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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第16回

「死」の匂いをメディアが排除する! 被災地でジャーナリストが見た軍事的リアリズム【後編】

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【前編はこちら】

徹底したリアリズムで危険を見積もる軍事組織

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『東日本大震災 自衛隊もう1つの最前線』

荻上 そこで注意が必要だと思うのは、有事に備えることは大事でも、過剰適応した形でシステムの組み替えを急ぐことが、平時における不合理を肯定する危険性です。耐震問題や津波問題と同様、どのような問題であっても、コストとリスクを計算して対応していくしかない。

 しかし自衛隊については、災害派遣でのイメージアップや被災地支援へのニーズを口実にして、つまりは「自衛隊さんありがとう」的な「感謝先行型」の議論で、右派はなし崩し的な軍備増強や憲法改正へ、左派は軍事機能を捨てて国際災害救助隊への特化といった方向に議論を持っていこうとする災害便乗型の議論も見受けられます。

田上 どちらもナンセンスですね。自分自身は、長い目では自衛隊はきちんと国防軍として位置づけていくべきだと考えていますが、極端から極端に振れがちなヒステリックな今の政局状況下で、一部の保守勢力が自分たちのロマンや権益拡大のために火事場泥棒的に行うような形では、今ここにある危機に対応できる現実的な体制にはならないと思います。災害救助隊への特化という意見も、平時のコストを考えていない点で非現実的。左翼による自衛隊批判の論理は「起こる可能性の低い有事のために、無駄な行政支出を強いている」というものが多かったですが、それこそ千年に一度、万年に一度の災害のために365日彼らを維持して訓練させていろという話になります。

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