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更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【最終回】

幽霊、9年目の最終回と遺言ひとつ。

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――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった? 生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

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13年前の共著、いまとなっては何もかも風化しきっているが、あとがきの心境は何ひとつ変わっていない。批評なんてやめときな?

本誌編集長から「新聞の社説というか、サイゾーの社説みたいな感じで書いてくれ」と言われて始まった連載なので、掲載位置も最終ページ前だったのだが、季刊誌で時事コラムはさすがに無理があるので、9年目に入る今回で最終回だ。

『批評なんてやめときな?』というコラムタイトルは、前任者の連載が『批評のブルーオーシャン』だったから反語で付けたが、紛うことなき本心だ。筆者は本誌で『サブカルチャー最終審判(批評のジェノサイズ)』なる時事対談を「批評家」として連載していたが、2009年の単行本化を最後に一度引退していた。07年の本誌に掲載された「最新オタク・マスコミMAP」というゴシップ記事の風評被害で本誌以外の仕事をすべて失い、生きながら葬られたので、記事のお詫び(?)で依頼された対談連載を最後の仕事として請けたのだが、連載中に体調が悪化した。医者からは「批評なんてやっていると死ぬぞ?」と脅かされたが、本当に大病で倒れてしまった。

幸い、5年間のリハビリで恢復し、墓の下から這い出したので、療養中も献本してくれたことを感謝するメールを編集長に送ったら、かつての対談相手に編集部が愛想を尽かされ、後続の連載が終わると聞いた。彼の仕事は世直しオピニオンな自己啓発サロン商売へシフトしていたので、実話誌の連載はイメージ的に都合が悪くなっていたらしい。実際、先の単行本化直後、わざわざ隣の筆者を指差しつつ「こいつ(更科)やサイゾーとは縁を切れ」と彼に「忠告」してくれた善人で評判の批評家もいたのだが。 筆者も疎遠になっていたから「そんなものだろうな」と思いつつ、「後釜に入りましょうか?」と言った。かつての対談相手の後始末……というよりは、批評家という商売への疑問が大きくなっていたからだ。筆者もかつては批評家を名乗っていたが、元をたどれば、創刊しては潰れる成人向け雑誌の創廃刊情報を扱うアングラ同人誌を作り、成人向け雑誌の編集者になった生粋の二流出版業界人なので、本誌のようなゴシップとグラビアの二流な実話誌は心から愛しているし、善悪の彼岸に佇む諦念と覚悟で正気を保つ時代観察者の立場を離れ、世直しオピニオンを言い出す「批評家」が理解できなかった。

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