>   >   > 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」41回/フーコー『性の歴史』
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哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」41回

【哲学入門】統計データをつかって社会の問題を把握したり解決しようとすることは権力にあたる。

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(写真/永峰拓也)

『性の歴史』全3巻

ミシェル・フーコー(渡辺守章・田村俶/訳)/新潮社/2400円(I)、2900円(Ⅱ・Ⅲ)+税
第1巻『知への意志』、第2巻『快楽の活用』、第3巻『自己への配慮』からなる未完に終わったフーコー最後の著作。人間の生を管理する近代の権力を分析し、古代ギリシャ・ローマから現代まで性と社会の諸相を論述する。

『性の歴史』より引用
君主の権力がそこに象徴されていた死に基づく古き権力は、今や身体の行政管理と生の勘定高い経営によって注意深く覆われてしまった。古典主義の時代における様々な規律制度――学校とか学寮、兵営、工房といったもの――の急速な発展である。同時にまた、政治の実践や経済の考察の場で、出生率、長寿、公衆衛生、住居、移住といった問題が出現する。つまり、身体の隷属化と住民の管理を手に入れるための多様かつ無数の技術の爆発的出現である。こうして「生-権力」(ビオ・プーヴォワール)の時代が始まるのだ。その発展を見る二つの方向は、十八世紀にはなお明確に区別されたものとして立ち現われている。規律の側には、軍隊や警察といった制度がある。戦術について、技能習得について、教育について、社会の秩序についての反省である。(中略)住民=人口の調整の側にあるのは、人口統計学(デモグラフィ)であり、収入と住民の関係の算定であり、富とその循環の、生とその確率的長さの図表化で(中略)ある。

 近年、統計学という学問がとても注目されています。ビジネス書には統計学を指南する本があふれていますし、大学でも統計学を教育課程のなかに組み込むところが少しずつですが増えています。少しまえに「ビッグデータ」という言葉が流行ったように、さまざまなものが電子ネットワークによってつながれ、これまでとはケタ違いの量のデータがそこから集められるようになったことで、そのデータを解析する統計学の力があらためて見直されているのでしょう。

 ただ、振り返ってみると、こうして統計学に注目が集まるようになるまえから、私たちは統計にもとづいて現状を認識したり改善したりすることに慣れ親しんできました。統計とは、特定の現象を数量によってあらわすことであり、またそのあらわされた数量のことです。

 たとえば私たちは各国の経済規模をGDP(国内総生産)によって把握することに慣れ親しんでいますよね。そしてそれが何パーセント増えたのか(減ったのか)、どうしたらそれを増やせるのか、ということを真剣に議論しています。あるいは経済現象以外のところでも、私たちは日本の毎年の出生数や出生率をとても気にしますよね。日本では長らく少子高齢化が問題になっているからです。そして、どうしたら出生数や出生率を高められるのかを、それこそ国民的なレベルで議論しています。

 ほかにも私たちは、平均寿命や罹病率、自殺死亡率、交通事故死者数、空き家率、自動車販売台数、米消費量などなど、あらゆる現象を数量によってあらわし、それをつうじて現状を把握し、その現状を改善するためにどうやったら対象の数量を増やしたり減らしたりできるのかを日々考察しています。それだけ私たちは、問題を把握したり解決したりするために統計に依存している、ということですね。

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