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第2特集
極私的 MJ(マイケル・ジャクソン)論──鈴木邦男[新右翼・一水会最高顧問]

彼が見せた我が国への愛着 目指したのは日本人だった

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 かつてビートルズが来日したときに、赤尾敏さんの大日本愛国党が街宣車で「ビートルズを叩き出せ」とやったもんだから、右翼=ビートルズ嫌いという構図ができてしまった。だから、80年代にマイケル・ジャクソンが来日したときも「マイケル騒動をどう思いますか?」なんてよく聞かれたけど、結論からいえば「マイケルを排斥せよ!」なんていう右翼の活動家はいないですよ。僕が「マイケルは青少年を不良化させる!」とか言うのを期待して質問してくる人も当時は多かったけど、不良化しないからね、そんなことで。

 そもそも、ビートルズのときだって、"反対運動"なんてしたのは赤尾さんのところだけ。一般の右翼は、芸能ネタであって政治マターでないビートルズの"来日問題"に、さしたる興味を持っていなかった。三島由紀夫さんなんかは、コンサートをとりあえず観に行っていますしね。愛国党にしても組織一丸となった動きというのはなかった。安保更新の70年代を目前に控えて引き締めの意味もあっただろうし、ああいう派手なパフォーマンスは赤尾さんなりの"サービス精神"もあったんじゃないかと、今になって思う。

 右翼というカテゴリーにいる人の中には、確かに「コーラを飲まない」とか「ハリウッド映画は絶対観ない」なんていうのもたまにいるけど、そんなのは少数。ほとんどが、子どもの頃から普通に欧米文化に接し、憧れて、影響を受けながら育ってきた。僕だってポール・アンカやプレスリーに憧れたし、ビートルズだって聴いた。今、マイケルをどう思うかと聞かれたら、特段彼を詳しく知っているわけではないけども、「普通には好きですよ」と答えるしかない。優れた歌手として、敬意も持っています。

 彼は加齢とともに顔が白くなっていきましたよね。その原因が俗にいう整形手術による脱色なのか、本人が言うように病気なのか、その本当のところを僕は知らないけど、あれが黒人にとっての裏切り行為として暗殺の対象にならないわけだから、まだ平和ですよね。たとえば、マルコムXは黒人解放運動において、かなり過激な言動を繰り返してきたけど、少しでも穏健な行動をとると「裏切り」「日和見」といわれて、味方の勢力からも攻撃対象になりうる状況だった。マルコムXが肌なんか白くしたら、すぐ撃たれていたでしょう。

 ただ、マイケルの肌のことでいえば、巷でいわれているように白人になりたかったわけじゃなくて、あれは実は日本人になりたかったんじゃないかと思うんです。彼は日本が好きで、日本のマインドを愛して、そして日本人になろうとした。奇異に聞こえるかもしれないけど、僕はありうると思うんですよね。

 彼が日本という国に対して非常に愛着を持っていたことは間違いない。日本の空手団体から名誉五段を授与されるほど空手に傾倒した時期があったようだけど、武道とはその国の精神風土。そこに関心を持ってもらえることは、日本人としてはありがたいことですよ。あと、2年ほど前に来日したときは、40万円のチケットでマイケルを独り占めできる「個室ツーショット撮影会」とかいうのをやったでしょう。いろいろ議論はあったみたいだけど、40万円というのはすごく親切な価格設定だと僕は思うし、あれも日本への愛着のひとつの表れとも思える。コンサートツアーも3〜4回やっていますよね。来日回数も多い。ただ儲かるからだけではなくて、日本という国をすごく好きだったんだと思いますよ。

 マイケルは命を懸けて日本人になろうとしたんじゃないか。その半面、一般の日本人たちは、日本人でいることを当たり前にとらえすぎている。日本人でいることに疑問を持つこともないし、それに甘えている節がある。そもそも、なろうと努力する必要なんかないから。

 かつて新井将敬という政治家がいた。彼はもともとが朝鮮籍で、10代で帰化したわけだけど、最後まで日本人になろうと苦悩していたようなんです。結局、証券スキャンダルの一件で命を絶つことになるわけだけど、それより前に彼と会ったとき、「鈴木さん、日本人になろうと努力したことがありますか?」と聞かれて「は?」と思った。そんなこと我々は考えないからね。日本人になりたいと思うということは、「日本人とは何か」を考えることにつながるんです。それは日本人自身が忘れてしまった、最も大事なこと。新井さんにすればそれが、武士道であり、三島由紀夫であり、天皇だった。努力をして日本人の意味を知ることで愛国心が生まれる。その意味で僕は新井さんをとても立派な人だったと思うし、もしかしたらマイケルにもその一面があったんじゃないかと思えるんですよね。

 漫然と生きていると、日本人という意味を深く理解できないし、国を愛する心も芽生えない。だから、一度足元を見つめて考え直すことも大事じゃないかとね、マイケルの死をきっかけに。
(談)

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すずき・くにお
1943年生まれ。早稲田大学卒業後、産経新聞社を経て、72年に新右翼「一水会」を結成。99年まで代表を務め、現在は最高顧問。左右にとらわれない論客としても知られ、『愛国と米国』(平凡社新書)など著書多数。


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