サイゾーpremium  > 特集  > 「ミクシィ」も「ツイッター」もいらない!...

──ツイッターブームがあいかわらず続いているその裏で、中高生の間だけで盛り上がるサイトがある。世間の潮流とは違うこれらのサイトを活用し、独自の文化を築いていくのか。そこにある、彼らだけの"ソーシャルコミュニケーション"とは!?

1007_keitai_ima.jpg
ギャルにもケータイコンテンツは大人気! リアルでは「CROOZ」が絶大な支持を得ている。君たちも使ってんの~?

 インターネットサービスが本格的に始まった1995年前後に生まれた現在の中高生は、物心ついた頃には自宅のIT環境が整備されていた「デジタルネイティブ」世代だ。そして、彼らの必須アイテムは、いうまでもなく携帯電話。通学の電車内で、放課後の街角で、常にケータイをイジる彼らの姿は、もはや当たり前の光景だ。実際、文部科学省、ケータイキャリア各社、教育系出版社、ティーン向けファッション誌など、どの機関・媒体の調査においても、09年の時点で、中学生で3~5割、高校生では9割以上が自分専用のケータイを所持しているという結果が出ている。

 しかし、我々がツイッターなどで中高生に出くわすことはそうはない。米Quantcast社によると、09年6月現在、米国でのツイッターユーザーのうち、未成年は8%。日本ではさらにその数字は下がると見られている。

「実際の生活圏が違うから、中高生には大人の使うソーシャル系サービスは向かないんです」

 そう語るのは『ネットいじめ』(PHP新書)などの著書を持ち、学校勝手サイト(学校裏サイト)の量的調査や中高生へのヒアリングを積極的に行う批評家・荻上チキ氏だ。

「人脈を広げることが目的のミクシィや、つぶやきが全世界に拡散するツイッターは、政治や文化など、実際の社会(ソーシャル)にいる見ず知らずの人々と共有できる話題を持っていればより楽しめるツール。しかし基本的に、中高生にとって最も大きな社会は学校です。だから、社会を広げるツイッターやミクシィを楽しめないというよりも、使う必要がない。それよりも、自らの親密圏を強化・メンテナンスできるサービスが好まれる。学校勝手サイトなどは、最たる例でしょうね」(同)

 現在、中高生が特に利用しているというソーシャルサービスは、【2】の表のとおり。07年、女子高生がモバゲータウンで知り合った無職の男性に殺害されるなどの事件が発生。そのため、10代=モバゲー、GREEというイメージがあるかもしれないが、荻上氏は「当然モバゲーなどのソーシャルゲームも人気はあるものの、ここ数年は特にホームページ作成サイトやリアル系、プロフィールサイトなど、単機能型サービスの中から好きなものを組み合わせて使うケースが目立つ」と指摘する。

 事実、あるSNS業界関係者によると、現在1800万といわれるモバゲーユーザーのボリュームゾーンは20代。彼らが4割を占め、10代ユーザーは3割程度。30代とほぼ同数となり、最近では40代ユーザーの開拓に注力し、実際に増加傾向にあるという。

「20代以上のユーザーの中には、モバゲーが提供するゲームの有料アイテムを毎月数千~数万円購入する人も多い。しかし、10代ユーザーは1回に50ページを閲覧するなど、コンテンツに熱心にアクセスする半面、カネを落とさないし、移り気だから退会率も高い。正直な話、SNS業界は、10代ウケするコンテンツを開発しても、投資に見合うリターンを期待できないんです(苦笑)」(SNS業界関係者)

 なるほど、業者の思惑はわかった。しかし、モバゲーやGREEには、プロフィールやコミュニティなど、親密圏の関係強化に必要なあらゆる機能が用意されている。一方、単機能型サービスを複数使いこなすには、プロフで自己紹介を作成し、日記はブログ、その時々の出来事はリアルに書き込み、各サービスへのリンクをホムペに貼るという、とてつもなく面倒な作業が必要だ。なにもバラバラのサービスを使わなくてもいい気がするのだが……。

「親密圏での共感コミュニケーションを図るだけなら、モバゲーやGREEのようなファットな機能は逆に必要ありません。不特定多数とつながる必要がなく、特定少数と"絡む"だけなら、シンプルなデザインで更新や閲覧が簡単な上、メールで記事の投稿もできるホムペやリアルのほうが手っ取り早い。それに親密圏=クラスで仲がいい友達なんて、せいぜい数十人くらいのもの。彼らのホムペやリアルをブックマークして、毎日巡回するのなんてさほど手間にはなりませんよね」(荻上氏)

 ホムペやリアルを提供するポータルサービス「Chip!!」「@peps!」の運営元・P-NESTの佐藤竜史氏も「中高生にケータイのブックマークを見せてもらうと、最大件数いっぱいまで友達のホムペやリアルが登録されている。1日中ケータイを開いているようなコたちだから、それを巡回するのは苦痛じゃない。むしろ楽しみなんですよ」と笑う。

