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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第4回──MOVIE編【2】

注目すべきは稲垣吾郎の変態っぷり! "三池節"が光る『十三人の刺客』

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2010年10月号 MOVIEクロスレビュー

■ハンパなき宣伝費注入の"大作"

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『BECK』
監督/堤幸彦
原作/ハロルド作石
出演/桐谷健太、水嶋ヒロ、佐藤健、向井理、忽那汐里ほか
配給/松竹 公開/9月4日


ニューヨーク帰りで超絶テクを持つギタリスト・竜介(水嶋ヒロ)と、暗めな学校生活を送る(だが天性の歌声を持つ)コユキ(佐藤健)が出会って結成されたロックバンド・BECKが起こす数々の"音楽の奇跡"を描く。全34巻の累計発行部数が1500万部を突破した超人気マンガが原作。

【映画文筆業・那須評】
★★★★★★☆☆☆☆
フィクションならではの腕力
音楽映画において演奏と歌声をどう見せるかは、それぞれの作品のねらいにもよるので、どれが正しいとは言えない。ただ、野外音楽フェスという舞台が、非日常のドラマの起こる場所として面白いのは間違いない。土砂降りの雨のハプニングに加え、複数のステージで同時に演奏が行われるスタイルと多元中継のモニターを逆手に取り、ばらばらの観客とミュージシャンをひとつにまとめ上げていく流れは、フィクションならではの腕力が頼もしかった。

【ライター/リサーチャー・松谷評】
★★★☆☆☆☆☆☆☆
失笑ものの"実験的な表現"
バンドマンガを実写化した『NANA』『ソラニン』は、映像だからこそ可能な音楽表現にちゃんと取り組んでいた。しかしこの作品は、そこを"実験的な表現"で回避している。それは原作の踏襲でもあるが、演出がうまくないので失笑ものの結果。演出もマンガ的リアリティと実写の重力の間で中途半端になっており、堤幸彦の特性が発揮されてない。イマイチな脚本も相まって尺も無駄に長く、キャストが頑張っているだけに残念な出来と言わざるを得ない。

【映画評論家・森評】
★★★☆☆☆☆☆☆☆
原作原理主義が裏目に出まくり
堤幸彦が『20世紀少年』で標榜した「原作原理主義」は、映画原理主義がもたらした弊害と停滞をあっけらかんとブチ破る痛快さがあったと思う。しかし今回は完全に「やっちゃった感」が……。コユキの声の扱い方をはじめ、原作への配慮が裏目に出まくり、音楽映画として致命的な判断ミスが連発。やはり『ソラニン』レベルの誠実さは死守してほしかったが、これって「東宝っぽい松竹作品」の構造的欠陥なのかなあとも思えてくる。


■名作時代劇映画の三池リメイク

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『十三人の刺客』
監督/三池崇史
出演/役所広司、山田孝之、稲垣吾郎、市村正親、松本幸四郎ほか
配給/東宝 公開/9月25日


江戸史上最凶の暴君・松平斉韶(稲垣吾郎)を暗殺するため、島田新左衛門(役所広司)の下に集結した13人の刺客。対する斉韶の配下には、主君を守る300人超の侍たちがいるが、これをかわすべく新左衛門が取った秘策とは……。1963年に公開され、時代劇映画の名作と名高いオリジナルを三池崇史がリメイク。

【映画文筆業・那須評】
★★★★★★★☆☆☆
戦争か表現か、現れる野蛮な本質
時代劇や暗殺ものである以前に、これは戦争映画である。本編の大半を占める血なまぐさい乱闘シーンは、目まぐるしいカット割りやCGや仕掛けを駆使した見世物でもあり、戦争と戦争ごっこの違いは限りなくグレーに近い。そこで行われていることは戦争なのか表現なのかという、「映画」の持つ野蛮な本質が不気味に浮かび上がる。だがその戦地に向かって刺客たちが山道を行く道中の冒険は『スタンド・バイ・ミー』などを思わせて奇妙に切ない。

【ライター/リサーチャー・松谷評】
★★★★★★★★☆☆
凄まじきは稲垣の役どころ
オリジナルの63年版と比較すると、物語のバランスは悪くなっているが、"三池節"によって異様な魅力を放っている。とくに、稲垣吾郎演ずる斉韶を描き込んだ点が凄い。斉韶は単なる暴君ではなく、いわゆる「底が抜けた」存在。彼が"底"を探そうとするかのような食事シーンは凄まじい。さらに、それによって彼を暗殺する説得力(大義)も増している。ジャニーズも、よくぞ稲垣がこの役をやることを許した。この懐の広さは、サイゾーも褒めるべき!

