サイゾーpremium  > 連載  > 法“痴”国家ニッポン  > 河合幹雄の法痴国家ニッポン【55】/三権分立から考える【トランプ】の弱さ
連載
河合幹雄の法痴国家ニッポン【55】

【トランプの大統領令】三権分立システムから考えるトランプ大統領の隠された“弱さ”

+お気に入りに追加

法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

トランプの大統領令

トランプ大統領は就任後、中東・北アフリカ7カ国の出身者の入国を禁止するなどの大統領令を乱発。対象国からの渡航者らが米国への入国を拒否されるなどの混乱を招いた。各州の連邦地裁が大統領令の一時差し止めを決定すると、現職の大統領が連邦地裁判事と司法制度を公然と批判するという前代未聞の事態へと発展。大統領と司法の対立が深刻化している。

【トランプの大統領令】三権分立システムから考えるトランプ大統領の隠された弱さの画像1
『トランプ』(文藝春秋)

 「メキシコ国境に壁を建設する」「環太平洋連携協定(TPP)から離脱する」――。

 2017年1月20日の就任直後からトランプ大統領は、選挙公約として掲げていた突飛な政策を実行に移すべく、数々の「大統領令」にサインしました。同国におけるこの大統領令とは法律と同等の拘束力を有し、署名後ただちに効力を発揮するもの。額面通りなら国内外の政治経済が大混乱しそうですが、現状、そうはなっていない。同国の司法が大統領令に“待った”をかけたからです。

 たとえばニューヨーク州などの連邦地裁は、中東・北アフリカ7カ国の出身者の入国を禁止する大統領令に対し、発令後すぐにその一時差し止めを命じる仮処分を下しました。それに対してトランプ大統領は連邦地裁判事を批判したものの次の一手を打てず、早くも政権運営に行き詰まりつつあります。

 この一連の騒動を眺めたとき、こんな疑問が湧いてくるのではないでしょうか。はたしてアメリカで一番の権力者は誰なのか、と。確かにアメリカ大統領は、軍の最高指揮官であり、一般には“世界最強の権力者”のようなイメージがあります。ところが現実には、裁判所の理解と議会の承認なしには、政策ひとつ実行することすらままならないのです。

 三権分立。行政・司法・立法が互いに牽制し合うことによって権力の集中や暴走を防ぐという近代国家の発明品たるこのシステムにおいて、では、アメリカの行政権トップたる大統領の”強さ”はどう位置づけられるのか? それを説明するには、国によって千差万別な三権の関係、そしてその背景にある歴史を理解する必要があります。今回は、他国との比較から、現代アメリカの三権分立と“国のトップ”のあり方について考えてみましょう。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年5月号

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