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【premium限定連載】出版界 ホンネとウソとウラ話 第6裏話

出版流通を揺るがす”終わりの始まり”…取次化する巨人・アマゾンにすり寄る出版社たち【1】取次再編

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田中達治『どすこい 出版流通』(ポット出版)

 アマゾンと出版社との直取引がここ1年で拡大している。その背景にあるのが、楽天ほか、大手出版社や大日本印刷による業界第3位の取次・大阪屋を救うための出資だ。競合相手の楽天の傘下に入る予定の大阪屋とは日本上陸以来の取引先だが、同社との決別を視野に入れ、自らの取次機能を強化しようと急ピッチで直取引の物流網を整備し始めている。これはアマゾンが粛々と事業を拡大するというレベルを超え、出版流通を大きく揺るがす”終わりの始まり”なのである。

 ここで少し、出版界の流通事情について説明が必要だろう。そもそも出版界は、出版社(製)、取次(卸)、書店(販)の3者が、1冊1冊の書籍・雑誌の売上をレベニューシェアするかたちで売上を分け合っている。大昔は三位一体などという言葉を使ってこの3者の強い関係性を表現していた。また、この3者による流通ルートを”正常ルート”などと呼んで権威化すらしていた。

 一般にはよく知られていないが、その3者の中で出版流通を担う取次の力は圧倒的に強い。トーハン、日販といわれる2大取次会社は、社員数1500人前後、売上高は5000億~6000億円にものぼる大企業(出版界では)なのである。その一方、出版社は講談社、小学館、集英社、KADOKAWAでも1000億円台の売上(出版物以外を合わせても)に過ぎない。書店でも、ナンバーワンといわれるTSUTAYAチェーンでも1100億円である。取次の株主である大手出版社、卸し先として重要な大手書店チェーンを除けば、取次会社にまともに太刀打ちできる企業はほとんどないのだ。それゆえ、出版社を起業する際には取次を訪ねて、取引を”お願いする”。取次が認めれば(取次が提示する条件を出版社が飲めば)、自社の出版物が全国の書店に並ぶことが可能となるのである。そんな強大な力を取次が持つがゆえに、一般の出版社は直取引などとはお口にもできないのが昔の出版界であった。

 しかし、この3者の関係に一穴をうがったのが、アマゾンの登場とその躍進である。アマゾンも2000年に日本で開業した当初は例に漏れず、取次を通して出版物を仕入れていた。4000社あるといわれる出版社と一朝一夕に取引できる訳もない。初めは件の大阪屋を主要取次として取引を始め、今では業界ナンバーワンの日販が主要取引先となっている。

 アマゾンが怖いのは、この一方で、05年に千葉・市川に自社の物流センター「アマゾン市川FC」を開設し、翌年にはメーカーとの直取引サービス「e託販売サービス」を開始したことにある。出版界ではタブーとされていた直取引を大っぴらに出版社に呼び掛け始めたのだ。その数は7年で2800社前後(2013年末現在)に達しているそうだ。その中には大手出版社は含まれていないが、アマゾンの売上シェアの高まりとともに、近年は中堅以上の出版社が同サービスを利用し始めているとも聞いている。

 ある出版社の営業担当者によると、「雑誌の売行きがどんどん悪くなっている中、とくに取次では対応していないバックナンバーの販売にも対応していることがきっかけで直取引をするようになった。今はムック類や雑誌バックナンバーで直取引をしている」と言う。別の出版社の営業は「確かに卸し率は取次よりも条件はきついが、アマゾンからの入金が取次よりも早い。合わせて売上アップのための年間契約も結ぶと、担当者がつくのでいわゆるカート落ちなどにも対応してもらえるメリットもある」と話す。

 当初は一部の出版物に限定して出版社はe託販売に参加するのが通例だったようだ。しかし、近年になって、書籍・雑誌・ムックの新刊から既刊までのすべての出版物をアマゾンに直接卸す出版社も出始めているというのだ。

 ある出版関係者は言う。「きっかけは昨年に朝日新聞や日経新聞に掲載された、楽天が大阪屋へ出資し、傘下に置くという記事だった。仕入れ先である大阪屋が、ライバル会社・楽天の子会社になることを看過できなかったアマゾンは、『大阪屋との取引を近い将来に停止する、その代わりにe託販売サービスの契約をしてほしい』という話を出版社に持ちかけ始めた。しかも、今サインすれば期間限定ではあるが従来よりもいい条件で契約するとまで言って参加を促していた。取引条件の緩和を口にするほど焦っているようだった」

 また、別の営業担当者は「仕入先などは2社以上と取引するというのがアマゾンの企業理念。大阪屋がダメならば、それ以外のもう1社を模索するしかない。しかし、それ以外の取次会社ではシステム面などでアマゾンには対応できなかったと聞いている。それゆえ、直取引を拡大させているのだろう。あの有名な出版社もすべての商品を直取引していると聞いている」と話す。

 アマゾンは1月下旬に開かれた方針説明会で、【1】全商品をe託販売にして、第1引当てにしてほしい、【2】取次との関係が気になる出版社は取次を第1引当にする代わりに、e託を第2引当にしてほしい――と出版社に要望した。さらに、市川・堺・小田原など全国5カ所にあるアマゾンの出版関係の倉庫に出版物を送品する際に、出版社の手間を省くために専用倉庫を設けると説明した。

 巨大ネット小売企業が、出版流通の要である金融と物流機能までをも持ち始めようとしている。まして、ますます高まるアマゾンの販売力に中堅どころの出版社の方からアマゾンとの関係強化に努め始めている。もはや、業界3者などと言っていた時代は終わりを迎えている。これまでのメリットはもう、デメリットでしかない――少なくともe託販売を実施する出版社たちは真剣にそう考えているようにみえる。

(文/佐伯雄大)

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