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萱野稔人と巡る超・人間学【第20回】

萱野稔人と巡る【超・人間学】――人間の知性と言葉の関係(後編)

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――人間はどこから来たのか 人間は何者か 人間はどこに行くのか――。最先端の知見を有する学識者と“人間”について語り合う。

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(写真/永峰拓也)

今月のゲスト
川添愛[作家]

前回に続いて作家・川添愛氏と言葉、AIについて語り合う。進化したAIは人間と変わらない言葉、知性を持つようになるのか。機械と人間の根本的な違いとは――。

萱野 前回は、限られた事例から法則性を見つけだす一般化の能力が、子供の言語習得に大きな役割を果たしているというお話をうかがいました。人間の子供は新しい単語を身につけていくときに一般化を無意識に行っています。たとえば子供は大人から「あれは犬だよ」「あそこに犬がいるよ」と教えられると、いくつかの事例だけから、どのような個体が「犬」と呼ばれるのかをたちどころに理解します。AIの開発に用いられる機械学習でも、この一般化が行われます。ただ、機械に一般化をさせようとしても人間のようには簡単にいきません。

川添 そうなんです。機械学習を簡単に説明すると、機械に問題と答えを与えて、解き方を推測させる技術といえるでしょうか。解き方がはっきりしている問題を機械に解かせる場合は、人間が解き方を直接プログラムすればいいのですが、そもそも解き方がはっきりしない問題は、そのやり方だと相当に難しいんですね。たとえば「犬」の画像認識をするAIを開発しようとするとき、人間が「次の特徴があるものを犬と判断せよ」という解き方をプログラムすることはできません。なぜなら、「犬一般」の特徴を挙げようとしても、犬の種類によって体型や毛色はさまざまですし、同じ犬であっても撮影した角度によってはまったく違う見え方になることもあるからです。そのような違いを超えて共通する「犬一般」の特徴を言葉で説明するのは、ほとんど不可能です。

萱野 すべての犬に当てはまり、なおかつ犬にしかない特徴を挙げるのは、確かにほぼ不可能ですね。

川添 そこで機械学習では、犬の特徴を人間がプログラムするのではなく、犬の画像と「犬」という言葉のラベルをペアにしたデータを機械に大量に与えます。犬の画像を入力したとき「犬」と出力をすれば正解になるという、「問題と答え」の事例のデータですね。こういった大量の事例データの中に潜む法則性やパターンを機械が自動的に見つけて、正解を導けるような解き方を探り出すのです。機械に「問題と答え」のデータを与える方法は、正しくは「教師あり学習」と呼ばれます。機械学習にはこのほかに、機械に問題のみを与える「教師なし学習」や、機械に試行錯誤をさせて必要なデータを自動的に得る「強化学習」がありますが、どれも「多くのデータを手がかりにして問題の解き方を求める」という点は共通しています。

萱野 人間の子供はわずかな事例から一般化を行えるのに対し、機械による一般化には大量のデータが必要になるということですね。

川添 人間の子供ならほんの数回教えてもらっただけで一般化できるのですが、機械学習では適切な一般化を行うために、数百万や数億単位の事例データが必要になることもあります。また、人間と同じような一般化をやっているように見えても、機械学習でやっていることは基本的に数の計算なんですね。つまり、機械は犬の画像を表す数値データを入力されたときに、「犬」という言葉を表す数を出力する関数を作っているわけです。それを、人間がやっている一般化と安易に同一視することはできません。

問題設定そのものを更新できる人間の能力

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