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第2特集
大手新聞のニュースサイト、10年目でも迷走中のワケ【4】

ウェブで儲けるは至難の業!? ネット専業ニュースサイトに学ぶウェブメディアの "損得勘定"

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 ウェブ上においては、大手新聞社ではなく、ネット専業の中小のニュースサイトこそが先行者である。彼ら"先輩"のコメントを通して、新聞の未来も見えてくる?

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「シブヤ経済新聞」
ビジネス、カルチャーを中心に、渋谷周辺地域での出来事を丹念に拾い
上げて、1日3〜4本の記事を発信する地域密着型ウェブメディア。

 現在、国内に600以上あるとされるウェブメディアの大半を占めるのは、非新聞社系ウェブメディアだ。それらは、どのような方針や体制で運営され、また、ウェブの世界を熟知するウェブメディアの運営者たちは、新聞社とそのサイトをどう眺めているのだろうか? ウェブメディアの方法論のすべてが、体制や規模のまったく異なる新聞社にそのまま適用できるわけではないだろう。しかし、その実態を知り考察することは、新聞社にとって無意味ではないはずだ。

 まず「いかに稼ぐか」というウェブメディア共通の難問に、ひとつの明確な答えを提示している「シブヤ経済新聞」の例を見てみよう。同サイトの記事の取材・執筆は、西樹編集長を含むわずか数名の社内スタッフが担当、サイトの運営・管理も運営元である花形商品研究所のウェブチームが行う。つまり、完全内製だ。

「PVはあまり意識していない」という西編集長の言葉通り、同サイトの記事には事実を淡々と綴ったものが多く、クリックを誘引するような見出しもつけられていない。飲食店のオープンなどを伝える記事も、フリーペーパーのような有償の広告扱いではなく無償のものだ。では、どうやって運営費等をまかなっているのか。

「広告収入は多少ありますが、それほど大きな期待をしていません。ほかのビジネスがあったから続けてこられました」

 つまり、ウェブメディアはさほど儲からないものと考え、少なくとも軌道に乗るまでの数年間は、運営元のほかの事業などで運営費をまかなっているわけだ。しかも、完全内製のため、運営費といってもスタッフ数人の人件費だけ。もちろん、質の高いウェブメディアを運営していることは、本業にとって大いにプラスになる。

 この考え方は、新聞社にとっても、ひとつの方向性を示すものではないか。例えば、紙・ウェブ両メディアは直接的な利益を生まないブランディングのための部門と割り切り、収益は社の保有する莫大な不動産の運用などの事業で上げる。その収益を報道部門に投入し、メディアの質をさらに高める。同時に、ブランディングに不必要な部門を縮小・廃止して、コストを削減する。「本業は紙」というプライドさえ捨てられれば、現在の新聞社でも、十分に採り得る方策だ。

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「WIRED VISION」
「WIRED.COM」(アメリカ)の日本版である同サイトは、ビジネス・IT・
環境・カルチャーなど、幅広いジャンルのラディカルな話題を扱う。

 次に、「WIRED VISION」のウェブ認識と対応を見ていこう。運営元、株式会社ワイアードビジョンの竹田茂代表取締役は、ウェブの現状を次のように分析する。

「『WIRED VISION』のコンテンツも、それを志向しているのですが、近年、ウェブ上では、記事の短文化が進んでいます。その理由としては、ウェブが長文を読むのに適さないことと、長文記事を書くコストに見合うだけの広告収入を得られなくなったことが挙げられます」

 今後、短文化はさらに進み、ウェブ上のすべてのコンテンツは、繰り返し参照されることによって広告収入を上げる、「リファレンス(引用文献)」に近いものになっていく、と竹田氏は見る。

 膨大な量の過去記事をデータベース化、つまりリファレンスとして活用する試みは、すでに多くの新聞社でなされており、特に「日経テレコン21」は、企業向け有料情報サービスとして一定の成功を収めている。今後、記事内容の面でも、作成の段階からウェブを意識し、短文化・リファレンス化していくことで、新聞社は、コンテンツの大量生産・保有者というアドバンテージを、より生かしやすくなるのではないか。

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「エキサイトニュース」
コンテンツメーカーとしても、1日2〜3本配信の「Excite Bit コネタ」や、ロ
イターやAP通信のユニークな記事を掲載する「世界びっくりニュース」とい
った特徴的な記事で、多くのファンを獲得。

