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丸屋九兵衛の「バンギン・ホモ・サピエンス」【28】

【Shinji Tanimura】大阪から全アジアへ!

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――人類とは旅する動物である――あの著名人を生み出したファミリーツリーの紆余曲折、ホモ・サピエンスのクレイジージャーニーを追う!

谷村新司

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(絵/濱口健)

2022年11月17日のアリス活動50年記念公演が、3人揃った最後のコンサートとなった。なお、映画『機動戦士ガンダム』の主題歌「砂の十字架」が、谷村新司・作詞作曲、やしきたかじん(実は堀内孝雄の旧友)歌唱だったことも忘れぬよう。

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彼の顔には、セルジオ・メンデスやモーリス・ホワイトに通じるヴァイブがある。音楽的にはフォークという枠を超越してハードに刻むギター奏法が70年代からの特徴で、リッチー・ヘヴンス――69年のウッドストックで最初に登壇した黒人/北米先住民のシンガー兼ギタリスト――からの影響だという。さらに、件の男が率いるグループが初期に年間300ステージというBBキング並みのツアーをこなしていたのは、所属事務所がジェームス・ブラウン来日公演で負った借金を返済するため、とか。とにかく、洋楽と絡めて語りやすいのが谷村新司であり、彼がリーダーを務めていた〈アリス〉なのであった。

大阪市内で育った谷村少年が高校に入ってからギターを買って練習を始めたのは、ただ単に「女にモテるため」だったという。しかし家族は長唄や地歌舞に親しんでいたし、谷村自身も元から歌唱力を備えていたようだ。高校時代に結成した3人組〈ロック・キャンディーズ〉は関西フォーク界隈で相当な人気となり、谷村が大学在学中の68年にデビュー。だが、のちのアリス所属事務所社長が企画した渡米ツアーにロック・キャンディーズとして同行した谷村は、同ツアー参加のソウル・バンド〈ブラウン・ライス〉のドラマー矢沢透と意気投合し、帰国後の新バンド結成を誓い合う。さらに、この米ツアー中にレッド・ツェッペリンやジャニス・ジョプリンを見た谷村の音楽性は、どんどんとフォークという枠に収まらないものとなっていくのだ。

ロック・バンド〈フーリッシュ・ブラザーズ・フット〉のシンガー/ギタリストである知人・堀内孝雄を加え、71年末にアリスを結成。72年3月にシングル「走っておいで恋人よ」でデビューするが、初期は売れなかった……というのが通説だ。しかし、75年春までの成績を見るとシングルが85位~46位、アルバムは93位~20位だから、大ヒットではないにしても、決して悪くないのではないか。ともあれ、所属事務所が打開策として打ち出したジェームス・ブラウン招聘が先述の通り伝説的な大失敗興行に終わり、その借金返済のための無茶なツアーが支持層獲得につながったのも事実だろう。

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