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大石始のマツリ・フューチャリズム【12】

祭りというハレの日に長襦袢をまとい、化粧をする――女装文化から見える祭りの側面

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――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!

祭りというハレの日に長襦袢をまとい、化粧をする――女装文化から見える祭りの側面の画像1
今年4月に開催された静岡県の「大瀬まつり」。女装した男性が海に向かって俵を投げ、それを拾った青年らが神社で参拝し、漁業における大漁と航海の安全を願う例大祭だ。

 4月15日、山梨県笛吹市(合併前の一宮町)の浅間神社で春の例大祭「おみゆきさん」が行われた。平安時代から続くこの神事の特徴は、神輿をかつぐ男たちが全員“女装”しているということ。顔を真っ白に塗りたくり、赤い長襦袢をまとった姿を女装と呼ぶには少々奇異だが、これが「おみゆきさん」の正装だ。浅間神社の祭神である木花開耶姫が女性の神様のため、その習慣が生まれたともいわれるが、はっきりとした由来や発祥の時期は不明。祭り当日は女装コンテストも行われ、この日1日、一宮は煌びやかな男たちで埋め尽くされる。

「おみゆきさん」のように女装した男たちが担い手となる祭りは、全国的に見ても、実は決して珍しいものではない。東京都東葛西の奇祭「雷の大般若」は、真っ赤な口紅をひいて女装した男たちが経箱などを持って街中を全力疾走する。また、神奈川県戸塚区の「八坂神社のお札まき」で主役を担うのは、姉さんかぶりと襷がけで女装した男たち。音頭取りは島田髷のかつらを装着するのが習わしとなっている。大漁と航海の安全を祈念する静岡県沼津市・大瀬神社の例大祭「大瀬まつり」では、化粧と長襦袢で女装した漁師たちが船の上で歌い踊る。

 こうした神事のみならず、かつては一部の盆踊りでも女装の習慣があったといわれている。例えば、夏の大阪の風物詩「河内音頭」では昭和20年代まで女装・男装の習慣があり、タオルや手ぬぐいで顔を隠す風習もあったという。こうした盆踊りにおける女装・男装、および顔を隠す習慣は、かつては全国各地で見られたものだった。だが、戦後から高度経済成長期にかけての時期にその多くが消滅。冒頭で紹介したような神事における女装が各神社の公式行事として保護されてきた一方、盆踊りの女装は生活の中で自然発生的に生み出されたものが多かったため、時代の流れと共に消滅してしまったと思われる。

 では、なぜ祭り・盆踊りと女装・男装は結びついたのだろうか? そもそも祭り・盆踊りの原点とは、日常生活(ケ)で縛られているものから自由になり、非日常的な祝祭空間(ハレ)の中で祖霊や神と交信することにある。そのため、祭り・盆踊りには非日常を作り出すためのさまざまな仕掛けが用意されている。やぐらと提灯などの演出道具はもちろん、紙垂で結界を張って神聖な場所を作り出したり、たいまつを焚いて場を清めたり、そろいの装束に身を包んだりと、あらゆる方法がとられるわけだが、性別を超えた存在へと生まれ変わる女装や男装もまた、そうした方法論のひとつといえる。

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