 続いて、「エキサイトニュース」が行っている、競合メディアとの連携についても触れておこう。同社ポータルビジネス本部の岩田大祐プロデューサーによれば、同サイトは、PV数で大きく水をあけられている「Yahoo!ニュース」との違いを打ち出し、差別化を図ることを常に意識し、オリジナルコンテンツに関しても、ほかでは得られない情報を一点でも盛り込むよう工夫しているという。その一方で同社は、ライバルであるはずのYahoo!JAPANやmixiに、記事の提供を行っているのだ。

「確かに、一昔前までは、競合メディアと組むということはあり得ませんでした。しかし近年、互いの利益になるなら、相手を問わず積極的に組む、という風潮に変わってきました。コンテンツ提供の代価としてトラフィックをもらう。それがネットの利点ですから」(岩田プロデューサー)

 新聞社の生き残りにとっても、競合他社との連携は、きわめて重要な視点だ。紙メディア事業でいえば、すでに一部は実施されているが、印刷所・販売店の共有化、地方支局の統廃合を含む通信社機能の分離などが考えられる。ウェブメディア事業に関しても、「新s(あらたにす)」(98ページ参照)や、新聞・通信53社の共同サイト「47NEWS」などの取り組みが出てきている。ただし、これらの連携は、あくまで新聞業界内で行われているものであり、むしろウェブメディアへの対抗意識から生まれ、それをいっそう強化するものだ。新聞各社がウェブに活路を見いだすためには、まず「紙メディア対ウェブメディア」という対立概念をこそ捨て去るべきではないだろうか。

(文/松島 拡・西川萌子)

[専門家に聞く!!]
ジャーナリスト 佐々木俊尚氏

「ビジネスとして成立してこそ良質な記事も生まれうるのだ」

 90年代末頃まで、ウェブメディア関連部署は、どの新聞社でもあまり人気がなく、どちらかというと、編集局などで使えない人材が回される閑職でした。さすがに3〜4年前頃から、ウェブの重要性が叫ばれるようになって、人気が上がってきたようですけどね。何しろ、本紙の広告と販売が今後もジリ貧なのは明白なのですから、ウェブに期待している経営陣や記者が結構いるのは当然でしょう。現在は儲かっていなくても、今後、新たな収益源となる可能性は十分にあるわけですからね。

 一方で、ウェブ化によって、新聞社にとって深刻な問題も出てきています。新聞社の多くは、「Yahoo!ニュース」などに記事を提供していますが、どれを掲載するかは、配信先の編集スタッフの判断で決められます。仮に新聞社が重要と見なし、本紙なら一面トップを飾る記事であっても、配信先ではまったく無視され得る状況なのです。つまり、マスメディアにとって重要な機能である、「世の中で今、何が問題なのか」という争点を設定する、いわゆる「議題設定機能」を、「Yahoo!ニュース」を筆頭とするニュースポータルサイトに奪われてしまったわけです。一方、にわかにマスメディア化したYahoo!JAPAN側が、それを喜んでいるかというと、むしろ逆で、自社の影響力が過剰に大きくなってしまったことに困惑しているようです。

 新聞社は、生き残りの方策として、「記事の質を高めることに尽きる」とよく主張します。確かにそれも重要ですが、往々にしてビジネスの視点は欠落している。ビジネスの存在しないジャーナリズムなど存在しませんし、きちんと収益モデルを確立してこそ、いい記事が書けるのです。

 といっても、そもそも発行部数800万部、1000万部という寡占状態自体が異常なのであり、現在の大手新聞社のスケールを維持するのは、どんな方策をもってしても無理があります。ウェブで収益モデルを発掘すると同時に、通信社機能を切り離すなどして経営のスリムアップを図るとか、ターゲットを絞って各ジャンルごとに専門紙として分割し、ネット広告との連動を図りやすくするとかしなければ、生き残るのは難しいでしょうね。

佐々木俊尚(ささき・としなお)
1961年、兵庫県生まれ。毎日新聞、アスキーを経てフリーのジャーナリストに。テクニカルな話題からコンテンツそのものについてまで、ネットにまつわる諸問題に精通する。本誌でも、「佐々木俊尚のITインサイド・レポート」を連載中。



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