2018年を迎えジャニーズの動きが活発化し、連日のようにスポーツ紙の芸能面を飾っている。
「スポーツ紙は野球や競馬好きの男が読む新聞。ジャニーズの話なんて興味ないのでは~」と言う素朴な疑問を聞くが、狙いは別なところにあるという。
「たくさんの芸能人を差し置いて記事になるのは、注目度が高いからとアピールできる。注目度が高いということはCMなどの仕事面で有利に働く。逆にスキャンダルはマイナスになるから、できるだけ抑える。ジャニーズの伝統的な戦略です。なかなかマネはできない」(広告関係者)
事実、ジャニーズのゴシップは伏せられ、「CD売り上げ1位」といった良い話は取り上げられる。今年は年明けからスポーツ紙の紙面を圧倒するジャニーズ。1月17日には新たな6人組のグループ「King&Prince」(通称キンプリ)のCDデビューが決定した記事が紙面を飾った。「目指すは世界一」などこれ以上ない賛辞の記事が目に付いたが、実は、ジャニーズの新人グループのCDデビューは4年ぶりのことになる。
そこにはジャニーズならではの贅沢な悩みが隠されている。かつてはジャニー喜多川社長自ら街に出るなどして金の卵となる少年をスカウトしてきた。東山紀之が渋谷駅前の交差点で声を掛けられ、ジャニーズに入ったことは有名な話である。しかし、時代は移り、ネットが発達した今、スカウトせずとも、自ら応募してくる少年は絶えない。本人よりも母親が「うちの子は可愛い。絶対に木村拓哉ぐらいになれる」と応募してくるケースも珍しくない。スカウトに出ずともネットなどで選べる時代に変わっている。
「大手事務所はビジュアルと履歴でとりあえずいい子をセレクトして入れて、自社でレッスンさせている。そこでふるいにかけてデビューさせるか、落とすか決める。入る側もレッスン代が無料なので、落ちたところで文句は言えない。ジャニーズはすでに300人ぐらいジュニアと呼ばれるレッスン生がいると聞きます」(芸能プロ関係者)
ジュニアもデビューに向けて熾烈な内部競争があり、デビューするのは狭き門となっている。ビジュアル、レッスンともに認められても、デビューとなるとさらなる難関がある。それは、現役で活躍中の先輩タレントたちの存在である。ジャニーズはテレビを中心に活動するが、先輩がテレビ枠を独占している。下からきた後輩が入る余地などない。
「いくらジャニーズの力をもってしても、出演できる番組枠は決まっている。上がいなくなれば下が入れるが、上の人気が衰えないから、なかなか空かない。嵐の人気が落ちれば、下の者がその枠に入れるのですが、人気が落ちないうちは無理」(テレビ関係者)
昔は「アイドルの人気は長くて5年ぐらい」と言われていたが、近年、ジャニーズタレントとしての活動期間は10年が当たり前。20年近くアイドルの座を維持しているのもザラになった。男性アイドルはジャニーズの独占状態。まだまだ売れている同じ事務所の先輩をわざわざ降ろして後輩を入れるわけにはいかない。なのに、ジュニアたちは溢れかえり、デビューを心待ちにしている。アイドルを作り過ぎて飽和状態になっているようなもの。
そんな中、キンプリは選ばれし期待の精鋭部隊という。「事務所も大プッシュ。今年の一押しグループ」と言われ、実際、グループ活動だけでなく、すでにソロとしてドラマや映画出演をしている子もいるという。
「実績がなくてもいきなり主演クラスのドラマに出演できるのがジャニーズの力。ジャニーズには今ではNHKも忖度しますから、ドラマなんか簡単に入れる。これが今のテレビドラマの作り方」(テレビ関係者)
ジャニーズタレント主演のドラマが増えるわけである。今年はキンプリだけでなく、
関西でも「関ジャニ∞」に続くジュニアが関西ローカルで活動を開始している。勢力をさらに拡大するジャニーズ軍団。その狙いを元ジャニーズ担当記者が話す。
「ジャニー社長は東京の一角をニューヨークのブロードウェーのようにしたいのが長年の夢。そこでジャニー氏がプロデュースした舞台で自身が育て上げたタレントがショーをする。今も日比谷の帝劇や新橋演舞場でショーをやり続けるのは、そんな拘りからです。ただ、時間的に難しくなっているが、2020年に東京五輪が開催される。狙いは五輪のイベント。特に全世界が注目する新国立競技場の開幕式。オープニングのイベントにジャニーズタレント総出のショーをやるのが目標と言われています。プロデュースはもちろんジャニー氏。その時に中心になるのがキンプリら若手だと言われています。ジャニーズタレントが総出でパフォーマンスをすれば、世界にその名を轟かせることができる」
ジュニアが溢れる悩みを抱えながら、壮大な野望に向けてジャニーズは本格的に動き出している。
(敬称略)
二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。