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受刑者のアイドルが歩んだ12年

【Paix2】塀の中のコンサートが300回を達成、「社会派デュオ」が人知れず抱える悩み

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──キュートな外見と伸びやかな歌声、元気を与える曲で受刑者たちの心の支えとなっているアーティスト「Paix2(ペペ)」が12年間の活動を振り返る。

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(写真/田中まこと)

「受刑者のアイドル」と呼ばれる歌手がいる。MegumiとManamiによる女性デュオ「Paix2(ペペ)」である。インディーズ時代に地元の鳥取刑務所でコンサートを行ったことがきっかけで、2001年にメジャーデビューを果たした後も全国の矯正施設での活動を継続。その回数、実に300回以上。透明感ある歌声、躍動感あふれる歌詞。「刑務所で癒やされた」「出所してからもファン」という声を聞く。

Manami 「最初はステージの勉強ができたらという思いだったんです。でも、『若い女の子が刑務所でコンサートを開くことは珍しい』と、すごく喜んでもらえて」

 2人はこの活動を“慰問”ではなく“プリズン・コンサート”と呼ぶ。それは“慰問”という言葉が上からの目線のように感じることと、被害者感情を配慮してのことである。志の高い2人だが、苦悩もあった。

Manami 「“プリズン・コンサート”に矛盾を感じることもありました。被害者や遺族の方がいるのに、私たちが受刑者を楽しませに行くのは間違っているのかなと悩んで……。でも、そこを突き詰めると歌えなくなってしまう。それなら同じ空間を過ごす貴重な機会に、被害者や遺族の方のメッセージを届けたり、元看護師のMegumiさんが体験した命の現場のお話をしたり、お説教するのでなく、何か感じ取ってもらえればと思ってMCをしています」

Megumi 「“刑務所でしかコンサートをしない”というイメージがついてしまったことで、等身大の自分が出せずに悩んだ時期もありました。『もう悪いことできないな』って(笑)。もっと勉強して取り組まないとダメだとガチガチに堅く考えすぎていた時期もありました。

 それに、メジャーデビューしたからには売れたいじゃないですか。でも、“プリズン・コンサート”は基本的にボランティア。この活動をやめて、一般的なライブをしたほうがいいんじゃないかと話し合い、考えたこともありました。10年以上の年月を重ねて、やっと『ペペのスタイルを貫けばいいんだ』と思うようになれました」

 また、かつてはメディアでの扱いに悔しい思いもした。『サンデー・ジャポン』(TBS系)の取材を受けたが、放送でペペの出番は少し流れただけ。中心となっていたのは、女性タレントの刑務所潜入リポートだった。要は取材申請の厳しい刑務所内の取材許可を得るため、ペペの取材と称して彼女たちを利用したのである。

 それに、刑務所での公演は通常のコンサートと異なる点も多い。今年、広島で受刑者の脱走事件があった直後は、代表曲『元気出せよ』を歌う際、サビで受刑者と一緒にこぶしを振り上げる振り付けを禁じられた。

Megumi 「脱走犯が捕まったばかりで、会場内の空気がピリピリしていたんです。私たちの刑務所でのコンサートが300回目ということでテレビ取材も入っていましたから、盛り上がる様子が放映されると、タイミング的に一般の方に『刑務所の管理が甘いから、脱走事件が起こった』と思われかねない。同様に、凶悪犯罪が注目されている時期は、刑務所の職員の方々も大変です。私たちも規則を破る受刑者が現れないよう気をつけています。たとえば、盛り上がりすぎたら沈静化するようなMCに切り替えたり。そこが一般のコンサートとは違いますよね」

 ペペが12年間積み上げてきたものは重い。その実績が評価され、今年、犯罪の防止や犯罪者の更生に寄与した人物に贈られる作田明賞を受賞。現在は、東日本大震災被災地でのコンサートや一般のコンサートと活動の幅を広げている。

Manami 「メッセージ性の強い私たちの曲を、もっと広く世の人に聴いてもらいたい。12年間“塀の中”で学んできたことを、今後はもっと外に向けて発信していきたいと思っています」

(文/安楽由紀子)

Paix2(ペペ)
井勝めぐみ(Megumi、1975年生まれ、鳥取県出身、写真右)と北尾真奈美(Manami、1978年生まれ、鳥取県出身、写真左)によるデュオ。00年に結成。「Paix」はフランス語で「平和」の意味。01年シングル『風のように春のように』(日本コロムビア)でデビュー。05年、法務大臣より感謝状を授与される。10月18日には、かつしかシンフォニーヒルズにて、チャリティーコンサート「元気出せよ かつしか」を開催。
公式サイト〈http://paix2.com/

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『逢えたらいいな プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』
2人の生い立ちから結成までの経緯、プリズン・コンサートを継続する上で起きた山あり谷ありのさまざまなエピソードを綴った自叙伝的エッセイ。2人が何を思い、何を伝えようとプリズン・コンサートを続けてきたのか、その胸の内が詳しく書かれている。2人を引き合わせプロデュースをしたマネージャー片山氏のインタビューも収録している。タイトルは、彼女たちの1stアルバムから。
発行/鹿砦社 価格/1470円(税込)

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