 なお、現在、640万アカウントを抱えるChip!!、420万アカウントの@peps!共にその8割は10代ユーザー。彼らがこれらを知るきっかけを作ったのも、親密圏だ。

「リアルは、顔見知り同士で『自分が今何をしているかや、その時の気持ち』を見せ合うことを前提にしたサービス。そのためか、中高生をリサーチしてみると、クラスの仲良しグループの中でもイニシアチブをとっていたり、情報感度が高かったりするコがまずChip!!や@peps!を発見し、そのコに『おもしろいサイトがあるから使おうよ』といわれて登録したという例が本当に多いんです」(佐藤氏)

 友達同士で、同じサービス、それもモバゲーやGREEのような誰もが知っているメガサービスではないものを一緒に使っている事実も、親密圏強化の一助となっているというわけだ。

 ただし、これはあくまで大人の目から見たひとつの傾向にすぎない。親が自分の子どもの交友関係のすべてを知っていないように、親密圏での中高生のソーシャル系サービスの利用動向を完全に把握することはできないという。

 たとえば、@peps!を見てみると、最もユーザーの多い都道府県は10・8%で東京都。人口分布から考えても妥当な数字だが、2位はなぜか6・4%の福岡県。一方、クルーズ社の提供するリアルサービス「CROOZ」は特に関東圏のユーザーが多く、ミツバチワークスの「デコログ」は近畿圏で強いといわれている。いずれも地元密着型などと謳ってはいないのだが、なぜかサービスごとに地域差が発生しているのだ。

「その地域での口コミ効果が大きかったんだろうと予測はできるものの、なぜ@peps!が九州で支持されるか、理由が全然わからない。おそらく他社も同じなのでは?」(佐藤氏)

 話題とあらば猫も杓子もツイッターに飛び付く大人と違い、中高生は口コミネットワークによって同時多発的にさまざまなサービスのブームを巻き起こす。それだけに、荻上氏は「若者のトレンドでカネ儲けできるなんていうのは90年代までの発想。『今時の若者のネット事情』なんて言葉で括るのはムリがある。目立つヘビーユーザーは、あくまで一部ですから」と語り、前出・業界関係者も「リアルは年代を超えた認知には至らないはず」と口を揃える。

 さらに、リアルのユーザーの8割を10代が占めることからもわかる通り、ユーザーは年をとるにつれ、ミクシィなどの"大人向け"サービスに移行してしまう。世代交代が早く、何を引き金にヒットするかわからない業界において、事業者はどのように若者の心をつかんでいるのだろう。

「メールという気安さもあるのか、私たちの元には毎日何百件もの要望やクレームが送られてきます。また、退会時のアンケートにも結構マメに答えてくれる。中には『バナーを外せ』なんてムチャをいうコもいますが、これが貴重な資料になるんです」(佐藤氏)

 P-NESTでは、ツイッターとほぼ同時期の06年9月よりChip!!にリアル機能を実装(ツイッターのサービス開始は06年7月)。その後、@peps!上でも展開しているが、実はこのリアルを始めた理由ですら、ユーザーの声だった。

「04~05年頃『レスはいらないから、とりあえず今やっていることをつぶやきたい』という、まさにツイッターに似たサービスを、ツイッターと同じ『つぶやく』という単語を使って望む声が多数寄せられたんです。ネットで友達と絡むのが楽しいはずなのに、そんなサービスが本当におもしろいのか、正直疑問でしたが、ユーザーの望なので、と始めてみたら、まんまとヒットしたのがリアルなんです」(同)

 現在、Chip!!、@peps!のリアルサービスにはコメント機能も実装されているが、誰のリアルを見てもコメント数は基本的にゼロ。

「あのころの彼らの言葉は、単なる『つぶやきたい』という要求ではなかった。ブログやSNSのような、コメントし合わなければならない双方向のコミュニケーションに疲れたから『とりあえず誰かに自分の状況を聞いてもらうだけ』という一方通行のコミュニケーションを望む意思表示でもあったんです。若者にウケるサービスを開発するには、そういうマインドの変化を"いち早く後追い"するしかないでしょうね。矛盾した言い方ですけど(笑)」(同)

 中高生たちの親密圏から生まれる忌憚なき言葉により、若者のネットソーシャルは形成されている。実はそこでのコミュニケーションの質は、大人たちのそれとそう大差はない。リアルの登場は、我々がミクシィからユルくつながれるツイッターに流れているように、若者もネットでのコミュニケーションに、ストレスを感じていたことの証拠といえるだろう。

 そして、自らの手でより居心地のいいサービスを提案し、大人たちに開発させる。彼らが使うサービスがてんでバラバラなのも、自分に合うものを独自のネットワークで探し出した結果だ。イマドキの若者は、デジタルネイティブの名の通り、我々よりもはるかに自在にネットを操っているのだ。

(文/成松 哲)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論
    • 音楽業界からの【賛辞と批判】
    • 【芸能プロ】的戦略が抱える2つの“矛盾”
    • 令和の【ジャニーズ・シングル】20選
    • 20年代のジャニーズ【ミュージックビデオ】

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

インタビュー

サイゾーパブリシティ