サイゾーpremium  > 特集  > 全国各地に点在! 生き残りを図る個性派劇...
第1特集
一から始める映画館支配人講座 逆境のギョーカイはこう生きろ!【2】

全国各地に点在! 生き残りを図る個性派劇場の勝算

+お気に入りに追加

東京から沖縄まで、独自カラーを持つ注目の劇場はココだ!

0912_theaterN.jpg

ジャンル映画特化で固定客をゲット
シアターN渋谷

住所/東京都渋谷区桜丘24-4 東武富士ビル2F
座席数/102席、75席
開業年/2005年12月
経営/日本出版販売株式会社

成り立ち
渋谷区円山町に移転したユーロスペース跡を利用し、主に内装を改修して開業。翌年には日本で公開の予定のなかった『ホテル・ルワンダ』(04)を単独上映して大ヒット。その後は『デビルズ・リジェクト』(05)、『片腕マシンガール』(07)など良質のホラー映画や、音響の良さを生かして『ザ・フー:アメイジング・ジャーニー』(08)、『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』(09)などの音楽ドキュメンタリーを上映し、映画ファンの評価を高めている。

セールスポイント
ジャンル映画に特化することで、渋谷では後発のミニシアターながら認知度を上げた。また、エミール・クストリッツァ監督のパンクなドキュメンタリー『マラドーナ』(12月12日公開)を自社配給するなど、個性を打ち出すために必要な作品の買い付けも行っている。さらに、音楽ドキュメンタリーの上映が多いことから、オリジナルTシャツなどのグッズを劇場ロビーで販売。コンセッションの売り上げは侮れない。

0912_tollywood.jpg

若手発掘で邦画再生も図る!?
トリウッド

住所/東京都世田谷区代沢5-32-5-2階
座席数/47席
開業年/1999年12月
経営/個人経営

成り立ち
日本初の短編映画専門劇場として開業。開業後しばらくは苦戦が続いたが、生きのいい自主製作の短編作品を積極的に取り上げたことから、若手監督たちの登竜門的劇場となった。新海誠監督の自主製作アニメ『ほしのこえ』(02)は大ロングランヒット。実写系では『純喫茶磯辺』(08)の吉田恵輔監督、『60歳のラブレター』(09)の深川栄洋監督、『SOUL RED 松田優作』(09)の御法川修監督らを輩出している。

セールスポイント
大槻貴宏支配人は05年から、写真家の本橋成一氏がオーナーを務めるポレポレ東中野の支配人も兼任。ポレポレ東中野はドキュメンタリー中心、トリウッドは短編中心と特徴づけ、2館ともインディペンデント系の作品に強い劇場として認知の定着に成功。DVDやネット配信で気軽に映画が楽しめる現代にあって、監督たちによる舞台挨拶やトークイベントを積極的に設け、ライブ感を売りにしている。

0912_shinbungeiza.jpg

巨大資本の助力と不変のスタイル
新文芸坐

住所/東京都豊島区東池袋1-43-5 マルハン池袋ビル3F
座席数/266席
開業年/2000年12月
経営/株式会社マルハン

成り立ち
1956年に開業し、名画座の総本山的存在だった旧文芸坐は建物の建て替えなどの理由から97年に閉館。レジャー産業の株式会社マルハンの1部門として、00年12月12日に新文芸坐として再スタート。リニューアルする際に2スクリーンから1スクリーンになったものの、シートをゆったりめのものに替え、音響はサラウンド効果の高いドルビーEXに進化。名作2本をじっくり鑑賞できる環境設備に整え、「名画座=安いけど古臭い」のイメージを払拭した。

セールスポイント
旧作2本立て上映、基本料金は大人1300円、学生1200円、毎週土曜日はオールナイト特集上映と、昔からのスタイルを堅持することで、長年のファンに信頼されている。深作欣二監督夫人・中原早苗の著書『女優魂 中原早苗』の出版記念サイン会や、息子の深作健太、澤井信一郎監督らのトークショーを開くなど映画文化の浸透、継承に力を注いでいる。12月には"特集・映画ファンが選んだ2本立て"といった新企画にも着手。


0912_fukayachinema.jpg

自治体と地元民の力を拝借
深谷シネマ チネ・フェリーチェ

住所/埼玉県深谷市仲町2-25(2010年移転予定)
座席数/50席
開業年/2002年7月
経営/NPO法人 市民シアター・エフ

成り立ち
横浜映画専門学校出身(一期生)の竹石研二氏が発起人となり、00年にNPO法人市民シアター・エフを立ち上げ、洋品店の空いていた2階を使って「フクノヤ劇場」をスタート。建物の老朽化のため、同劇場は9カ月で閉館したが、銀行の跡地を利用して02年より再スタート。日本初の"コミュニティシネマ"となる。道路拡張のため、2010年3月から近くの酒造所跡を改修して移転する予定になっており、現在、改修費の寄付を呼び掛けている。

セールスポイント
銀行跡の建物を商工会議所から格安で借り受け、銀行ロビーを客席、金庫跡を映写室として映画館にリニューアル。映写機は中古、椅子も閉鎖されたプラネタリウムで使われていたものを流用するなどして初期費用を抑えた。劇場の受付や上映作品の情報収集は地元のボランティアスタッフに協力してもらうことで人件費を最小限にとどめるなど、街の規模に見合った身の丈サイズの運営に徹している。

0912_sakurazaka.jpg

多角経営で副収入を確保
桜坂劇場

住所/沖縄県那覇市牧志3-6-10
座席数/300席、100席、85席
開業年/2005年7月
経営/株式会社クランク

成り立ち
1952年から営業していた那覇市の老舗館・桜坂琉映館が05年3月に閉館。市内にシネコンしかない状況を危惧した地元在住の映画監督・中江裕司氏、真喜屋力氏らが株式会社を立ち上げ、那覇市唯一のミニシアターとして大々的に改装オープン。ミニシアターながら3ホールあることから、年間300本もの作品を上映する賑やかな劇場となっている。中江監督の『真夏の夜の夢』は、沖縄限定タイトル『さんかく山のマジルー』として上映された。

セールスポイント
劇場の1階ロビーにはオープンカフェ、雑貨&書店、セレクト古書店……とさまざまな店舗が入り、映画を観ない人でも気軽に立ち寄れる楽しげな雰囲気で、集客力をアップ。2ホールにはステージがあり、音楽ライブの会場としても貸し出し中。『ナビィの恋』で人気者になった平良進&とみ夫妻が沖縄芝居を教えるなど市民大学の拠点ともなっており、講座数はなんと100以上! 多角経営に取り組んでいる。

(取材・文/長野辰次)


Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年5月号

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