サイゾーpremium  > 連載  > 萱野稔人と巡る超・人間学【第24回】
連載
萱野稔人と巡る超・人間学【第24回】

萱野稔人と巡る【超・人間学】――人間の身体と医療(後編)

+お気に入りに追加

――人間はどこから来たのか 人間は何者か 人間はどこに行くのか――。最先端の知見を有する学識者と“人間”について語り合う。

前編はこちら

あまりに複雑で精巧な人間の身体。その治療に取り組み、寿命を伸ばしてきた医療はどこに向かうのか。ベストセラー『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)の著者である医師・山本健人氏に聞く。

2202_L1070159_520.jpg
山本健人氏(写真/永峰拓也)

今月のゲスト
山本健人[医師・医学博士]

2010年、京都大学医学部卒業。博士(医学)。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、ツイッターなどSNSでも情報を積極的に発信。主な著書に『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)、『医者が教える正しい病院のかかり方 』『がんと癌は違います』(共に幻冬舎新書) 、『患者の心得』(時事通信社)など。


萱野 人間にとって医療という営みとは何かを考えるとき、前回のお話でうかがった、時代の変化によって病気の定義が広がってきたという点が大きなヒントになると思います。そうした広がりは時として、医療がカバーする領域を広げるための〝利権の拡大〟であると批判されることがあります。しかし、発達障害の例などを見てもわかるように、診断名がつくことで適切な医療を受けられるようになったり、症状が悪化せずに済んだりして暮らしやすくなったという例は数多くあります。そうした意味で、医療の拡大は、社会的な生きづらさを含めた苦痛の軽減を人間が目指してきた結果と言えるのではないでしょうか。

山本 医学の営みは基本的に医療の介入が必要な人を取りこぼさないこと、同時に医療の介入が必要でない人にはなるべく介入しないことを目指しています。患者にとって治療行為は基本的にストレスであり、時に苦痛でもあるからです。この両面を微調整することで診断基準も変わってきました。その根本にあるのは、やはり患者さんにとってプラスになることを考え、実践しようという理念だと思います。

萱野 動物は苦痛や不快を遠ざけようとする強い傾向性を持っています。巨視的に見れば、人類の営みそのものが苦痛や不快を遠ざけていこうとするものだと言えます。これは人類社会のあらゆる側面に埋め込まれているベクトルで、医療の拡大もそのひとつでしょう。医学の発達とは、不快や苦痛から解放されたいという人類の思いそのものの具体化であるとさえ言ってもいいかもしれません。

山本 そういった要請に応えてきたことが医療の拡大の大きな要因になったはずです。そして、それにつれて、人はますます長く生きることを求めるようになってきました。今では80歳の人が90歳まで生きるために当たり前に手術をします。これは平均寿命が60代だった頃には考えられなかったことです。そうした手術を行う私たち医者もそれが無駄なことなどとは思いませんし、患者さんのより幸せな人生に寄与する有意義なことだと考えています。さらに言えば、患者さんが生きながらえることによって、当人だけでなく、その家族や友人にまで影響を与え、時により多くの人の幸せや救いにつながることもあると信じてやっているんですね。これもまた、医療の拡大と言えると思います。

萱野 医学の進歩のもとには人間の知的な好奇心や向上心があるのはもちろんですが、より根本的には幸せを求める人間の本質的な願望があるということですね。

山本 医療が目指すものはそういう願いに応えることであり、そこに行き着くまでの道は揺れ動くかもしれませんが、そのゴールは常に変わりません。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年4・5月号

バーレスク東京・ももグラビア

バーレスク東京・ももグラビア

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