――クライアントからお金をせしめて広告を作りたい電通、その広告に是非とも出演してお金とネームバリューとを一気にゲットしたい芸能プロとタレント。みんなの思惑を乗せて、テレビCMは作られます!!
(絵/カズモトトモミ)
【プロセス01】
クライアント企業からの発注ゲット!!
■広告制作スタート
電通の言い分:
「裸芸で広告取れるなら安いもん」
芸能プロの言い分:
「営業マンに取り入ってウチのコをCMに」
クライアントからのCM制作の依頼を受け、電通社内のクリエイティブチームがCM案を作成する。しかしクリエイティブはしばしば、予算や芸能界の事情を無視した、オシャレすぎる無茶なプランを出してくることも……。といっても、クライアントが芸能界に疎い場合にはほぼ電通の提案任せになることも多い。逆に、クライアントの宣伝部長がミョーに芸能通で、電通の気づかぬうちに芸能事務所との間で勝手に出演タレントが決定、なんて場合も。
営業マンは「全裸前掛けで鍋の給仕」等の宴会芸を駆使してクライアントを必死に接待するも、企業コンプライアンスがやかましい近年、そうした電通秘伝の“技”は失われつつある。
(絵/カズモトトモミ)
【プロセス02】
熟考に熟考を重ね、出演タレントを決定!!
■芸能プロと出演契約締結
電通の言い分:
「スキャンダルとか起こさないでくれよ」
芸能プロの言い分:
「“偽装工作”も立派な仕事のひとつ」
CM案がクライアントの了承を得たら、キャスティング局がタレントの所属事務所にオファーを出し、条件交渉ののち契約に至る。その際の注意点は、CM内容が契約・出演中の仕事(CM・ドラマ・映画)等と競合しないかどうか。どこで人目に触れるかわからないため、タバコのCMなら普段吸っている銘柄をクライアントの商品の箱に入れ替えて偽装し、携帯電話のCMなら私物との2台持ちは当たり前だ。
他方、アコム等の消費者金融やアートネイチャー等のカツラ・育毛関係など、敬遠されがちなCMの場合、交渉次第でギャラの上積みも可能だが、当面、資生堂などのイメージを重視するクライアントから声がかかりにくくなるのが難点だ。
(絵/カズモトトモミ)
【プロセス03】
スタジオにこもりっきりで少しでもよいものを撮る!!
■いよいよCMの撮影
電通の言い分:
「ヨイショ攻勢でつつがなく撮影を」
芸能プロの言い分:
「なんで打ち合わせと違う撮影なの!?」
ようやくこぎ着けた撮影当日。「現場ではタレントをお姫様・王子様扱いするのが業界の慣習ですから」という電通の調教が効きすぎて、撮影スタジオにはクライアントからの大量の花が。本来、ギャラをもらってクライアントのご機嫌を取る側であるはずの芸能事務所とタレントは若干ヒキ気味。
だが、撮影が始まれば話は別。事前の打ち合わせでタイツばきと決まったのに、突然現場に現れたクライアントの社長が生足を主張し始めたり、2つの事務所のタレントによる共演CMで「ウチの子が3秒しか映ってない」「もっとアップをくれ」と両事務所が揉めたりして、電通の営業とキャスティングを板挟みの重圧で苦しませる。
(絵/カズモトトモミ)
【プロセス04】
来年もぜひともお世話になりたいんです!!
■目指せ契約更新
電通の言い分:
「タレント同伴接待よろしく」
芸能プロの言い分:
「CM契約の切れ目は縁の切れ目」
CMが無事オンエアされ、いよいよ契約更新の季節。契約を継続してもらうべく、芸能事務所は社長自らタレント同伴でクライアントを接待。だが、クライアントが契約打ち切りを望む場合、タレントに直接お願いされると断りづらくなるため、更新時期が近づくと事務所の誘いを断ることも。
一方で昨今、織田裕二が99年にNTTドコモからau、さらに09年にドコモに返り咲き、またSMAPが09年にドコモからソフトバンクモバイルに乗り換えたように、CM契約の切れ目は縁の切れ目といわんばかりの移籍も珍しくない。そのウラには、クライアントとタレントの食事会を必死にセッティングする電通マンの姿があったりする。