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第1特集
「不人気の高級国産車が販売店に貢献」という矛盾

マーチ、ヴィッツが売れても販売店に儲けが出ないワケ

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──昨今、不況の自動車産業で騒がれるのは、「派遣・期間従業員切り」「決算予想の下方修正」といった、メーカー側に寄ったものが中心で、販売店の話はあまり聞かれない。だが、販売店の状況もひどかった。そこでは、"薄利多売"が加速しているというのだ──。

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そんな今、買うべき販売店泣かせの"コストパフォーマンス"が高い車種
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 自販連(日本自動車販売協会連合会)が、2月2日に発表した2009年1月の国内新車販売台数(軽自動車を除く)によると、前年同月比で27・9%減の17万4281台と、1月期だけでも1969年以降最大の落ち込みとなっている。この数値は、80年代のバブル全盛期の約半分。世界的な景気悪化を背景に、自動車業界の新車販売台数は歴史的な低迷が続いているのだ。そのため、トヨタをはじめとする国内各自動車メーカーでは、「新車が売れないなら、生産台数を絞り込む」という方針を余儀なくされている。

 しかし、マスコミで騒がれるのは、自動車を生産しているメーカー側の話が中心だ。では、エンドユーザーへの直接の窓口となっている自動車販売店ではどういった状況なのだろうか?

「各店舗ごとに年末から趣向を凝らしたキャンペーンを張っていますが、ボーナスシーズン真っ只中でも販売店に足を運ぶお客さんは減る一方。そのような状況でも、ハイブリッドカーやコンパクトカーなどの燃費が良い車種に注目は集まっていますね」(都内販売店セールスマン)

 バブル期は高級車、バブル末期は街乗り専用のSUV、景気下降期には家族だんらんのミニバンなど、時代の経済状況により、エンドユーザーのニーズが反映される売れ筋の車種。環境問題に注目が集まり、景気が低迷する昨今では、プリウスなどのハイブリッドカーや低燃費を謳うトヨタのヴィッツ、日産のマーチ、キューブといったコンパクトカーが、低迷する販売台数の中でも比較的好調だという。

 さて、一般的にコンパクトカーとは、総排気量1000〜1500ccで、車両価格は100万円台前半の車種を指すもので、この販売台数が販売店を支えているのだが......。

「日産の車種を例に取ると、マーチ1台の販売店の純利益は15万〜20万円程度。人件費などを考えると、かなりの台数を売らなければならないという薄利多売の車種なんです。逆にシーマは、1台の契約で(イチ営業マンの)ひと月の営業ノルマを達成することさえあります。それもそのはず、首都圏販売店での営業マンひとりのノルマは月100数十万円といわれていますが、シーマの純利益とほぼ同額。その契約を取ってきたセールスマンは、周囲から羨望のまなざしを受けてましたよ(苦笑)」(日産販売店マネージャー)

 高級車とされるシーマの販売価格は700万円程度で、車体価格が高ければ高いほど売れた時の利幅も大きいというワケだが、理由はそれだけではないようだ。別の某販売店マネージャーが続ける。

「04年、日産はフーガの販売を開始しましたが、そのため価格的にも車格的にも同クラスであるシーマは旧タイプと見なされ人気薄となってしまった。メーカー側はシーマの不良在庫を抱えることを避けるため、大幅にディスカウントした卸売価格を打ち出し、販売店はメーカーから安く仕入れることができたんです。そのため販売店では、不況に合わせた値引きをしても、大幅な利益獲得を実現できました。

 こういったメーカーによる国産車のディスカウントは、トヨタではマークX、ホンダはアコードやレジェンド、マツダはアテンザ、三菱はパジェロなど、すでに売れ行き不振となっている一部の高級車を中心に行われています。これらはカタログなどに謳われている小売価格よりも格安で販売しても、販売店自体の大きな利益につながることが少なくありません」

