サイゾーpremium  > 特集  > [食品業界]トップ企業の爆弾──ブランド...

──2010年に起きたサントリーとの合併騒動以降も、順調に売上げトップを走る飲料系のキリンホールディングス、激安居酒屋ブームにより、さらなる需要拡大に成功した調味料系の味の素。食品業界を牽引する両者が直面する、本当の"危機"に迫った──。

トップ企業

キリンホールディングス
「クラシックラガー」「ブラウマイスター」といった商品で"通が好むビール"として君臨していたのも今は昔。業界2位のアサヒに、売上高で約7000億円の差をつけてはいるものの、ブランドイメージは崩壊寸前。次なる一手に注目を。

味の素株式会社
うま味調味料で約85%、和風だしの素で約50%、コンソメで約70%と家庭用市場シェアを席巻中。食品メーカー向けのアミノ酸や飲食店向けの加工食品も安定的で死角はなさそうだが、化学調味料などの論争が続く限り安定は難しそう。

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(絵/小笠原徹)

 放射能汚染の影響や原材料の高騰、TPP問題など、2011年は食品業界全体が大きく揺れた1年だった。今後も混乱が予想される同業界にあって、現在トップを走る企業が抱える問題点とは何か。『食品業界のしくみ』(ナツメ社)の著者である齋藤訓之氏に、業界の現状と動向を聞いた。

「食品業界全体としては売上高6兆1945億5400万円(11年9月時点・日本経済新聞社調べ、以下同)でJTがトップなんですが、その8割近くが国内外のたばこ事業の売上げなんです。なので、実質的な業界トップは、売上高2兆1778億200万円で、飲料系のキリンホールディングスといえるでしょう」

 発泡酒の「淡麗グリーンラベル」や第3のビール「のどごし〈生〉」の台頭で売り上げを伸ばしたキリンだが、その先行きには不安もあると齋藤氏は指摘する。

「10年にキリンビールとサントリーの合併騒動がありましたよね。当時、『海外戦略のための統合』と報じられていましたが、共に"国内で"力のある企業です。しかも同じ飲料メーカーであり、普通なら、海外の飲料メーカーや、国内でもまったく違う業種の企業と統合することを考えるでしょう。キリンは本音のところ、ただサントリーのブランド力が欲しかったのではないかと思うんです。というのも、サントリーは『ザ・プレミアム・モルツ』などのブランド戦略が巧みで、競合他社が価格で勝負する中、あえての高級路線で成功。一方のキリンは、メインブランドであった『一番搾り』が影を潜め、今では居酒屋で見かけることも少なくなりました。現在は、先の発泡酒や第3のビールがビール類売り上げシェアの3分の2を占めている状態。ビールメーカーにとって命綱であるビールのブランドイメージが、外食向けでも、家庭向けでも、他ブランドの後塵を拝している印象が否めない」

 一方、飲料系ではない企業で見ると、トップにいるのは売上高1兆2076億9500万円の味の素だ。本家のうま味調味料のほか、外食産業向けの調味料や冷凍食品、加工食品が約40%のシェアを占め、飲料系メーカー同様、"業務用"の売り上げが大きな利益となっている。そのためか、同社では「真偽はともかく、業務用部門のトップはよく、"次期社長"と噂される」(斎藤氏)とか。

「業務用の加工食品を、その店に合わせて開発して売るシステムがあるんですが、味の素は特に力を入れていて、社内でもこの業務用食品の開発部署の発言力は強いと聞きます」(某飲食店店長)

 ただ、「味の素」の原料となる「廃糖蜜」や、同社が開発した人工甘味料「アスパルテーム」に対する健康面への疑問は跡を絶たない。メディアでも度々その発がん性や精子減退の危険性などが指摘されており、その都度、信頼回復にも多大な労力を割いているという。

「味の素では、メディアに批判されると、社内の"火消し"専門家がわざわざ版元に出向いて安全性の説明をしていると聞きます。ある意味、クレーム慣れしてるんですよね。強いブランドの背景には、地道な活動があるんでしょう」(齋藤氏)

 そもそも食の安全性に関しては、これ以外にもさまざまな分野で議論されており、国民の関心度も年々高くなるばかりだ。まして11年は放射能問題の影響で、野菜や食肉について、これまで以上に安全性が問われるようになった。特に近年では、遺伝子組換えの穀物飼料も問題視されており、国内でもその使用に関しては慎重派が多数。前出の齋藤氏は、「バイオエタノール開発などの影響で、12年以降も、再び世界的な穀物の価格上昇が予想されています。そうなれば、アルコール類にせよ、食品にせよ、人ごとではない。それに対応するため、以前はどの企業も研究チームを持っていた」というが、現状はどうなのだろうか。キリンと味の素のお客様センターに問い合わせたところ、共に歯切れの悪い回答が戻ってきた。

 まずはキリンに、今後遺伝子組換えの原材料を使用する可能性があるかと尋ねると、「原材料の価格高騰があるかはわからないのですが、商品を作る際、非常に安全面には気を配っておりまして、遺伝子組換えのものは一切使用しません」と慣れた口ぶりで説明された。が、遺伝子組換えの研究チームを持っているかとの質問には、「研究は継続的に行っていると思うんですけど、今後も使用する予定はないんですね」との答え。使用する予定はないのに、研究だけはしているという。その意図を問い詰めると、「えっと……、一度担当部署の者に確認させていただいてもよろしいでしょうか?(一度電話を切られ、数分後電話がかかってくる)先ほどのご質問に関してですが、現在はそういった研究は行っていないとのことで、今後も当社では遺伝子組換えに関しては使用する予定はございません」とのこと。「研究は続けている」「担当部署」など、怪しい発言はあったものの、あくまで否定に留まった。一方味の素にも、遺伝子組換えの原材料の使用について聞くと、「そういった話は私どものほうには降りてきてません」と一蹴。さらに、遺伝子組換えの研究に関する質問には、「こちらは一般のお客様のご相談にお答えする窓口ですので、そういったことはわかりかねます」と一貫した態度を示し、ではどこに聞けばいいかと尋ねたところ、「いえ、お客様のご質問はすべてここで承っておりますので、こちら以外にはございません。もうよろしいですか」と、にべもなく、大企業としての説明責任を疑うような対応を見せつけられた。

 企業がこう敏感になる背景には、国の強い反対姿勢が見て取れる。

「10年に、農林水産省が小中高生向けに、遺伝子組換えの安全性や、仕組みを教えるための冊子を作成したところ、その意向に反対する団体からの抗議を受けて、すべて廃棄処分されてしまったんです。関連するウェブサイトも同時に閉鎖され、業界内ではかなり大騒ぎになりました。その後担当部署が『内容が偏っていたので』と説明したのですが、現政権の"強権発動"だったに違いないという見方は、業界内に根強く残っています」(齋藤氏)

 しかし、生命維持活動のために一番重要となる食に関して、果たして遺伝子組換えを拒み続けるだけが道なのか。大手企業をはじめとするメーカーと、国全体のモラルまで問われることとなった昨今、一刻も早く"食の闇"が晴れることを願いたい。

(文/高橋ダイスケ)

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