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第2特集
絶好調!の嵐はホントにスゴいのか?【2】

音楽評論家・佐々木敦が選ぶ「嵐の音楽」がわかるシングル10(前編)

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 僕は大学でJポップの講義をしていますが、その中で嵐について触れることはありませんでした。そこで今回デビューから現在までの全シングルが収められたベスト盤(最新シングル「Everything」は未収録)を聴いたところ、嵐がなんなのか完全に理解できましたね(笑)。

 ジャニーズの音楽的特徴といえば、少年隊の「仮面舞踏会」(85年)のようなラテン的なエッセンスで、現在もタッキー&翼などに受け継がれていますが、嵐にそれはほとんどなく、親しみやすい男子たちがハモリもせずユニゾンでバラードを淡々と歌う、という印象がまずあります。でもそれは、当初ダンサブルな曲が中心だったSMAPが開拓したパターン。後続世代の嵐は、それにラップを加えているのです。

 そうしたことには、いくつか理由があったと思いますね。嵐のデビューは99年ですが、97年にDA PUMPが登場する。歌も踊りもうまい彼らがヒットしたインパクトは大きく、それまで男性アイドルといえばジャニーズでしたが、潮目の変わる空気があったはずです。そんな中で嵐を結成するときに、世間一般的にハンサムだけど突出した歌唱力やダンステクニックやヴィジュアルを持っているわけではない男の子たちを集め、キムタクみたいなカリスマ・アイドルをひとり備えることも放棄したと。その代わりに、DA PUMPを意識してラップを新しく打ち出す発想に(事務所は)至ったのではないでしょうか。また、90年代後半はJラップが盛り上がっていった時期。高学歴で毛並みの良い櫻井翔が、あえてゲットーのイメージに挑む感じは、ZEEBRAと通じていますよ。

 そうして始動した嵐ですが、「A・RA・SHI」「台風ジェネレーション」といった初期のシングルは、リズミカルな楽曲に無理にラップをはめ込みメロディアスなコーラスをつなぎ合わせた感がどれもあり、同工異曲と言えます。しかし、その方法論だけで活動していくことに不安を覚えたのか、06年の「きっと大丈夫」あたりからどのシングルも手の込んだ作曲がなされ、そしてリスナーの人生を肯定する応援歌調の「いい曲」を彼らは歌うようになりました。それが現在のイメージとして定着しています。

 世間での親しみやすさを重視し、特権的アイドルではなく、等身大的なイケメンたちがほどほどに歌って踊ったのがSMAPならば、それをさらに突き詰めたのが嵐。キムタクのようなひとりのカリスマさえいない彼らの音楽は、一部分が強調されることなく5人でフォーメーション・プレイが可能になっている。かくしてお茶の間の支持を得たわけで、「いい曲」系とラップ系の二段構えで僕がセレクトした10枚を聴けば、そのことに気づくと同時に、嵐はジャニーズの完成形だと知ることでしょう。(談)
(シングルレビューは後編へ 構成/砂波針人)


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