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【premium限定連載】芸能ジャーナリスト・二田一比古の「週刊誌の世界」

今の芸能人たちには無い!記者を秒殺するスターのオーラ!【週刊誌を圧倒した俳優たち】三船敏郎編

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『サムライ 評伝 三船敏郎』(文春文庫)

 映画が庶民の娯楽だった時代。スクリーンからスターが続々と誕生した。スターとは星。文字通り手の届かない存在としてスクリーンでしか会えない。庶民は私生活など知る由もなければ、メディアも映画の話以外、報じることもなかった。スターに近づけるのは映画記者たちに限られていた。女性スキャンダルなどあってなかったようなもの。触れること事態、タブーのように見られていた。そんな中、スキャンダルで長年に渡りメディアを賑わせたのが三船敏郎(享年77歳)だった。

 日本映画がハリウッド映画の足元にも及ばなかった時代に、「世界の三船」と呼ばれ日本映画の顔だった。『用心棒』『七人の侍』など後世に残る映画に主演。黒澤明監督作品には欠かすことのできない存在でもあった。単独取材どころか、撮影所で三船の姿を見ても遠くから見ているファンのように見るだけで、近づき難いオーラがあった。スキャンダルらしい話もなかった三船に突如、浮上したのが当時女優として三船と共演していた喜多川美佳との熱愛だった。三船は妻と息子と暮らしていた目黒の家を出て、世田谷で喜多川と同居生活に入った。「三船が別居して愛人と生活」のゴシップにメディアも色めき立った。

 三船は「妻とは離婚前提での別居」と公言しており、堂々と愛人との生活を送っていた。後は離婚成立を待つだけだった。その間に
娘も誕生している。その娘が高橋ジョージとの離婚裁判で世間の耳目を集めた三船美佳である。彼女は、父親の名字と母親の芸名を取り「三船美佳」という芸名にした。

 生まれて間もない娘と暮らす三船。本妻との間にいたのは息子が2人だっただけに、初めての娘を可愛がっていた様子が近所の人からの話からも伝わってきていた。

 駆け出しの記者だった筆者は連日のように三船が愛人と暮らす家に取材に出かけた。離婚の進展と現在の暮らしぶりを聞く程度だったが、足がすくむようだった。

 スターが全身から放つオーラは私生活でも変わらない。初めて「これがスターのオーラ」と認識した人である。

 オーラだけではない。声をかけようものなら、全身で威圧する迫力がある。言葉を発するわけでもなく、質問を遮断してしまう。

 今の若手タレントに直撃しても、タレント側が慌てふためくケースが多く、その時点で記者の勝ちだが、三船は対面した瞬間に記者を制圧するような圧を感じた。まさに秒殺されるようだった。三船が初めてビールのCMに出た際の一言「男は黙ってサッポロビール」そのままである。質問できずに退散する記者たちは少なくなかった。

 一転、矛先は本宅で離婚を拒否し続ける夫人に向かった。定点的に行くと相手の行動が読めるもの。晴れた日の昼過ぎ、夫人は庭先の縁台で庭を眺めるのが日課だった。狙いすませてその時間に行く。あえて玄関の呼び鈴を押さず、塀越しに声をかけた。夫人の取材は夫に比べるとラク。世間話から入り「離婚報道」の核心に入ると毅然とした態度で、「離婚する気はありません」という返事しか返ってこない。愛人や子供の存在まで知りながら離婚届けに判を押さない夫人。それは女の意地だった。「三船敏郎夫人」という肩書きは大きなブランド。そう簡単に渡してなるものかという意志だったと解釈している。ちなみに、離婚は成立しないまま三船は世を去っている。その三船ブランドは愛人・喜多川美佳と娘・美佳によって引き継がれている。

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

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