>   >   > 現役翻訳者たちに聞いた【日本マンガ翻訳】の限界

――翻訳家はどこまで訳す必要があるのか?──『おしえて! ギャル子ちゃん』『坂本ですが?』『エロ漫の星』など日本人にしか理解できなさそうな、マニアックな作品まで今では海外でも刊行されているが、そんな日本独自の文化にあふれたマンガを、翻訳者たちはどう訳したのか? 現役の翻訳家たちに話を聞いていく。

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今春公開予定の『ゴースト・イン・ザ・シェル』。世界観的には押井守監督のアニメ映画版っぽい。

 今や世界にほこるカルチャーとなった日本のマンガ。その魅力は、多彩なジャンルやテーマ性の深さにあるといわれており、翻訳される作品数も年々増えている。「週刊少年ジャンプ」(集英社)や「週刊少年マガジン」(講談社)といったメジャー誌の作品はもちろん、マイナー誌やウェブマンガまで幅広くカバーされているが、中には「よくこれを翻訳したな……海外の読者に伝わるのか?」などと疑問に思ってしまう作品も存在する。

 例えばギャグマンガ。絵で笑わせるギャグならまだしも『さよなら絶望先生』【1】などに見られる日本特有のダジャレや言葉遊び、時事ネタにネットスラングを用いたギャグは、翻訳のみならず、そもそも日本人読者の理解を得ることも困難ではないのだろうか。

 もうひとつは難解な作品。具体例としては、今春ハリウッドで実写映画化される『攻殻機動隊』【2】を挙げよう。近未来を舞台にしたSFである本作には、実在しない技術や独自の専門用語が数多く登場する。世界的に知名度の高い劇場アニメ版やテレビアニメ版では、それらに対して特に説明もないまま進行していくが、原作マンガ版では注釈や解説がページ欄外に所狭しと書き込まれており、日本人ですら読むのに苦労する。ところが、原作の英訳版でも、これらはしっかり翻訳されており、欄外に収まりきらないため巻末で10ページ以上にわたって解説がまとめられている。その分量はさながら辞書のようであり、翻訳家の苦労は計り知れない。

 日本のマンガは、ジャンルの多彩さゆえ「日本という国を理解するためのテキストブック」として読まれることも多いという。そのため、翻訳家には高い日本語語彙力はもちろんのこと、日本文化に対する深い造詣も求められる。それでは、日本人にすら理解が困難なマンガの翻訳は、どのように行われているのか? また、マンガを通じた異文化の翻訳に「限界」はあるのだろうか? 海外における日本のマンガ翻訳の第一人者たちに話を聞き、現地の日本マンガ事情などと合わせて探ってみた。

ギャグに説明を入れると読者は興醒めしてしまう?

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個人ブログでも指摘され、ネット上の一部で話題となっている『幽☆遊☆白書』(冨樫義博/集英社/13巻より)の「禁句(タブー)の一文字!!」の日英比較。45分の間にひらがなが1分ごとに1文字消えていき、限られた文字だけで会話をしていくという頭脳戦。原作どおりaから順に行くと、5分でaとeが消えてしまい、話が進まなくなるため、逆にzから始めている。

「ヨーロッパでは1970年代から日本のロボットアニメなどが放送されていたため、日本の文化に慣れ親しんでいる世代が他の地域と比べて幅広いと思われます。特にイタリアは早い時期からマンガ専門の出版社が誕生し、90年代以降、長らくヨーロッパ最大のマンガ市場でした」

 そう語るのは、同国におけるマンガ翻訳の第一人者であり、この道25年のベテランであるスタンザーニ・詩文奈(シモーナ)氏。代表作として、先述した『攻殻機動隊』のイタリア語版などを手がけている。

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