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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第180回

GAFAのデータセンター をめぐる、暴力と陰謀論渦巻く大炎上選挙戦『エディントンへようこそ』

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――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。


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『エディントンへようこそ』

舞台は2020年、ニューメキシコ州にあるコロナ禍の小さな町エディントン。保安官と市長の対立・諍いが市長選にまで発展し、周囲を巻き込みながらSNSはフェイクニュースや陰謀論にまみれ大炎上。やがて騒動は住民たちにまで飛び火し、町は破滅へと向かうが……。

監督・脚本:アリ・アスター、出演:ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーンほか。12月12日劇場公開予定。


『ヘレディタリー継承』『ミッドサマー』『ボーはおそれている』で観客をひたすら嫌な気持ちにさせ続けたアリ・アスター監督の新作『エディントンへようこそ』は、なんと現代西部劇だった。
 舞台は米南西部ニューメキシコ州の小さな街、エディントン。主人公は保安官。でも演じるのは『ジョーカー』のホアキン・フェニックスだから、ヒーローなんかじゃない。

時代は2020年、コロナ禍でロックダウンされ、マスク着用が義務付けられていたが、保安官ジョー(ホアキン)は頑なにマスクをしないので、ペドロ・パスカル扮するテッド市長から叱られる。ジョーはテッド市長が大嫌いだ。自分の妻ルイーズ(エマ・ストーン)が10代の頃、テッドに妊娠させられて捨てられた、という噂があるから。

その年、アメリカでは大統領選挙で、ドナルド・トランプは2期目を目指していた。ジョーもエディントンの市長選に立候補してテッドに立ち向かう。ジョーの選挙演説は、グローバリスト(ユダヤの国際資本家たち)が君臨するDS(ディープステート)という闇の国家がアメリカを裏から支配しているという、トランプ支持者の陰謀論そのもの。

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