッケぇ!」って(笑)

──耳は口ほどにモノを言う。教えて、あなたの好きな音!

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(写真/三浦太輔 go relax E more)

Touching song

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パーラメント
『レット・ミー・ビー』
ジョージ・クリントン、ブーツィー・コリンズらによってアメリカで結成され70年代に活躍したバンド、パーラメントの3rdアルバム『チョコレート・シティ』に収録の名曲。

 高校は国立音楽大学附属音楽高校で、大学は東京藝術大学音楽学部でした。高校も大学も受験や課題が大変だったんで、社会人になってからのほうが楽に感じましたね。受験時には1日8時間もピアノを弾く生活をしていましたし、大学の講評会での作品プレゼンなんて、並み居る教授たちから本当に辛辣な言葉でツッコまれまくりますから。

 大学合格を目指していた頃に聞いていた音楽で特にハマっていたのは3つ。ひとつは、Pファンクと呼ばれる音楽のジャンルです。アメリカのジョージ・クリントンというミュージシャンが創始者なんですけど、黒人が白いおむつを履いてライブしてたりするんですよ(笑)。今思うとなぜ当時それをカッコいいと思ったのかわからない部分もあるんですが、当時は「カッケぇ!」って。高2病だったんでしょうね。

 逆に苦手なもののひとつが、ロックの精神性。ロック自体は全然嫌いじゃないけど、中高生男子あたりが「ロックだぜ!」とかイキがるのがすっごく嫌いで。私、結構原理主義者なんで、「お前、本当にわかってんのかよ!」って言いたくなるんですよ(笑)。一方のジョージ・クリントンはインタビューで、「この世の中の汚いところを指でぐるぐるとかきまぜてその匂いを嗅ぐ。それがファンクだ」なんて答えてるわけです。当時の私は「超カッケー、よくわかんないけど」と(笑)。

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(写真/三浦太輔 go relax E more)

 2つめ、高校3年生の頃に聞き始めたのがノイズミュージック。クラシック音楽史を勉強するうちに聞くようになって。シュトックハウゼンやライヒから入ったんですが、徐々に非常階段やメルツバウなんかも聞くようになりました。

 そしてもうひとつハマっていたのが、アイドルです。高校に合格するまではクラシックとジャズしか聞いちゃいけない家庭で、とにかくピアノのお稽古ばかりだったので、たまにテレビから流れてくるJポップを聞くのがギリギリ許されていたそれ以外の音楽だったんです。だから今でもポップスってすごく貴重なものという意識が強い。背徳感が残ってて、お父さんとお母さんに内緒で聞く音楽、みたいな(笑)。ちょうど2000年前後でモーニング娘。やSPEEDがはやっていたので、自然と彼女たちの音楽を好きになって、『ASAYAN』なんて毎週楽しみに見てました。モーニング娘。は、「ニッポンの未来はWOW WOW」なんていうその歌詞や、シャッフルユニットの面白さ、メンバーそれぞれの個性を生かした独特のセンスが衝撃的でした。

 藝大時代に聞いて衝撃を受けたのは、電波ソング。ノイズ系の音楽を聞いていたからこそ出会えたと思うんですけど、日本が世界に誇りうる秋葉原発のオリジナリティあふれる音楽=電波ソングだと思うんです。私が最初に知ったのは、ニコニコ動画。で、「なんだこれは!!!」と。藝大では、例えばシンセを使って音を作ったとしても、デフォルトで入ってる音源を使うと「プリセット音源野郎だ」なんてバカにされちゃう。プリセット音源をそのまま使う=ダサい、みたいな。でも、ニコニコ動画で流れてきた電波ソングは、プリセット音源をガンガン使ってるんだけど、カッコ悪いとはいわせない圧倒的な熱量があって、まあ衝撃的だったわけです。

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(写真/三浦太輔 go relax E more)

 大学を卒業後、まさにそっち系の音楽ジャンルのプロデューサーになるわけですけど、自分がパフォーマンスするのには向いてないなってずっと思ってました。藝大には指揮者の学部もあって、指揮科は一番音楽に詳しくないとできない、というような話を聞いて。「いろんな音楽をとにかく一生懸命聞いて、それで初めて指揮ができる」って話にすごく共感したんですね。広く浅くかもしれないけど、いろんな音楽を聞いてきた私の経験を生かせるのはプロデューサーなんじゃないかって。私は、自分が前に出なくてもいいんです。それよりも、自分が生み出した作品が世間ではやってるのをうしろから見て、「ひひひ」ってしたいタイプなんでしょうね(笑)。

 でんぱ組.incの楽曲でひとつここで紹介するとしたら、「でんでんぱっしょん」かなぁ。電波ソング感を残しつつ、でんぱ組.incにしか歌えない音楽を作りたいなぁと思って、試行錯誤を繰り返した末に生まれた1曲なので、思い入れが深いんです。この曲以降、おそらく今世界で一番マスタリングをこなしているであろうテッド・ジェンセンというエンジニアにお願いするようになって、音もめっちゃ良くなって。ファン人気も高い曲だし、この夏話題になった映画『渇き。』では、挿入歌で使っていただいたりもしています。

 でんぱ組.inc初となる武道館公演を見ている時は、ずっと不思議でした。今年の5月6日のことです。彼女たちは本当にオタクで、一般的なアイドル像からは良くも悪くもすごく外れた子たちだと思うんです。そんな子たちが地道にやってきた結果、あんなすごい場所でライブできるだなんて、奇跡に近いものを感じるなって。たぶん、インディペンデントの身軽さを大切にしてきたのがよかったんだと思います。

 でんぱ組.incは、これからこそがアイドル本番。メジャーになったアイドルは、消費されてなんぼ。でもそれでいいんです。すり減るもの、それがアイドルだと私は思うから。

(構成/唐澤和也)
(ヘア&メイク/ISINO)
(撮影協力/東京藝術大学)

福嶋麻衣子(もふくちゃん)ふくしま・まいこ
1983年8月10日、東京都生まれ。東京藝術大学在学中に『喪服の裾をからげ』なるサイトを立ち上げ、パフォーマンスを配信して話題となる。「もふくちゃん」という別名はこのサイトに由来。24歳にして、のちにでんぱ組.incなどが所属することとなる株式会社モエ・ジャパンの代表取締役に就任、一躍アキバカルチャーの中心人物に。現在は音楽プロデューサー、コメンテーターなどとして幅広く活躍中。

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