サイゾーpremium  > 特集2  > 【自己啓発】がブームになるわけ

──市場の売り上げ減少が続き、その底も見えない出版業界。そんな業界において、「人生のすべてを成功させる哲学」や「年収を10倍アップさせる生き方」「奇跡を起こす方法」や「人から愛される原則」などを教授してくれる、いわゆる“自己啓発本”は、まだまだ活況を呈しているようだ。次から次へと新刊が発行され、書店の一番目立つ棚を占領せんばかりの勢いで平積みになっている同ジャンルの背景にあるものはなにか? この特集ではその裏側やサクっと紹介する自己啓発の名著、さらには編集制作の裏側まで紐解いてみたい。

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『道をひらく 』(PHP研究所)

 マイナス成長が続く出版業界において、いわゆる“自己啓発本”は次々と新刊が発行され、書店の目立つ棚を占領せんばかりの勢いで陳列されている。なぜそんなに自己啓発本ばかりが活況を呈しているのだろうか? 昨今の自己啓発本ブームについて考察した研究書『自己啓発の時代「自己」の文化社会学的探究』【1】の著者・牧野智和氏は次のように指摘する。

「大企に勤めれば一生安泰、結婚はして当たり前など、従来的ライフコースがもはや自明ではない中で、新たな規範を示してくれたり、あるいは迷っている背中を後押ししてくれたりするメッセージを多くの人が求めている、これが自己啓発本の売れている背景としてあると思います。また、1冊ヒットが出れば、その著者のもとには『うちでもぜひ』と新たな依頼が殺到し、ほかの出版社からもヒットの流れに少しでも乗ろうと類似の企画が続く近年の傾向もあります。こうして短いスパンで次々と似たような新刊が刊行されていくわけです。さらにこうした量産体制の中で1冊あたりの文字数が減ったり行間が緩くなる“ライト化”が起こり、自己啓発本に対する敷居が低くなっていることもあります」

 このような需要と供給の相乗効果もあって、ベストセラーランキングには複数のタイトルが常時ランクイン。トレンドに乗り遅れまいとする読者は話題の新刊を買っていく。かくして自己啓発本は書店に山積みになっていくのである。

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