サイゾーpremium  > 連載  > NewsPicks後藤直義の「未来経済グリーン」【4】

ある科学者は言う「気候危機に根拠はない」と。 ある投資家は言う「SDGsに逆張りしたほうが儲かる」と。彼らがいかに否定しようとも “グリーン経済”は大きく動き始めている。 世界で今、起こっているこのムーブメントの最前線をリポートする――。

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リージョナルフィッシュ公式サイトより。

今年7月、日本に一時帰国をした。アメリカに4年ほど住んでいると、日本に住んでいたときには気づかなかったような、日本ならではのユニークさに惹かれるようになる。

私が取材しているグリーンの分野でも、日本でしか生まれ得ないような起業家たちはいないのか。そうやって探し出した会社のひとつが、京都大学に拠点を置いている、リージョナルフィッシュという会社だ。

ここは日本が誇る魚文化と、最先端のゲノム編集テクノロジーのかけ算によって、2019年に生まれたスタートアップだ。ざっくり説明すると、同社はゲノム編集というテクノロジーによって、未来のシーフードを開発する会社だ。まだ世の中には存在しないような、不思議なお魚や貝類などが、さまざまな水槽の中で飼育されている。

例えばゲノム編集によって、食欲を解き放ったフグ。「22世紀ふぐ」と名付けられたこのフグ(トラフグ)は、通常なら出荷までに2年間かかるところ、わずか1年間で同じサイズになってしまう。

京大にあるラボに行くと、このフグが水槽の中でくるくると泳いでいる。動画を2倍速で見るかのように、このフグはハイスピードで育つわけだ。

そのフグの細胞は、食欲を抑制するための遺伝子が、ゲノム編集によって取り除かれている。外骨格のない魚は、エサを食べるだけ食べると、ひたすら大きくなるわけだ。

すでに食品として売るための認可も得ており、オンラインでは「22世紀ふぐ てっちりセット」(3290円~)や、料亭とコラボした「下鴨茶寮贅沢セット」(12980円)が売られている。

「日本が本当に勝てる分野はどこなのか考えたら、水産業に行き着いた」

そう語るのは、同社創業者CEOの梅川忠典さんだ。もともと戦略コンサルタントとして働き、官民ファンドで投資担当などを経て、リージョナルフィッシュを立ち上げた。今では約40人ほどの社員を抱えており、時価総額は数百億円規模にまで成長。宮津市(京都府)には、大型の水槽がずらりと並んでいる非公開のラボを持っており、そこではゲノム編集を施した、さまざまな魚介類が密かに開発されているという。

先ほどの急成長するフグだけではなく、食べられる部分(可食部)が1.4倍ほどにアップする、肉厚のマダイなども泳いでいる。さらにはアレルギーの人でも食べられる、アレルギーゲンのない海老。

そして、気候変動による海水温上昇がニュースになっているが、水温が上がってもサバイバルできる「高温耐性ヒラメ」なども育てているから驚きだ。これらが約1ヘクタール(100メートル四方)の倉庫のような場所で、たくさんの水槽の中で育てられている。開発した未来の魚たちは、日本全国、そして海外にある養殖業者たちに「新種」として売り出してゆく。

もちろん魚を養殖をする業者としても、これまでの魚が2倍速で育ったり、巨大化するならば、より多くの利益が見込める。だから今後、こうしたゲノム編集シーフードが、広がってゆく可能性があるのだ。

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