>   >   > ファッションブランドとしての【無印良品】研究
第1特集
ファッション特集【特別編】

ヨウジヤマモトがデザインを担当? ファッションブランドとしての“無印良品”研究

+お気に入りに追加

 生活雑貨や食品のほか衣服も多く取り扱い、全世界で700店舗を展開する無印良品。シャツやニットなどのシンプルなアイテムは人気が高く、ユニクロ等の製品と比較されることも多い。では、“ファッションブランドとしての無印良品”はどのような特徴を持っているのか。またファッション業界ではどう評価されているのだろうか。業界関係者に話を聞いた。

1711_mujirushi_200.jpg
『無印良品とはじめるミニマリスト生活』(KADOKAWA)

 シャツやデニムなどの製品はユニクロと比較される機会も多い無印良品。そのファッションアイテムは「デザインは極めてベーシック」「価格に対して高品質」というイメージが強く、価格帯はファストファッションと同程度~やや高めという印象だ。

 では、「アパレルブランドとしての無印良品」は、ファッション業界関係者からはどう見られているのだろうか。メンズファッションバイヤーのMB氏は次のように話す。

「公表はされていませんが、無印の洋服のデザインはヨウジヤマモトが手がけたものもあると言われています。シンプルなシャツやニットの評価はとても高いですね。一方で無印は雑貨や食品も販売していますし、アパレル側の人間からすると、ユニクロやファストファッションのお店とは立ち位置が違う存在なのかな……とも思います」

 では、具体的にはどこが違うのか。

「ユニクロはベーシックを謳いつつも、やっぱりトレンドは追いかけているんです。パンツやシャツなどの定番品も、トレンドに合わせて裾幅や肩幅を変えていますし、最近流行のビッグシルエットのアイテムも積極的に扱っています。一方で無印にはビッグシルエットのアイテムもほとんどなく、定番品のデザインを大きく変えることもない。“本当の意味でのベーシックウェア”を作り続けているイメージです。流行を追いかけないという点で、やはりファッション業界からは一歩身を引いている印象がありますね」

 メンズファッション誌の編集者も、「無印にもビッグシルエットを意識したアイテムは少しありますが、ユニクロほど思い切らないんですよね」と話す。

「価格帯としても、チノパンやデニムはユニクロより高いし、デニムには1万円を超えるものもあります。どの商品もコスパがいいのは間違いないですが、ユニクロやファストファッションの店舗とは一線を画している印象があります」(メンズファッション誌編集者)

 そんな無印良品のアイテムが世の中で大ウケしたのは、ノームコアが大ブームになった2~3年前の時期。ノームコアとは“normal”と“hardcore”などの“core” を組み合わせた造語。普通のアイテム、シンプルなアイテムこそ逆にオシャレ……という考え方だ。

「あの時期の無印はすごい人気でしたね。特にオックスフォードのボタンダウンシャツは雑誌『Begin』でも賞賛されて、『このシャツを毎年買ってローテーションしています』という人も多くいました。ノームコアのブームが一般層に降りてきた去年あたりまでは、ファッション誌が無印のアイテムを取り上げることも多かったです」(メンズファッション誌編集者)

 MB氏も「ノームコアがブームの頃は『変にブランドの服を買うよりも無印のほうがいい』『シャツは無印しか着ない』という人も多かった」と語る。だが、ファッション業界の流行は徐々に変化していった。

「ノームコアのブームで『服はシンプルなものでいい』『シンプルなものこそカッコいい』という価値観が広まりましたが、ファッションは相対評価の世界。みんなが同じものを着ると、その価値は失われていきます。実際、最近のコレクションでは刺繍やプリントを使ったアイテムが増えていて、装飾性を重視するのが1つのトレンドになっています。ユニクロやGUはその点も意識して、シンプルなアイテムにも流行を取り入れた味付けをしていますね」(MB氏)

 一方で無印はノームコアのブームが去っても、製品のデザインを大きく変えることはなかった。

「無印のファッションアイテムはどこまでもノームコア。本当になんのデザインもない、極めてシンプルなアイテムを作り続けています。ファッション屋さんであれば、『トレンドを追わないと価値観の変化に置いていかれる』という恐怖心があると思いますが、無印にはそれがなさそうですよね。だからノームコアの流行が去っても変わらない無印を見て、『やっぱりファッション屋さんではないんだな』と強く感じました」(MB氏)

 そんなファッションブランドとしての無印の強みは、流行とは関係のない部分にある……と考えている人もいるようだ。

「同じベーシックでも、ユニクロは『消耗品としての服を売っている』という印象がありますが、自然な素材感を重視し、環境への配慮なども訴える無印は『ライフスタイルを売っている』という印象があります。実際、リメイク工房を併設している店舗もありますからね。無印の服を買うことは、無印のライフスタイルを身に纏うことであり、『私は自然や環境に配慮しています』というアピールにもなると思います」(メンズファッション誌編集者)

 無印がトレンドを追いかけない裏側には、そのような思想があるわけだ。

「だからデザインを変えるとしても、無印はユーザー視点の機能性を重視している印象です。たとえばジーンズでは、無印はスマホを入れやすいポケットを付けた製品を発売しています。『コンバース以上のクオリティでコンバースより安い』と言われたコットンスニーカーも撥水加工がされていて、インソールが日本人の足に合っていると評判でした。いずれも無印ならではの改良だと思いますね。同じジーンズをリーバイスが作ったら『いらないもん付けやがって!』と怒る人が絶対いますし、コンバースが撥水加工をしたら『キャンバス地がくたびれてくるのがいいんだ!』と言われるはずです(笑)」

