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「マル激 TALK ON DEMAND」【148】

【神保哲生×宮台真司×明石順平】経済統計の不正と偽装で見えた日本経済の真の姿

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――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

[今月のゲスト]
明石順平[弁護士]

統計の不正や偽装などが発覚したアベノミクスについては、これからも多くの議論を引き起こすことになるだろう。だが、こうした議論の多くは、経済学の門外漢である我々一般人にとって今ひとつ釈然としないところがあるのも事実。こうした中、ひとりの弁護士がアベノミクスの矛盾点や欺瞞を平易な言葉で指摘した本が話題を呼んでいる。

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アベノミクスによろしく(インターナショナル新書)

神保 マル激では「アベノミクス」というテーマを何度も取り上げてきました。基本的には経済学者・エコノミストの方々にさまざまな立場から論じてもらいましたが、今回は、いわゆる専門家ではない方が検証した結果どうだったか、という話です。

 これは本来、私のようなジャーナリズムに従事する者がやらなければならない仕事なのですが、今回はそれを意外な職業の方にやられてしまった、という感じです。いずれにしても、政策を中立的な立場から検証することは、非常に意味のあることだと思います。

宮台 今回のゲストの方は、もともと法学の出身です。実は経済学だろうが法学だろうが、社会学だろうが、特に日本ではインナーサークルのつばぜり合い=ポジション取りの優先順位が高い人が多く、真実性や妥当性についても、それを念頭に置いて話すことが多い。

 アカデミズムなる世界に意味があるとすれば、動機として利害から離れた真実性に対する強い要求があるべきだが、そうなっていない。日本では役人だからとか、芸術家だからとか、大学の先生だから、専門家だから、ということで信用しないほうがいいです。

神保 そうした中、弁護士でありながら『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル新書)という本を書かれた、明石順平さんをゲストにお招きしました。最初に、労働法制がご専門の弁護士である明石さんが、なぜアベノミクスを検証する本を書こうと思われたのでしょうか?

明石 きっかけは2016年、野党議員の方々が「実質賃金が下がっている」と盛んに指摘していて、それを自分で調べてみたことです。それまで「実質賃金」の意味もわかっていませんでしたが、検索すればデータが出てきますから、それをエクセルでグラフにしたら、本当に落ちていた。

 ここから先が重要で、「実質賃金とはなんだろう」という話です。それは、名目賃金指数を消費者物価指数で割り、100をかけた数字であると。そこで、消費者物価指数、名目賃金指数、実質賃金指数を並べてみたら、一発で「答え」がわかるんです。

 つまり、物価を上げすぎたから、実質賃金がスコーンと落ちたんだと。結果として消費がものすごく落ちていて、GDPを見たら停滞している。ひとつのグラフにまとめられるくらいシンプルなことで、アベノミクスの失敗は、「賃金が上がらないのに物価だけ上がってしまって、消費が落ちました」と一行で説明できるんです。たったこれだけのことなのに、なぜ誰も指摘しないのか。それなら自分で書くしかない、ということで最初はブログで書き、しかしそれでは訴求力に限界があるということで、自分で出版社に企画書を送り、本になったという経緯です。

神保 経済学会では難しい専門用語を駆使しながら侃々諤々の議論をしていたが、実はこれは至って単純明快な話だったと。明石さんは、アベノミクスの妥当性をめぐるさまざまな議論を、どうご覧になっていますか?

明石 本当に空中戦ですね。まずはデータ見ろよ、手を動かせばわかるじゃないか、という話です。特にリフレ派の方々に共通しているのは、本当に誰も「物価が急上昇したせいで実質賃金が落ちた」という指摘をしないことです。これは安倍総理もそうですが、「新規労働者が増えて平均値が下がったから、実質賃金が落ちた」という、よくある嘘をつく。これは大嘘で、つまり平均値が問題だったら名目賃金も下がるのに、下がっていない。簡単に論破されてしまうことを、最近の国会の答弁でもいっています。

宮台 おそらく保身のために、わかってやっています。

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