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第3特集
今年一番の怪ヒット!? 『HiGH&LOW THE MOVIE』大研究【1】

EXILEがオタクを殴り倒した夏――興行収入だけでは測れない!映画『HiGH&LOW』ムーブメントに迫る

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『シン・ゴジラ』に『君の名は。』と、メガヒットに恵まれた今夏の邦画界。その2作に興行収入こそ及ばないが、局地的にヒットしているある大作をご存じだろうか。そう、『HiGH&LOW THE MOVIE』のことだ。

 このタイトルを聞いて、「あぁ、EXILEがなんかいっぱい出てる映画でしょ」と言う人も多いだろう。確かにそうだ。EXILE本体から三代目 J Soul Brothers、GENERATIONSにTHE RAMPAGE、劇団EXILE、そしてE-girlsまで、LDHに所属する面々が大挙して出演する、LDH製作の映画である。だが待ってほしい。本作は、それだけで片付けてしまうにはあまりに惜しい魅力を持っているのだ。

 7月16日に公開された本作は、現在のところ興行収入は16億円程度と予想されている。公開から9日間で観客動員は76万9054人、興行収入は約10億1849万円と報じられた。この数字には、カラクリがある。公開初日から3日間、200回にわたってLDHメンバーによる舞台挨拶全国行脚が行われたのだ。これは事前にどこの劇場に誰が来るかは発表されておらず、ファンは人によっては複数の劇場をハシゴしたとされる。こうした“ドーピング”によって、興行収入の数字を伸ばしたことは間違いない。ただし、ここで注目したいのはその後の動きである。

 本作は本来であれば、8月の下旬頃に上映を終了する予定の劇場が大半だった。それがジワジワと延ばされ、現時点では都内であれば9月23日まで観ることができる(新宿ピカデリーほか)。あまつさえ、9月14日・15日には全国各地の劇場で「応援上映」が行われる予定になっている。

 従来のLDHファンの支持だけでは、こうしたロングヒットには繋がらなかったはずだ。そもそも「応援上映」とは『KING OF PRISM by PrettyRhythm』や『劇場版ガールズ&パンツァー』など、オタク向けコンテンツの中で誕生した文化である。『HiGH&LOW』に、一体何が起きたのか?

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Twitter上でネタ画像として拡散された「一方その頃湾岸地区では……」場面。

 そこには、いわば「ハイローはいいぞ」勢が誕生したことの影響を見て取ることができる。あるいは「一方その頃湾岸地区では……」勢、もしくは「琥珀さぁん!」勢と称しても良い。時期としては8月の上旬頃、公開からしばらく経ったあたりから、元来のLDHファン以外の層に届き始め、ツイッター上に『HiGH&LOW』を称える映画好きやオタク、腐女子などなど、普段はLDHから縁遠いはずの層が散見されるようになったのだ(むろん、そうした趣味を持つ人の中にも、もともとのLDHファンはいるだろうが)。同時に、映画系ニュースサイトなどでも『HiGH&LOW』を取り扱う記事が出始める。

「映画『HiGH&LOW』は不良文化の総決算 オタクもヤンキーにしてしまう魔法」(KAI-YOU)

「『HiGH&LOW THE MOVIE』混沌とした物語の高揚ーー“主役不在の超群像劇”はなぜ求められた?」(リアルサウンド)

「『HiGH&LOW』が切り開いたEXILEドラマの新境地。人はなぜ、『ハイロー』にハマるのか?」(Yahoo!ニュース)

「ニッポン製不良映画の最新モード『HIGH&LOW THE MOVIE』の魅力」(FILMAGA)

『HiGH&LOW THE MOVIE』がどのような映画かをものすごく簡略化して説明すると、親友を謀略によって失ったことで復讐の鬼と化し、正気を失ってしまった先輩が悪に手を染め街を奪わんとするのを、彼の後輩チームと、街のその他の地区をそれぞれ治めるチームが連合軍を組んでぶん殴って止める話である。「なんだそれは」と思うかもしれないが、むろん実際はこれ以上にさまざまなストーリーが走っている。なにせ『HiGH&LOW』は、この映画の前にドラマを2シーズン放送しているのだ。そこからの伏線もあり、映画版で初めて描かれることもあり、上映時間129分はめまぐるしく過ぎてゆく。何しろ映画版パンフレットに掲載されている登場キャラクターだけで、68人にのぼるのだ。

◆『HiGH&LOW THE MOVIE』人物相関図

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公式HPより

 そんなわけのわからない映画が、本来のLDHファン層以外に刺さった理由はなんなのか。もしかしたら、本稿を読んでいる読者のツイッタータイムライン上でも「どうしちまったんだよ琥珀さぁん!」といった叫びが急に流れだし、ツイートした人に対して「お前がどうしちまったんだ」と思っている方がいるかもしれない。この夏、それほど一部の人々を狂わせたこの奇妙な作品を、本サイトではこれから数日間にわたって、さまざまな角度から読み解いていく。なお、前述の通りとにかく登場人物が多い作品ゆえに、以降の記事を読んでいてわからなくなった際には、前掲の人物相関図を確認いただくことをおすすめしたい。

 念のため申し上げておくと、本特集をやったところで本サイトにはLDHから一銭も入らない。むしろ記事を制作している間にまたもう一度観たくなり、映画代が吸い取られていく一方である。それでもなんでも、まだ『HiGH&LOW THE MOVIE』に殴られていない人が、劇場に足を運ぶ一助となれば幸いだ。
 
(文/編集部)

<『HiGH&LOW』特集記事一覧>
【映画ライター座談会/前編】『HiGH&LOW』は〈国産の海外映画〉である。


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