【映画評論家・森評】
★★★★★★★☆☆☆
劇画かつ王道、三池監督の成熟
三池崇史の出力が上がっている。『クローズZERO』や『ヤッターマン』よりアクセルを一段深く踏み込んだ感じ。集団抗争時代劇の代表作として名高いオリジナルを、スプラッター感覚のえげつない劇画タッチに昇華。同時に「王道」の風格も兼ね備えた独特の成熟。『殺し屋1』の垣原と共振する変態を怪演した稲垣吾郎をはじめ、役者の活かし方も見事。台詞の臭味が少々難だが、これがヒットすれば東宝にはさらにラジカルな波が続くだろう。


■ヌーヴェルヴァーグ映画世界初リメイク

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(C) 2010「死刑台のエレベーター」製作委員会

『死刑台のエレベーター』
監督/緒方明
出演/吉瀬美智子、阿部寛、玉山鉄二、北川景子
配給/角川映画 公開/10月9日


社長夫人・手都芽衣子(吉瀬美智子)は医師・時籐(阿部寛)と不倫の恋に落ち、夫を自殺に見せかけ殺害し、2人での逃亡を企ていた。時籐が計画を実行する日、芽衣子は約束のカフェで彼を待つが、いくら待てども彼は現れない──。ルイ・マルが58年に製作したヌーヴェルヴァーグの代表的作品の世界初リメイク。

【映画文筆業・那須評】
★★★★★★★☆☆☆
オリジナルよりも正しくB級
もともと低予算映画だったオリジナル版は、作品としても「B級犯罪スリラー」を目指したという。ドジな男女が自滅するプロットは同じだが、リメイク版の役者陣の演劇的な芝居は、現代日本の景色の中では浮いて見える。しかしそのいびつさをギャグにするのではなく真面目に演出しているので、逆に人間の愚かさと迷走ぶりのおかしさが引き立っている。その意味において、本作はオリジナル版よりも正しくB級的なものを実現したのかもしれない。

【ライター/リサーチャー・松谷評】
★★★★★☆☆☆☆☆
なぜこの企画でこの監督なのか
流れはだいたい同じなので、オリジナルを知らない者はそれなりに楽しめるとは思う。が、ルイ・マルと比較すると、やはり演出的には劣る。緒方明は意識的にスタイリッシュな演出をしているが、すべて上滑り。艶やかな演出で売る監督ではないのに、なぜこの企画で緒方なのかがわからない。そもそも、なぜ今この作品をリメイクする必要があったのか。『十三人の刺客』のようにオリジナルを超える勝算がないならば、リメイクには手を出さないほうがいい。

【映画評論家・森評】
★★☆☆☆☆☆☆☆☆
寒気がする錯誤ぶり
企画として完全にムチャぶり。そもそもルイ・マルのオリジナルはラブサスペンスの黄金形というわけではなく、時代と才能が絡み合ったケミストリーの産物だし、今となってはガジェットがことごとく古びている。それを現代風に再生しようとした結果、浮かび上がっているのは緒方明の悪戦苦闘だけだ。無国籍な映像世界と気取った台詞回しは、90年代の日本映画によくあった「スタイリッシュ」を思い出して寒気がした。錯誤まみれの一本。

那須千里(なす・ちさと)
映画系文筆業。ムック、パンフレットの編集や「クイック・ジャパン」(太田出版)等の雑誌にて執筆。9月25日〜11月5日、テアトル新宿にて『ラブ&エロス シネマコレクション』公開。

松谷創一郎(まつたに・そういちろう)
1974年生まれ。ライター、リサーチャー。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆し、企業のマーケティングリサーチも手がける。著書に『どこか〈問題化〉される若者たち』(共著/恒星社厚生閣)など。

森 直人(もり・なおと)
1971年生まれ。映画評論家、ライター。著書に『シネマ・ガレージ〜廃墟のなかの子供たち〜』、編著に『日本発 映画ゼロ世代』(ともにフィルムアート社)がある。〈http://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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