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ニュー・ヤンキーが思い描くヒップホップ・ドリーム

【ANARCHY】国内ヒップホップシーンを牽引する寵児がたどり着いた新境地

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――ドキュメンタリー映画『DANCHI NO YUME』の公開で注目を集めるラッパーが、メジャーデビューで勝機をつかむ。

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(写真/若原瑞昌 D-CORD)

「団地の隣にシンナー工場があって(中略)そこら辺にシンナーの袋が落ちてて、シンナー中毒だらけ」──低所得者が多い京都・向島の市営団地に住む当時26歳のラッパー・ANARCHYが、そんな記述もある自伝『痛みの作文』(ポプラ社)を出版したのは08年。父子家庭で育ち、暴走族の総長となり、少年院に入る──といった生い立ちが赤裸々に綴られていた。彼はリリックでもライフストーリーを描いてきたが、日本のヒップホップ界で頭角を現してきたMCが”ゲットー”出身者であることを思い知らされる一冊だった。

 以後、国内ヒップホップシーンの中心人物となったANARCHYは、この7月、エイベックス傘下に新設された〈CLOUD 9 CLiQUE〉より、メジャーデビュー作『NEW YANKEE』を発表したが、従来のイメージとは異なる曲も。変化の兆しは、昨年のフリー・ダウンロード・アルバム『DGKA』にあった。例えば、今作にも収録された「Energy Drink」は、不良仲間や女の子との馬鹿騒ぎを歌った派手なサウンドのパーティ・ソングである。

「『ANARCHYはこういうラッパーだ』と自分でも決めつけてる部分があったんです。でも、『DGKA』で新しい表現を見つけることができました」

 今作は、『DGKA』の雰囲気に近い曲もあるが、ポリティカルな曲や切ないラブソングまである。では、タイトルはなぜ”ニュー・ヤンキー”なのか。そういえば昨年、『高校生RAP選手権』でANARCHYがライブをした際、聴衆が歌詞を口ずさむのを見て、彼のラップに励まされたり憧れたりする10代がいることを感じた。

「今年春の『高校生~』で審査員を務めたんですが、ヒップホップはこれからもアツいぞ、と感じました。ラップが巧い子も出てきてるし、その世代にカッコいい男でいる方法を教えたいですね」

 現に、ANARCHYの影響がうかがえる若いラッパーが活躍している。そのひとりが、今作の「Moon Child」で共演しているKOHHだ。母子家庭で育った彼は、極限まで下品で軽薄なラップを得意とするが、同曲では幼少期の悲しい情景を歌う。

「彼も片親だし、同じような団地で育ったから、近い感覚があった。『DGKA』ではおバカな曲を一緒に作ったけど、今回の曲は考え抜いて書いてもらいました」

 アルバム発売と同時期にドキュメンタリー映画『DANCHI NO YUME』も公開となった。07~08年頃のANARCHYに、米国の監督が密着した作品で、彫師の実父や向島の仲間も登場する。東京に住んで3年がたつ今の彼は、地元の仲間をどう思っているのか?

「団地の仲間は家族。子どもの頃から一緒だし、家庭環境も知ってる。友情とは違う感覚があって、あの育った環境が、今の自分になるまでのルーツですね」

 今作終盤の「Right Here」では、「仲間とここまで来た/諦める事なんていつだって出来たけど」というラインが繰り返される。過酷な生い立ちをリリックに託し、向島の暗い現実から逃れるべく仲間とヒップホップで金を稼ぎ、のし上がることを彼はラップしてきた。そんなポジティブさは活動当初から一貫し、今作でのメジャーデビューの動きとも重なる部分がある。「南の島を買って、お金のためじゃない音楽を作りたい」と夢を語るANARCHY。本誌前号のEXILEの記事を眺めつつ、こう続けた。

「昔はダンスで稼ぐのはバックダンサーが限界だったのに、ここまでシーンをデカくしたEXILEはスゴい。僕はそれをヒップホップでもやりたいので、刺激になります。ヒップホップは僕を見て勉強できるようにしたい」

 きっと、ANARCHYらの”ここ”は今後も上昇していくのではないか。そのたびに、ニュー・ヤンキーが思い描くヒップホップ・ドリームはまた膨らむはずだ。

(文/中矢俊一郎)

ANARCHY(アナーキー)
1981年、京都府出身。95年にラッパーとしての活動を開始し、00年には京都の仲間たちと結成したヒップホップグループ、RUFF NECKのメンバーとして注目を集める。06年のファーストアルバム『Rob The World』から本格的にソロ活動をスタート。08年にはラッパーとしては異例の自伝『痛みの作文』(ポプラ社)を出版し、話題となった。1981年、京都府出身。95年にラッパーとしての活動を開始し、00年には京都の仲間たちと結成したヒップホップグループ、RUFF NECKのメンバーとして注目を集める。06年のファーストアルバム『Rob The World』から本格的にソロ活動をスタート。08年にはラッパーとしては異例の自伝『痛みの作文』(ポプラ社)を出版し、話題となった。

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『NEW YANKEE』
ANARCHYのメジャーデビューアルバム。今年元旦にエイベックスからのメジャーデビューを発表し、契約までの流れを追った映像はYouTubeで公開された。

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