価格・装備競争が過熱するコンパクトカーの"オトク度"

 高級車では、在庫を抱えたくないメーカー側の苦渋の選択が販売店の利益につながっているわけだが、注目の集まるコンパクトカーの場合はそうもいかない。

「各メーカー主力のコンパクトカーは、売れ筋なだけに販売競争も激しく、最近では、ナビゲーションシステムを標準装備(ナビは販売店でのオプションであるケースが多い)している車種もあるほど。確かにユーザーの懐具合を考えると、現在のコンパクトカーは魅力的に見えるでしょうが、販売店からしてみれば、約10万円という単価のナビを無償でつけることは足かせでしかない」(前出・マネージャー)

 販売店の営業努力は、それだけではない。

「ひと昔前は、親戚の多いセールスマンは困ったときに、親戚筋に無理やり車を売ることでノルマをクリアする、なんて話もありましたが、今はそんなことも希です。むしろ、いかにして販売店にユーザーの足を向けさせるかがポイントで、オリジナルグッズのプレゼントや数万円の購入資金サポートなど、インセンティブを各販売店の自腹で用意するなど、さまざまです。

 まあ、今やコンパクトカーは"利益"というよりも、その地域での販売台数を伸ばすだけの手段みたいなものですね。販売台数の伸びはそのままその販売店の成績につながり、ひいては話題性の高い新車デビュー時には、配車数で優遇されるなどのメリットがありますから」(同)

 薄利多売車種ともいえるコンパクトカーは、販売店にとって"諸刃の剣"という存在となってしまっているようだが、今や自動車メーカーは、世相に併せた車種の増強へシフトしている。その象徴的な例が、先日発表されたホンダのF1撤退だろう。

「これまで、同社総営業利益の約4割を投入したF1からの撤退で、"F1の名門、走りのイメージ"というホンダスピリッツを捨てることになりました。昨年度、販売台数ランキング1位を獲得したフィットなど、売れる現行車種の販売を強化する経営へと移行するようです」(前出・専門誌記者)

 利益の薄い車種を強化せざるを得ない製造メーカーと、それを売らなければならない販売店。今後、薄利多売競争が加速することは想像に難くないが、その先にある自動車産業の未来は明るいのだろうか?

(取材・文/編集部)

売れれば売れるほど赤字に?
ハイブリッドカー 世界戦略の落とし穴

 セレブたちが流行を牽引しているハイブリッドカー。懐にも優しく、オマケに税金も優遇されるとあって、デビューから数年経過した現在でも購入を考えるユーザーは多い。しかし、この車種も、販売店やメーカー泣かせの"薄利な車種"という一面を持っている。そもそも、国内市場の飽和を受け、北米市場へ打って出たメーカーに課せられたのは、普通自動車全体の約4割に相当するハイブリッドカーの販売。要は「北米で10台クルマを売れば、4台はハイブリッドカーも売らなくてはならない」とい法律のシバリがあり、メーカー全体の輸出販売台数が伸びれば伸びるほど、その販売台数も必然的に伸びてしまうのだ。

「自動車メーカーとしては差別化を図るため、売れる大衆車よりも魅力を感じさせるハイブリッドカーを作らなくてはならない。その代表格が、イメージ戦略に注力したプリウス。レオナルド・ディカプリオが親戚一同に買い与えたというシロモノで、モーター走行時に必要な電力を蓄えるバッテリー(ニッケル水素)を搭載している。実はこのバッテリーの開発・生産には莫大な費用がかかっているんですが、採算分岐があまりにも高すぎるため、採算が取れる前にモデルチェンジが行われる。そこでまた、バッテリーなどの改良に費用がかかる。つまり、売れれば売れるほど、利益はマイナスとなるんですよ」(モータージャーナリスト)

 北米で販売台数を伸ばすため、苦肉の策で投入したプリウスも、コンパクトカー同様、薄利......どころか足かせな1台なのだ。


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