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第1特集
各国首脳に見る日本企業の生死【1】

イオンに農協、サムスンは死を待つのみ? 各国首脳の政策に見る日本経済の展望

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(写真/三浦太輔 go relax E more)

──長らく低迷にあえいでいた日本経済が、アベノミクスによって活況を呈している。トヨタは13年3月期の営業利益を1000億円上方修正し、1兆2000億円超と予想。さらに、トヨタに加えホンダや日産といった自動車大手、三井住友銀行などの大手銀行でも、労組によるボーナスの要求に満額回答を示すなど、安倍首相の手腕が日本経済に光明をもたらしたといえる。

 政治と経済が不可分な関係にあるのは言を俟たない。12~13年は主要各国の政治首脳交代が相次いだが、各国の政策は自国の、ひいては世界経済に影響を与えることとなる。韓国ではパク・クネが大統領となり、中国の国家主席は胡錦濤から習近平へと代わった。アメリカでは、オバマ大統領が再選。本稿では、各国首脳のスタンスを彼らの言動と共に明確にし、今後の経済の潮流を推測することで、「生きる企業」「死ぬ企業」を見ていこう。

 まず、日本の安倍首相は、これまで「美しい国、日本」を掲げ、政治的な国のあり方について言及する機会が多かった。だが、現在こうした主張は控えめに、経済政策に対する主張を前面に押し出している。安倍首相が経済政策に力を入れる理由について、元「日経ビジネス」副編集長で経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう語る。

「06年、第1次安倍内閣は、参院選に負けたことで、ねじれ国会への対応に苦慮しました。その時のトラウマもあり、少なくとも7月に予定されている参議院選挙までは経済政策にフォーカスし、今の高支持率を維持したいはず」

『これからものすごいことになる日本経済』(徳間書店)の著者であり、アベノミクスを評価している経済評論家・渡邉哲也氏も「参議院選で勝利し、政権が安定すれば、安倍首相は、法律や憲法の改正、教育制度などの再考を進め、戦後レジームからの脱却を図る安倍ドクトリンを進めるでしょう」という。今夏の参院選までは、国民の一番の関心事である「景気対策」に注力していこうということだ。その意気は、今年1月の所信表明演説で安倍首相が発した「私は、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージを提示します。断固たる決意をもって、『強い経済』を取り戻していこうではありませんか」との言葉からも伺える。

 その“次元の違う大胆な政策パッケージ”である経済政策「アベノミクス」は、「円安・株高」のトレンドを作り出した。円安によって輸出はしやすくなり、大規模なリストラを実施していたソニー、パナソニックなどの電機メーカーやトヨタ、日産など自動車メーカーといった日本の輸出産業は今後、業績を盛り返すとみられている。

 一方で当然、円高によってメリットを受けていた企業は、デメリットを被ることになる。

「その代表格が、イオンなどの流通業です。これまで、円高を背景に外国で安価な商品を製造・輸入して高い利益を得ていましたが、円安になれば値上げせざるを得ない。国内産品との間の価格差が縮まり、国内の有力ブランドと価格競合をすることになります」(同)

“デフレの申し子”といわれるような海外生産品を輸入して廉価で販売する企業は、軒並みこの問題にぶつかるため、衣料品大手のユニクロなども例外ではないだろう。

 しかし、電機メーカーなども「円安特需」に浮かれているだけでは先行きが暗いという指摘もある。

「アベノミクスの本質は、三本の矢のひとつである成長戦略、つまり“構造改革”にあります。安倍首相の狙いは、既得権益を享受している企業から権力を剥ぎ取って、産業の新陳代謝を起こすこと。アベノミクスを推進していけば、日本の産業構造は大きく変わります。

『構造改革』と明言しないのは、郵政民営化といった自由主義的な政策を取り、格差を助長したと批判された小泉・竹中改革を思い出す人がたくさんいるからです」(前出・磯山氏)

 磯山氏が続ける。

「世界の産業構造が為替だけで決まっているのであれば、円安になったらサムスンより日本企業のほうが有利ということになるが、サムスンはソニーを上回るくらいの広告宣伝費を使って、デザインや商品力を高めてきたという背景がある。単純に為替が動けば有利になるというのは幻想であり、ナンセンスなことです。例えば、工業用重機で世界的シェアを持つコマツは、円高下でも国内雇用を守っていた。円安になれば輸出益が上がるはずなので儲かるでしょう。国内の大手電機メーカーにしても、テレビの国内生産の中止や子会社の合併など、自社の構造改革に取り組んだ日立が12年3月度の決算で最高益を出していることが、それを証明しています」(同)

 経営不振を外的な要因に責任転嫁せず、努力を続けていた会社のみが生き残るということだ。また、「アベノミクス」の具体的な施策として挙げられる公共事業の増加も、国内建設業への単純なばらまきを意味するものではないと、磯山氏は指摘する。

「現在は公共インフラが老朽化し、補修・更新することが急務になっていますので、新しい道路やハコモノになんでもかんでもお金をばらまく余裕はないはずです。例えば、橋梁の補修を手掛けるショーボンド建設など、都市型の専門的な工事ができる企業以外は恩恵を受けにくいと思います」(同)

 アベノミクスによる「円高株安」トレンドを安穏と享受しようとする企業は、市場から退場することになるのかもしれない。

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