サイゾーpremium  > インタビュー  > 【想田和弘】「観察映画」に託した未来
インタビュー
ドキュメンタリーの極致を撮る監督

【想田和弘】「この映画は遠い未来に託したタイムカプセルかもしれない……」

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――テロップなし、ナレーションなし、音楽なし、事前のリサーチ一切なし。ドキュメンタリーの極北「観察映画」の監督による新作は、漁師のいる消えゆく情景をモノクロ映像に封じ込めた『港町』。

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(写真/田附勝)

 小さな釣り舟で、何十年も同じように魚を捕り続ける、ひとりの老いた漁師。漁が金銭的に割に合わなくなってきたと波に揺れるような声でつぶやくその独白を、監督は手持ちカメラで撮影し続ける。世界的な評価を受けるドキュメンタリー作家、想田和弘監督による「観察映画」の第7弾『港町』が、現在公開中だ。

「この作品の被写体である漁師“ワイちゃん”は、前作の『牡蠣工場』の舞台である岡山県牛窓の住民。『牡蠣工場』用の風景ショットを撮ろうと歩いていたら、偶然出会いました。その彼を追っているうちに、興味深いシーンが次々と現れてきた。編集を始めてすぐに、これは独立した別の映画にしたほうがいいと確信しました」

 想田監督が自ら掲げる「観察映画十戒」には、「被写体や題材に関するリサーチは行わない」という大原則がある。映画のテーマも事前に設定することはない。

『港町』では、カメラは老漁師のワイちゃんが捕った魚を追っていく。魚は市場から鮮魚店に運ばれて住民のもとに届けられ、あまったアラは猫の餌になる。監督がただ面白いと思うものを撮り続けた結果、現れた映像だ。

「そこに現れているのは、太古の昔から営まれてきた原初的な経済の形。ただ映像の持つ意味は、撮っている間はわからない。編集しているうちに、こういう映画だったのかと気づくんです」

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