 一方でその高評価のスニーカーも「見た目は野暮ったい」(メンズファッション誌編集者)とのこと。トレンドより機能性や自然な素材感を重視する点は、ファッションブランドとしてはやはり弱点でもあるのだ。

「今年になってヴェトモンやオフホワイト、ゴーシャラブチンスキーといったハイストリート系のブランドがはやり始めると、無印はだいぶ戦いづらくなりました。無印はもともとアメカジテイストが強く、良くも悪くもベーシックなので、ハイストリートのブランドとは相性が悪いんです。洗いざらしのシャツなども野暮ったさがありますし、素材感からしてキレイめな雰囲気を装えないんですよね。だから今のトレンドに合わせた着こなしをすると、無印のアイテムを1つでも入れたらバランスが崩れちゃうし、僕も最近は『無印の服を着る』という発想が一切なかったです」(メンズファッション誌編集者)

 無印の服は良くも悪くも日常着で、「“こだわりがないのがこだわり”みたいな感じ」(メンズファッション誌編集者)というわけだ。

「H&Mの服であれば、『サッと全身を揃えてパーティーへ』なんて買い方もできますが、無印ではそれは不可能でしょう。ファッション誌の編集者としても、全身無印での出社は相当キツいですよ。実際にやったときは『休日のパパ?』ってバカにされましたから(笑)」

 MB氏も「全身を無印で固めるとやはり物足りなくなる」と話す。

「特にシンプルなコートなどのアウター全般はちょっと厳しいですね。シンプルなアイテムは、襟のバランスやポケットの位置をうまく調整できていないとビジネスウェアに見えてしまう。無印のアイテムは、そのあたりの調整があまり上手くできていないように見えます」(MB氏)

一方で、頑なにベーシックを追い続け、大きく変化しない点は無印の強みでもある。

「あくまでファッションを商品カテゴリーの一つとしてとらえているからこそ、無印はそのような姿勢を維持できるんだと思います」(MB氏)

 流行に左右されず、品質や機能性を重視して硬派な商品を作るため、業界全体では特異な立ち位置を維持できる。ファッション業界における無印は、テレビ業界におけるNHKのような存在なのかもしれない。

(取材・文/古澤誠一郎)


Recommended by logly
サイゾープレミア

2017年12月号

映画のミカタ

映画のミカタ
    • 【ハリウッド】の性接待(禁)事情
    • 男女問わず性生活を楽しんだ【ドロシー】
    • 仕事のついでにHした【マリリン・モンロー】
    • マーベル無許可の【スパイダーマン】
    • 女でも容赦なしの【イタリアンスパイダーマン】
    • 映画における【ゾンビ】進化論
    • 映画の【ゾンビ】はこうして進化した!
    • 【ラテンアメリカ】の闘う革命映画
    • 【キューバ】とハリウッドの関係
    • 【間宮夕貴】ロマンポルノに魅せる!
    • 斜陽産業【ピンク映画】最前線
    • 【ピンク映画女優】緊急座談会
    • 2017年【日本映画】裏事情
    • 【ジャニーズ】ゴリ押しで邦画が危機!?
    • 【人種差別描写】の変遷
    • 【LGBT描写】を可にした『ムーンライト』
    • タブーなき【差別映画】闘論史
    • 常識を覆した【ディズニー】
    • 日本公開不能な【反日映画】
    • 【軍艦島】の国内批判
    • 【スパイ映画】の敵役と国際情勢

チラリと魅せる和モノ写真進化考

チラリと魅せる和モノ写真進化考
    • 【彩川ひなの】ハレンチボディを毛布で包む

真木しおり、Gカップのリムジンパーティ

真木しおり、Gカップのリムジンパーティ
    • 【真木しおり】爆乳JKのお戯れ

NEWS SOURCE

    • 【安倍首相】側近が仕掛けた衆院選戦略
    • 【キムタク】が東野圭吾の原作にダメ出し!?
    • 【紗栄子】の芸能界処世術

インタビュー

    • 【井本彩花】美少女コングランプリは未来の大物!
    • 【原田眞人】『フルメタル・ジャケット』から学ぶ映画論
    • 【峯モトタカオ】次世代打楽器ハンドパン

連載

    • 【橋本マナミ】いつかさらわれたいんです。
    • プレ東京五輪で優勝した期待の自転車選手
    • 【小島瑠璃子】好きになってもいいですか?
    • 高度に発達した【広告技術】の真実
    • 里美ゆりあ、さかもと未明、小池百合子の共通点は?
    • 【BOSS THE MC】20年間〈トーク〉をやめなかった男
    • 【アニソン音頭】が列島を制覇する
    • 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」
    • 【クライヴ・デイヴィス】黄金の耳を持つ名物社長
    • 【山尾志桜里】当選に見る政治史
    • 脳を破壊する【ロボトミー】ノーベル賞の理由
    • 町山智浩の「映画でわかる アメリカがわかる」/『女神の見えざる手』
    • 国民はなぜ「現状維持」を選んだ――【衆議院選】の総括
    • 小原真史の「写真時評」
    • サザエのアンチエイジング
    • ジャングルポケット/毎分1万5000回転!ハードすぎるローターがスゴイ!
    • 【半沢直樹】夫婦間呼称問題、セレブ妻が見せた女性側の内紛
    • エロいラップをする女性ヒップホップグループ
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 幽霊、文化の墓泥棒が集う映画館で。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』