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「マル激 TALK ON DEMAND」【160】

【神保哲生×宮台真司×岩田健太郎】距離と手の消毒……日本の対策が後手に回った理由

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――新型コロナウイルスが人類にとって、100年に一度という最悪の感染症になりつつあることが明らかになってきた。感染症の専門医・岩田健太郎氏は、当初、日本が採用してきた、検査人数を絞り込みクラスターを抑え込むことに集中する戦略を評価した。だがこれに甘んじて、肝心のキャパシティ・ビルディングを怠る結果となってしまった……。

[今月のゲスト]
岩田健太郎

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『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)

神保 今回はマル激としては初めて、ゲストの方にリモートでご出演いただきます。神戸大学の岩田健太郎教授です。岩田さんが4月11日に出されたばかりの『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)という本が、(番組収録時には)Amazonで1位になっています。

宮台 具体的なメソッドとノウハウが非常にわかりやすく書いてあるので、皆さん手に取るべき本だと思います。マル激を見ていらっしゃる方に向けてはもう少し抽象度を上げて、どういう原理原則に基づいてこの本が書かれているのか、あるいは岩田さんのご意見があるのかということをうかがいたいなと思います。

神保 岩田さんはインフルエンザやSARSなど多くの感染症に長く関わってこられていますが、その中で今回の新型コロナウイルス、COVID-19というのはどんな位置づけになるでしょうか?

岩田 人類は何千年と感染症を経験してきましたが、おそらくはこの100年で最悪の感染症流行だと思います。この前に起きた大きなものは1918年に流行したスペイン風邪。世界中で何千万という方が亡くなりました。これが20世紀で最大の感染症による悲劇でしたが、おそらくはその次くらいにくるであろうと。

 その原因は、多くの方が軽症、あるいは無症状で済んでしまうことです。例えば、2014~15年にかけてアフリカで流行したエボラ出血熱は、死亡率が50~90%。私もアフリカで対応しましたが、激しすぎるがゆえにみんなが恐怖に慄きながら、全速力で国も街もロックダウンし、一丸となって戦うことができました。

 ところが、この新型コロナウイルスの場合は、多くの方に症状がないから、甘く見てしまう。感染者も元気なものだから、街を歩き回り、感染を広げてしまうんです。それで瞬く間に世界中に広まり、何百万、カウントされていない方を数えるともしかしたら何千万という方が感染し、そのうち2割が重篤化する。呼吸不全でICUに入院し、なかなか治らず、病院には患者さんが蓄積。疲れきった医療者にも感染が出てきて、病院はますます疲弊する。このように、真綿で首を絞められるように追い詰められていくという感染症です。

神保 あっという間にメディアはコロナ一色に染まりましたし、世界各国がコロナ対策に追われていますが、その一方で、新型コロナの怖さについては、まだ実感が沸かない方も多いのではないかと思います。でもそこが逆に新型コロナの危ないところで、「油断させておいて後ろからバッサリ斬る」みたいなところがあり、それが新型コロナの怖さということになるでしょうか?

岩田 そう、怖くないところが怖いという、非常に矛盾した属性を持っているんです。患者さんが少ないときには、怖くない感染症でした。ダイヤモンド・プリンセスは、ご高齢の方が多かったので死亡者が出てしまいましたが、日本ではわりときちんと抑え込めているという油断が出ていた可能性は否めません。本当はあの間に、しっかりとしたキャパシティ・ビルディングをして、病棟の確保や、軽症の患者さんが居住できるスペースを一生懸命作ればよかったのですが、時間を稼ぐためにコンタクトトレーシングをする、というスローガンがいつの間にか消え、現状維持に甘んじてしまった。そして今、ドカンと患者さんが増えたがゆえに、いろんなところでまったく対応できなくなっています。

神保 欧米諸国で、ここまで感染が拡大してしまったのはなぜでしょうか?

岩田 国によって原因が異なっており、一言では語れないのですが、例えばイタリアや米ニューヨーク州が非常に典型的で、簡単にいうと初動が遅れたことが大きかったと推測しています。かなりの数の感染者が出た時点で初めて気づき、手遅れになってしまった。申し上げたように、この感染症は数が少ないうちはたいしたことはなく、数が増えてしまうとどうしようもなくなってしまうんです。私はブログに「東京都はロックダウンすべきだ」と書きましたが、これは東京が手がつけられなくなってしまう状況の一歩手前に来たと考えたからです。

神保 感染症の専門家の間では今回のような、多くの人に症状が出ないがゆえに怖いウイルスが登場することは、想定されていなかったのでしょうか?

岩田 率直に言って、この新型コロナウイルスのようなウイルスそのものを想定していた専門家はいなかったと思います。例えばHIVは、感染早期は症状がなく、何年もたってからエイズという病気が発症する。自覚がない間は感染がどんどん広がっていきますから、その意味では、新型コロナと似た特徴があります。しかし、HIVは多くの場合、少なくとも現代では感染経路がほとんど性交渉に限定されているので、爆発的な拡大は起こりにくい。これに対して、新型コロナは飛沫と接触により、日常生活の中で感染が拡大するので、そこが非常に特異的です。

「プランAとB」そしてもっともつらいロックダウン「プランC」

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