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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第35回

「環境悪化と財政負担」という高速道路無料化批判のウソ(前編)

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――民主党政権の重要マニフェストのひとつに挙げられる高速道路無料化。03年より民主党が主張している政策だが、政権獲得後も依然として財源や地球環境への影響を理由に反発の声も根強い。だが、"元祖高速道路無料提唱家"といわれる今回のゲスト山崎養世氏は、そのいずれの批判も的外れだと一蹴する。もともと無料で利用できた日本の高速道路はなぜ有料化されたのか? 財政負担や環境への懸念から利益便益の向上にとどまらない、知られざる高速道路の問題を浮き彫りにする。

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【今月のゲスト】
山崎養世(一般社団法人「太陽経済の会」代表理事)

神保 今回は高速道路無料化の元祖提唱者であるシンクタンク代表の山養世さんを招き、民主党政権の目玉のひとつである同政策について議論を進めたいと思います。高速道路無料化は2003年の総選挙から民主党が主張している主要政策ですが、いよいよ民主党が政権を取り、実現の可能性が出てきたところで、急に方々からこれを問題視する声が出てきているようです。

宮台 朝日新聞が8月31日と9月1日に実施した世論調査によれば、高速道路無料化を「評価する」が23%、「評価しない」が67%。ここまで否定的世論が出てくるのは驚きです。反対派が何を懸念するのか、内訳データが知りたいところ。どんな理由で反対なのか明らかなら個別に議論もできますが、結果報告だけではただのネガティブキャンペーンです。思うに、長らく政権交代がなかったことにも関係しますが、日本人は「おまかせ政治」メンタリティで「許せないことにお灸を据える」投票行動が専ら。

 05年郵政「抵抗勢力打破」選挙もそうだし、今回の「政権交代」選挙もそう。「馴染みのもの」「慣れ親しんだもの」を理念に基づいて変えるのが不得意です。ただし理念で反対するわけじゃないので、「すでにそうなっている」とか「皆もそうしている」と"わかる"と、簡単にあきらめる(笑)。敗戦後の「鬼畜米英」から「アメリカさんありがとう」への変化みたいにね。だから、外国人労働者問題にせよ、夫婦別姓問題にせよ、高速無料化問題にせよ、民主制に任せると動かなくなりますから、政治が強引にでも主導して既成事実を作り上げ、慣れさせるしかないです。

山崎 マスコミ、経済界を巻き込んで、霞が関が総力を挙げて潰しにかかっていますからね。マニフェストに掲げられ、国民に選択された政策に対して、公務員が公然・非公然の反対運動を行うということは、普通に考えれば罷免行為に当たります。それが許されていることが、日本の官僚主導というものがいかに強固かという証明になるでしょう。

神保 そもそも、公務員はなぜ、高速道路の無料化を潰さなければいけないのですか?

山崎 年間2兆3000億円の通行料金を取れなくなることが嫌なんです。「受益者負担の原則を無視し、一般国民の税金を投入して、高速道路の借金返済に回すとは何事だ」というのが反対論の最大の根拠ですが、これはまったくのウソ。高速道路ユーザーは、通行料金のほかに、ガソリン税などを通じて年間2兆円もの税金を支払っています。受益者負担の原則に則るならば、この2兆円が高速道路にかかわる財源に回されるのは当然ですが、これには一般道路の建設に使われてきたという長い歴史があるのです。

 つまり、通行料金を徴収した上に、二重取りした税金で無駄な道路を作り続けている。高速道路の借金返済の必要額は、年間1兆3000億円ですから、無料化に必要な財源は高速道路ユーザーが支払う税金で十分に賄えるのに、この事実がずっと隠されてきました。つまり、「取れる金は取ってしまえ」と。経済全体の成長などは考慮しない、近視眼的な財政の考え方に乗っかったシステムだといえます。

神保 今や高速道路は有料なのが当たり前になっていますが、実は日本の高速道路はもともと無料だったのですね。なぜ通行料金を取るようになったのでしょうか?

山崎 東名・名神高速建設の際の有料化がきっかけです。両高速道路の建設には4573億円かかりましたが、当時の道路財源は全体で年間200億円しかなかった。つまり、23年分の道路財源が消えてしまうわけですから、4分の1を世界銀行に、残りを郵貯や簡保の財政投融資で賄いました。この借金を返済するため、56年に「道路整備特別措置法」が作られ、高速道路が有料化されたのです。これは仕方がないことですし、あくまで"特別措置"であり、返済が終われば無料に戻されるはずでした。しかし、東名・名神の借金が返済された90年以降も、通行料金の徴収は続いています。これは、72年に田中角栄首相により料金プール制が導入されたからです。このことで、ほかの路線の建設に回すために、永遠に通行料金を取り続けることが可能になってしまった。このシステムを今も守り続けようとしているのが、否定派の急先鋒・猪瀬直樹さんであり、財務省であり、国土交通省であり、道路公団なのです。まやかしの二重取りはやめて、原理原則に戻れば済む話なのですが。

神保 とはいえ、860兆円の債務を抱えた日本に、高速道路の利用料という貴重な財源を手放す余裕があるのかという議論も見られます。こちらについてはいかがですか?

山崎 そうした議論が出てくるのは、無料化だけを見ているからです。現在進行している道路公団の民営化策では、新たに借金をして地方に赤字路線を作り続ける計画があります。つまり、通行料金を取り続けても、現在34兆円の借金が減るわけではない。入ってきた税金を借金負担に充てないというスキームになっているため、さらなる借金と金利上昇の可能性を考えると、いずれ国民に負担がかかるリスクが非常に高い。また、首都高や東名・名神など、利用者の多い都市圏では黒字ですが、地方の高速道路はほとんど赤字です。1キロ走って25円、一時間100キロ走れば2500円という高額な料金を払える人は少ない。料金が高いから、日本の高速道路80 00キロのうち、実に65%の5 000キロはガラガラで、隣の一般道が渋滞しているという状況なのです。そこで「一般道路が混むから、もう一本作ろう」という無駄なことを繰り返している。

 そうして日本の道路支出は年間8兆円に迫り、いまや英仏独伊の欧州主要4カ国の合計額に匹敵するほど莫大なものとなっています。ドイツに至っては、2兆5000億円ほどで、一般道に加えて世界一の無料高速道路と称されるアウトバーンを維持しています。日本の教育予算はGDPの3・5%という水準で、先進国の中で最低レベルですが、道路に関しては超大国です。少子高齢化とともに、道路を使う人も減少していく中でこの状況ですから、二重取りを続け、お金をばらまくため――つまり利権を守るためだとしか考えられません。

中編へ続く


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