サイゾーpremium  > 連載  > 佐々木俊尚のITインサイドレポート  > 【連載】佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」/ソーシャルメディア広告
連載
佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第50回

自力で手法を編み出してこなかった ネット広告業界がスマホで不振にあえぐ

+お気に入りに追加

進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

1208_sasaki.jpg
au、ドコモ、ソフトバンク、キャリア3社の戦略は完全にスマホにシフトしている。ユーザー数に伸びしろがある今が狙い目のはずなのだが……。

 スマートフォン向けの広告が伸び盛りとされている。値下げ戦争に疲弊して頭打ちになっているネット広告業界はここに期待をかけているが、まだ広告効果の根拠は薄い。ソーシャルメディア広告も同様だ。加えて、業界特有の空気と慣例が生んだ、さらに根深い問題も存在している──。

 インターネット広告業界が、不振にあえいでいる。これまでは検索連動型広告とディスプレイ広告を軸にして成長してきたが、安値合戦が猛烈に繰り広げられ、結果として極めて利幅の薄いビジネスになってしまった。従来の事業分野がレッドオーシャン化すれば、ブルーオーシャンを目指すのが当然の進化の方向性だろう。だが、ネット広告業界はこれまで営業力をテコに成長してきて、技術力は基本的には持っていない。海外で流行している広告ビジネスを日本に持ち込み、それを営業力によって売る形のビジネスで伸びてきたからだ。だからこの広告不振をテクノロジーで打開するような手は、何も持っていないというのが現状なのである。

 今ウェブの世界で最も儲かっているのは、GREEやモバゲーが手がけるソーシャルゲーム。そこで、広告業界の中でもソーシャルゲーム開発に乗り出すところが現れてきている。しかしすでにさんざん食い荒らされているこの分野に今さらのこのこ出て行っても、果たして利益を上げられるのかどうかは怪しい。

 そこで最近、業界人の多くが期待をかけているのがスマートフォンだ。スマホの広告は今急成長していて、すでにガラケー広告の1000億円市場を上回っているという話もある。普及台数はガラケーの1億台に対してスマホはまだ3000万台ぐらいなので、伸びしろもこれから相当あるのでは? と期待されているのだ。

 スマホはガラケーのようにポータルのウェブ画面が中心ではなく、アプリが中心の世界。だからアプリに広告を掲載するのが一番の近道として、開発企業に営業電話をかけまくる広告企業も少なくないようだ。

 しかし所詮、それらは単なる期待でしかない。力強い根拠があるわけではないのだ。そもそもガラケーの広告だって、効果は怪しかった。ネット広告の側が売り出しキャンペーンを展開し、クライアントを煽った面が大きく、「20億円しか売り上げがなかったのに、1億円以上を突っ込んでクライアント向けセミナーを開き、ガラケー広告を盛り立てていた」などという話もあるようだ。

 スマホの広告は始まったばかりで、どの程度の効果があるのかはまだきちんと実証できていない。スマホなどのモバイルデバイス上では従来のディスプレイ広告ではなく、映像や音声などを使った双方向性のある広告の可能性が拓けていると説いたのは故スティーブ・ジョブズで、アップルはiPhone上で表示できるiAdという、まるでゲームのような広告モデルを作り出した。日本でも2011年から電通と提携し、トヨタ自動車やキリンビールなどがキャンペーンを実施している。しかしiAdはスタート当初はかなり注目されたものの、効果が今のところあまりはっきりせず、新しい広告の潮流を作るまでには至っていない。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年9月号

戦争と平和

戦争と平和
    • 平和を願った【ジャニー喜多川】の戦後史
    • 【スピルバーグ映画】が訴える戦争
    • アメリカの【アトミック・カルチャー】
    • 【PTSDになった日本兵】の悲しき境遇
    • 【BTSDアメリカ兵】を描いた傑作映画
    • 米軍では反発も…【LGBT自衛隊員】の憂鬱
    • 戦争を金に!【トランプ】の魂胆
    • ドラッグ、殺人【米ラッパー】の司法戦争
    • アイドルが歌う【反戦歌】と音楽業界
    • 【激戦地区】の異文化と気候の地政学
    • 【映画監督・塚本晋也】ベトナム戦争映画のトラウマの意義
    • 【映画監督・想田和弘】GoProで撮影された映画で観客が失神
    • 【映画監督・宮崎大祐】戦争の記憶を掘り起こす異常な暴力映像
    • 【ラッパー・Kダブシャイン】禁断のアメリカ史を描いたフィルムメーカー
    • 【イスラーム映画祭主宰・藤本高之】中東紛争に肉薄した3作品
    • 卍とハーケンクロイツ【ナチスと仏教】の結びつき
    • 国防としての【サイバーセキュリティ】

竹内渉、究極の"美尻"撮

竹内渉、究極の
    • 【竹内渉】が魅せた色香と素顔

NEWS SOURCE

    • 【関ジャニ錦戸】退所報道の舞台裏
    • 【ソニー】音楽ビジネス大改革の裏側
    • 【秋元司・内閣府副大臣】の疑惑とは

インタビュー

    • 【上原実矩】──"年金"で女優業に目覚める !?
    • 【田川隼嗣】──18歳が月9の現場で武者震い
    • 【釈迦坊主】──元ホストラッパーの光と闇

連載

    • 【RaMu】二郎デビューしたんです。
    • 【川上愛】スパイに間違えられたモデル
    • 【菜々子】が一番大事
    • 【動画メディア】の未来と情報発信のあり方
    • 【萱野稔人】人間は"教育"によって生かされている(後)
    • 高須基仁の/【テレビ】はもう終わった
    • 盆踊りに【使徒】襲来
    • 中国大富豪たちの【ポッドキャスト】
    • 【RIZE】逮捕で考える薬物とロック
    • 町山智浩/【おしえて!ドクター・ルース】90歳のセックス・セラピスト
    • ポピュリズム政策【MMT】は日本経済の救世主か?
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」
    • 笹 公人「念力事報」/帝国の翳り
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/マンガ『1122』ソリューションとしての不倫
    • アッシュ・ハドソンの「アングラ見聞録」
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 伊賀の里でビールを仕込む【忍者ブルワー】見参!
    • 幽霊、新しい大衆はもう猿を見ない。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』