(撮影/二瓶 彩)
極右?カルト?ポピュリスト?波乱の参院選から話題が尽きない参政党。批判されても結束を強め、ぶれた主張さえ支持の証に変えるという逆説的な戦略はいかにして可能なのか。政治とメディア、そしてコミュニケーションとの関係を研究してきた2人、社会学者・西田亮介とジャーナリスト・小神野真弘が、その構造を多角的に思考する。
小神野真弘(以下、小神野) 2025年7月の参院選の比例代表では全体の約13%にあたる742万票を集め、14議席を獲得した参政党。選挙後に産経新聞とFNNが行なった調査では支持率で野党1位になり、もはや日本政治の台風の目になっています。
その躍進の背景には巧みなメディア戦略があったと言われます。確かに参政党の情報発信にはいくつかのパターンが見出せます。例えば賛否両論を呼んだ外国人関連の発言ですが、参院選が終わるとすぐさま参政党は「排外主義も、外国人差別も許さない」という趣旨の声明を出しました。このように物議を醸す主張をし、関心を集めたら、その発言を撤回したり、「世間で言われているような意図ではない」とエクスキューズをしたりする傾向がある。これまで各所で参政党に言及してきた西田さんはどう分析していますか?
西田亮介(以下、西田) 「内向け」と「外向け」でコミュニケーションの仕方を変えているのは印象的です。街頭演説は内向け、つまり既存の支持者や関心層に向けられている。そこでは強い言葉やスローガンが期待され、支持者はそれを「お約束」として盛り上がる。初めて見た人も「盛り上がり」に惹かれます。SNSでは切り抜き動画が広がり、注目が集まる起点になります。
一方で、テレビなど「外向け」の場では、穏当な表現に言い換える。実際、彼らは「アンチとは論争をしない」といったマニュアルを作っているそうです。また、神谷宗幣代表が好例ですが、メディア露出の際は常に口角を上げて笑顔で親しみやすい雰囲気を出すなど、自分たちがどう見られるかに極めて自覚的です。
小神野 強い言葉で関心を集め、状況に応じて撤回や修正するのは「手のひら返し」と思われそうなもの。なぜ支持者から反発が起きないのでしょう。
西田 支持者も含めた「自分たちで政治をつくっていく」という〝DIY精神〟を打ち出しているのが大きいのでは。「完成された政策を提示する政党」というより「みんなで政策をつくる活動」と捉えられるから、主張が変わっても支持者からは「まだ完成していない政策を共に練っている最中」と受け入れられるのでしょう。参政党自体も自分たちの主張に一貫性がないことをあまり気にしていないように見える。「変わり続けることを前提としている」とも言えます。注目を集めた「日本人ファースト」というスローガンも4番目に打ち出されたもので、最初は「政治はロックだ!」というわかりづらいものでした。
小神野 今回の参院選の直前に打ち出された「日本人ファースト」は、単なる一政党のスローガンに留まらないものでした。外国人政策が一気に最大の争点へと浮上し、多くの政党が追随して政策をアレンジしたほどです。生じる疑問は、なぜ参政党がそれをできたのか、ということ。確かにこの数年で外国人に対する不安やヘイトは高まっています。そうした時勢とスローガンがたまたま合致した偶然の産物だったのか。あるいは、綿密な計算に基づいた戦略だったのでしょうか。