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カリスマ海洋考古学者 ロバート・F・マークス氏インタビュー

「サルベージとは、歴史に新しい息吹を 吹き込む作業なんだ」

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ロバート・F・マークス(写真いちばん左)。

 本文でも名前が出てきた、RST社とコンサルティング契約を交わしている米海洋考古学者のロバート・F・マークス氏。世界的な海洋冒険家で、トレジャーハンターでもあるが、日本メディアへの露出は極めてまれだ。今回、本格引き揚げ作業が進む中、フロリダ州にあるRST社の現地法人と国際電話をつなぎ、インタビューを敢行、サルベージの現場の実情を聞いた。

──現地の様子について、聞かせいただけますか?

マークス(以下、) ケープカナベラル(フロリダ)の現場は、比較的街から近いので快適だよ。作業海域も港から10マイルと近く、海上でなく毎晩陸地で眠って出勤できている。ただ、スペースシャトルの打ち上げが……。

──スペースシャトル?

 そう。ケープカナベラルにはケネディ宇宙センターがある。シャトルの打ち上げ前1週間は、この海域からは離れなくてはならない決まりでね。作業が滞るよ。

──天候はいかがでしょうか?

 欧州へ向かうメキシコ湾流とカナダから降りてくる寒流がぶつかると、海がすごく荒れる。そんな状態が、1年の半分ほど続くんだよ。

──バハマの現場は?

 バハマ海域は、世界中でも最も多くの竜巻が発生するエリア。竜巻は突然現れて数秒で船を破壊するから。ほんと、恐怖だよ。

──聞くだけで、大変そうですね。

 仕事が山積みでね……。政府から山ほどの許可証を取得するところから始まって、ダイバーや技師、船員の選出をしたり、アル中や大麻と無縁の船長も探すのにも苦労した(笑)。船という狭い空間で、大勢のクルーとうまくやっていける温厚な人たちをね。

──作業をしていて、最近いちばん驚いたことは?

 ケープカナベラル沖では、ロシア船がNASAの打ち上げを常時モニタリングしているんだよ。ある日、私がアメリカ領海外で作業していると、突然巨大なロシア潜水艦が浮上してきた。驚いたよ。

──え?拿捕されたとか?

 いやいや(笑)。船員のひとりが腹痛を起こしたとかで、手当てをしてくれと言われてね。薬をあげたらケロっと。お礼にウォッカを6本もらったよ(笑)。

──はぁ……(笑)。バハマでは何か?

 バハマは現在もジャマイカやメキシコから麻薬が密輸されてるんだ。『マイアミ・バイス』で見るような大きな船が高速ボートに麻薬を積み替え、75ノットの速さで、ここから米本土に運ぶわけさ。そんなボートにうっかり近づくと我々を海上警察と間違え逆に襲ってくることもある。そういう事態を想定して、こちらも武装しているけど。命がけだよ。

──今までそういう危険な局面に遭ったことは?

 あるよ(笑)。過去にそういうケースで命を落としたクルーは相手側だけなので、ご安心を。

魅力は刺激と冒険心。サルベージはお金じゃないよ

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彼がコロンブスの大西洋横断を再現したことを紹介する「週刊朝日」の記事(1962年)。

──今回、引き揚げが見込まれる財宝の金額は?

 今回のターゲットであるマラビアス号は、過去に一度、財宝の一部を引き揚げた経緯があるんだ。こいつは、New World(大航海時代に新たに発見された土地に対する当時の呼称)からスペインに向かう途中で沈没した、たくさん船の中のひとつ。その中でも2番目に大きいので、最低でも2500万から5000万ドル(約25~約50億円)にはなると考えている。それ以外にも、周辺に何隻も沈んでいるガリオン船のデータもあるので、そこから出てくる財宝も加えれば数字は拡大すると思う。

──サルベージの何に魅力を?

 刺激や冒険心だね。毎朝私は海岸を歩く。漂着している古いコインや珍しいもの、つまりヒントを見つけにね。この間は10ドル札を見つけたよ(笑)。陶器の破片なんか見つけたら立ち止まって、「最後にこれを手にした人は誰だったのだろう」と思いめぐらせる。私にとってサルベージはリッチになる手段ではなく、歴史に新たな息吹を吹き込む作業なんだよ。理解してもらえないことが多いけどね。

──将来的に、日本近海でもサルベージの計画はありますか?

 あるさ!もともと私は長崎周辺で、マカオと日本を往復していた黒船をサルベージしたいと思っていたんだ。ただ日本では海洋考古学に関する法律が整備されていないので、それが可能になる日まで、信頼できる日本のパートナーと他地域で一緒に作業を続けることにしたんだ。それが今というわけ。

──今回、いちばん手に入れたいものは?

 幼少のキリストを抱く等身大の聖母像が、今回の沈没船の中にある可能性が高いんだ。それが見つかればねぇ……。もう、最高に幸せだよ!

ロバート・F・マークス
1936年生まれ。海洋考古学者。アメリカのスキューバ・ダイビングの先駆者でもあり、その技術と知識を生かして、数々の沈没船や財宝の引き揚げに成功している。歴史や考古学・沈没船等の分野での著書は60冊以上。4月に『コロンブスそっくりそのまま航海記』(朝日新聞出版)が刊行された。


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