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第1特集
『さおだけ屋〜』著者が語る「禁断のベストセラー製造法」

1000万円あれば、誰でもベストセラー作家になれる!?

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──『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で160万部超えした山田真哉氏が語る、「ベストセラーから見る現代日本」。ついでに、ぶっちゃけ本が売れると人生がどう変わるのかも聞いちゃいました!!

 05年に出版した『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)が160万部を超すミリオンセラーとなった会計士の山田真哉氏。その後、07年に出版した『食い逃げされてもバイトは雇うな』(同)も30万部以上のベストセラーとなったが、この1年半、山田氏は著作を発表していない。彼はなぜ今沈黙しているのか。そして、その裏にある、山田流ベストセラーの"カラクリ"とは?

──『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は、経営が成り立っているのか不思議なさおだけ屋や郊外のフレンチレストランなど身近な例を用いて解説する会計学の入門書です。発売当時、ご自身で「これは売れる」という確信はありましたか?

山田真哉(以下、) タイトルだけで、10万部いくとは思ってました。本を売るために大事なのは、「3T」といわれています。タイトル、テーマ、タイミング。このタイトルは、我ながら非常によくできたと思っています。

──作家がつけたタイトルを、編集者が「これじゃ売れない」と変えてしまうなどという話をよく聞きます。

『さおだけ屋』は、私と担当編集者が執筆前に考えたタイトルです。そこから1年ほどかけて書き、最後になって当時の編集長から「このタイトルはふざけすぎだ」と止められました。今では一般的になりましたが、当時の新書業界では、長くて質問形のタイトルはタブーだったんです。しかも、総論を表したタイトルではなく、内容の一部を取り出しただけの各論タイトル。結局私もあきらめて、『会計はもっとやさしい』みたいなタイトルでも仕方ないな、と思っていたら、当時20代半ばの担当編集者が、若さで押し通してくれたんです。

──タイトルに力を入れるのはなぜ?

 そもそも書店に並べてもらうには、書店員さんに「売れそうだ」と思われなければならない。書店員さんはタイトルを見て判断します。書店さんをどう攻略するかがすべての鍵なんです。特に最近はアルバイトの書店員さんが多いので、その方たちの心に響くようなタイトルをつけることが大事。具体的には、20代の学生さんですね。また、タイトルにインパクトがあれば、書店のランキングに入ったときにものすごい宣伝効果になりますよね。

──タイトルのインパクトに加え、「タイミング(時代)」も良かった?

 たまたまありがたいことに、出した直後に堀江貴文さんがニッポン放送を買収して、経済に興味を持つ人が増えたんです。だから160万部のうち150万部は堀江さんのおかげといえます。今だったら160万部は無理でしょうね。今は、本さえ買い控える不況ですから。

──ミリオンヒットとなって、生活はどう変わりましたか?

 特に変わっていません。引っ越ししたくらいです。この本の印税は10%なので......(と筆算する)、印税は1億1000万円ですか。でも株に手を出しまして、そのうち半分くらいはライブドアショックで損してるので、なんともいえない感じです。堀江さんのおかげで売れたけど、堀江さんのせいで損しました(笑)。特に印税が入って買ったものもありません。消費って、モノを選んだり決断したり、エネルギーが要りますよね。そんなシンドイことやってられません。妻には会計事務所の役員として給料を払ってるんで、欲しいものは給料の範囲で買ってくださいと言ってあります。

──お金にもモノにも興味がないとなると、ベストセラーを出す原動力となったものはなんですか?

 事務所の一事業として、出版で収益を上げたいと思ったんです。要は経営の問題です。私はもう1年半本を出してないんですけど、それは、本が売れない時期に本を出すのはバカだと思うからです。専業の作家さんでしたら出し続ける必要がありますが、そうでないビジネス書の著者の場合は、出しても収益性が下がるだけですから。本は自己満足で出す人が多いけれども、ビジネスとして考えないと、出版社もお客さんも、みんなが幸せにならないと思う。もう次の原稿は用意できていますが、時代を待っているところです。

1000万円あればベストセラー作家になれる!?

──出版不況といわれて久しい昨今ですが、ここ数年のビジネス書の動きを、どうご覧になりますか?

 この4~5年で、「出版社の時代」から「著者、および出版エージェントの時代」に変わったと思います。不況で、出版社には金がなくなった。それで社員が減らされ、1人当たりの担当出版点数は増えた。そうすると編集者は1冊1冊の企画、宣伝から編集まですべてをカバーはしきれないので、出版エージェントなり著者なりがカバーすることになる。今は、著者が自腹で広告費宣伝費を出すのも普通になりました。僕も、新聞や山手線車内に1000万円ほどかけて広告を出しましたよ。

──自腹で広告を出すんですか!?

 それだけではありません。私はやっていませんが、アマゾンの順位を上げるために「アマゾンキャンペーン」もよく行われます。200~300人の著者仲間が協力して、一斉に本を買い、アマゾンのランキングを上げるんです。そうやってランキング上位に露出することによって、出版社は増刷するし、リアルの書店も平棚に積むんです。私の知っているある有名社長はその手法で10万部ほど売りましたが、そのうち1万部くらいは本人が買っていると聞きます。あちこちの書店で手分けして著書を購入する専門業者やバイトもいますね。

──それ、書いちゃっていいんでしょうか……。そういう例は、ビジネス本においてはよくあることなんですか?

 よくあります。ビジネス書の場合、著者は社長だったりコンサルだったり、本業が別にある金持ちの人が多いんです。著者がいかにお金を出すかで、ベストセラーが決まります。

──そこまでお金をかけてベストセラーを出すメリットはなんですか?

 突き詰めて言えば、単なる名誉欲でしょうね。ブログなど自己発信の方法はさまざまあるんですが、もっと多くの人に見てほしいと思ったときに最適な方法が、出版。著者になれると、さらに売れたい、有名になりたい、と欲が出る。とりあえず金さえあればベストセラー作家になれる時代なんです。

──ぶっちゃけ、いくらあれば?

 2~3万部売るくらいなら、出版費と広告費、アマゾンキャンペーンやエージェントへの支払いも含め、だいたい1000万円あればなれるのでは。

──「古きよき出版」を懐かしむ人からは、「そんなの出版じゃない!!」なんて言われちゃいそうですが……。

 私ももともと本好きなので、今の状況を決して良しとは思いません。しかし、時代がそうさせたのであって、個人の力では抗うのは難しい。ただ、電子書籍化の流れや、大日本印刷が丸善やジュンク堂書店を子会社化するなど業界再編が進み、出版界に新世界が構築されつつあるので、いずれまた純粋に"いい本"がランキングに入る時代になるといいなと思っています。

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山田真哉(やまだ・しんや)
1976年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部史学科を卒業後、予備校の職員として就職するも2カ月で退職し、公認会計士二次試験に合格。中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースを経て、05年、インブルームLLPを設立。作家デビュー作は、02年発表の小説『女子大生会計士の事件簿』(英治出版)。


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