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連載
CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第1回──COMIC編

"マネジメントもの"と"スポーツもの"のバランス感覚冴え渡る『GIANT KILLING』の器用さ

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──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!

2010年7月号 COMICクロスレビュー

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『GIANT KILLING』(15巻)
画/ツジトモ 原案協力/綱本将也
掲載誌/「モーニング」(講談社)
発売日/5月21日
価格/570円(税込)


 

 今年4月からNHKBS2にてアニメ化もされている人気サッカーマンガ。低迷の続くサッカーチームを舞台に、スポーツマンガでは珍しく"監督"をテーマに据えて描く。主人公の監督・達海猛(タッツミー)は、かつてイングランドのアマチュアクラブをFAカップでベスト32に導いた経験があるという設定。一昨年と昨年は『このマンガがすごい!』(宝島社)でも上位にランクインしている。

【脚本、演出家・麻草評】
★★★★★★★☆☆☆
優れたマンガはルール説明巧者
 どんなマンガでも、一番難しいのはルールの説明だ。世界観からマンガの楽しみ方まで。作り手側は、読者の理解力を過小評価し、つい説明過剰になってしまうもの。そこをぐっと抑えて、感情移入できる物語を作れば、読者は自然にその世界のことを知りたいと感じてくれる。ルールを飲み込ませるうまさは、優れたマンガの必須条件なのだ。本作もまた、その例に漏れず、ルールをしっかり体感させてくれる良作。ラフなようでいて緻密な描線も見事。

【ライター・森田評】
★★★★★☆☆☆☆☆
タッツミーの胸中など知りたくない
 本作の場合、フィジカル(身体) やメンタル(精神)の上位にタクティクス(戦略)の置かれている点が、じつに今日的であった。主人公を、プレイヤーではなく、監督にし、彼の思考をあからさまにしないのも、構造上の理由によっている。しかし14巻からは、しばらく過去編へと突入する。フィクションにおいて、過去編のたいていは、内面の暴露と一致してしまう。タッツミーの胸中なんて知りたくねえよ。じっさい、折角のスリルは後退した。

【批評家・宇野評】
★★★★★★☆☆☆☆
ハイブリッド路線でこのまま進め
 主人公が組織をどう回していくのかを見せる「マネジメントもの」と、ゲームの面白さをじっくり見せるイマドキの「スポーツもの」のハイブリッドだが両者のバランスがよく、安定している。意外と頭を使わせる内容なので、絵柄がポップで入りやすいのも適切。特定の要素(例えば監督の「哲学」とか)で勝負が決まる、としたほうが内容はわかりやすくなるだろうが、このバランスの取れた路線を堅持したほうが無難。過去編はやや冗長なので、ほどほどに。


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『進撃の巨人』(1巻)
作/諌山創
掲載誌/「別冊少年マガジン」(講談社)
発売日/3月17日
価格/440円(税込)


 
 人類が"巨人"の餌にされる世界で、残された人々は巨大な壁を築いて巨人の侵入から町を守っている。100年以上その平穏は保たれてきたが、ある日、壁を越える"超大型巨人"が出現し、町がまたひとつ潰された。その悲劇で家族を失った少年・エレンは、長じて巨人と闘う兵士を目指すが……。「別冊少年マガジン」の創刊号に当たる09年10月号より連載中。

【脚本、演出家・麻草評】
★★★★★★☆☆☆☆
絵柄の洗練は吉か凶か?
 デビュー連載にして代表作となるのではないかと思わせる迫力である。異形の巨人たち、そして主人公たちを彩るザクザクした描線と歪んだデッサンは、作者の主観を読者に体感させる。マンガの面白さは、絵柄と感情の合致にある。まだ始まったばかりの物語は伏線や謎を多く含んでいて評価が難しいが、いちファンとして連載を追っている筆者は、ただ先を期待するのみだ。それよりも、わずかに見られる絵柄の洗練が、吉と出るか凶と出るか。

【ライター・森田評】
★★★★★★☆☆☆☆
「設定の向こう」をどう見せるか?
 正直、連載誌で1話目を目にした際、ワン・アイディアの産物にすぎない、と感じられたのだった。が、単行本のサイズで見直せば、長編としての構成力に優れ、物語のレベルに強い引きが存在していることを認められる。問題は、その物語があらかじめ用意された絶望=設定の向こうをいかに覗かせてくれるかであって、現段階ではまだ十分な成果をつかんではいない。予断を許さない展開が続くものの、設定のプレゼンテーションにとどまる。

【批評家・宇野評】
★★★★★★★☆☆☆
「風呂敷の広げ方」は成功
 大味だが(だからこそ)ショッキングなビジュアルの力を利用しつつ、大胆な設定をコンパクトに紹介することに成功している。単行本1巻の引きもうまい。風呂敷の広げ方としては大成功じゃないだろうか。壁や巨人のメタファーはわかりやすく強力。それだけに、「外部」や「超越」への憧れ、衝動それ自体で作品を支える、なんて安直な方向には行かないでほしい。「やっぱりロマンが大事だよ」なんて何も言ってないに等しいので。


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『朝がまたくるから』
作/羅川真里茂
掲載/「花とゆめプラス」「別冊花とゆめ」(白泉社)
発売日/4月19日
価格/650円(税込)


 
『赤ちゃんと僕』『ニューヨーク・ニューヨーク』『しゃにむにGO』(すべて白泉社)など、少女マンガ史に残る名作を描いてきた作者による読み切り短篇集。少年犯罪の加害者の苦悩を描く「葦の穂綿」、親子の確執や恋愛における葛藤をめぐる「半夏生」、そして児童虐待をテーマに据えた「冬霞」の3作が収められている。長期連載だった『しゃにむにGO』から打って変わったシリアス路線。

【脚本、演出家・麻草評】
★★★★★★★★☆☆
他ジャンル誌でも輝くべき手腕
 例えば映画なら、特殊メイクでケガを作ってもホラー映画に分類されはしない。なのにマンガは、絵柄や記号、コマ割の類似性だけでジャンルが決まり、読者の感性に偏向をかける。もちろんその作品が生まれた背景や文脈を無視するわけではないが、もっと多くの受け手に届きやすい描線があるのではないだろうか。取り戻せない過ちと、それでも共に生きる覚悟。同じモチーフを様々に料理する手腕は、他ジャンル誌でも必ず花咲くだろう。

【ライター・森田評】
★★★★★★★★☆☆
作者が織った倫理、憐憫、希望
 罪は消えない。だからこそ、社会によって裁かれてもなお、自らに罰を与えずにいられないときがある。そのような仮定の中に生じる憐憫がここには描かれている。収められた3編はどれも犯罪をベースにしているが、登場人物に課せられる重圧は法の外側からやって来ている。彼らを苦しめているのは、あくまでも個人的な倫理だろう。それが一滴の希望をもたらすまでのドラマを、作者は端整に織った。

【批評家・宇野評】
★★★★★☆☆☆☆☆
無理に「いい話」にしなくていい
 この作者には誰か無理やりちゃんちゃん、と「いい話」に落とさなくていいと教えてあげるべきではないか。取り返しのつかない過去とどう折り合いをつけるかというのはこの作者が『赤僕』の頃から追求している主題で、相応に練りこまれているのは間違いない。そこから生まれるキャラクターもバリエーションが豊富で魅力的だが、どれも与えられる物語が貧弱なので非常にもったいない。そこに気づくだけで作品世界はぐっと深く広くなるはず。

麻草 郁(あさくさ・かをる)
1976年生まれ。造形する脚本・演出家。マンガ図像学専門家として、演劇やデザイン論の観点からマンガを分析。「ユリイカ」(青土社)などにも執筆。〈twitterID:asakusan〉

森田真功(もりた・まさのり)
1974年生まれ。ライター。純文学からマンガ、ロックミュージックからジャニーズまで、取り扱うジャンルは幅広い。レビューブログ「Lエルトセヴン第2ステージ

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