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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第6回

実はスマホ後進国の日本――iモードとLINEのせいで日本人が断絶している?

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通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

 猫も杓子もスマホの昨今、毎日のようにアプリや新サービス、新型スマホの話題に事欠かず、スマホビジネスは「儲かるビジネス」の代表格と見られている。ところが、スマホの普及率は、いまだ5割に届いていないのだ(2014年4月現在)。実は日本人の多くはまだ従来型ケータイで、スマホへの移行も鈍化しており、日本は従来型ケータイとスマホの間で、分断されつつある。ケータイ業界の内部事情と裏側から、日本のマス崩壊を解き明かす。

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↑画像をクリックすると拡大します。※2014年3月末時点の日本のスマートフォン契約数は、5734万件で端末契約数の47.0%にまで上昇(MM総研調べ)。

クロサカ 今回は僕も仕事で深くかかわっているケータイ業界について、ケータイジャーナリストの石野純也さんに伺います。いきなりですが、スマホは日本で普及しているんですか?

石野 昔よりは普及しているけど、海外と比べて普及していないですよね。東京だけで見ていると普及しているように見えますけど。

クロサカ やっぱり! 東京だと、むしろスマホじゃないと人間じゃないくらいの状況ですが、地方だと仙台くらいの都市でも、スマホ普及率は5割に届いていないんじゃないかな。

石野 僕も同じ感覚です。理由として、多くの人がそんなにアプリを必要としていないのだと思う。以前、浜松に住んでいる弟が、初代のXperiaを買ったけど「使わない」と言うんです。なぜなら「マップがなくても行くところはわかるし、鉄道に乗らないので乗換案内もいらない。ネットを見るのは家のパソコン」から。つまりスマホって、電車移動が多い都会のライフスタイルにフィットしたものなんですよ。

クロサカ でも、車社会のアメリカでは、日本以上にスマホが普及していますよね。

石野 アメリカにはiモードがなかったのが大きいですね。SMSはあったけどケータイ同士だけで、パソコンの電子メールとは互換性がなかった。だからiPhoneが出る前には、パソコンの電子メールと互換性があったブラックベリー【1】がビジネスマンにはやった。そしてiPhoneで、パソコンと同じようにメールが送れてネットが見られるということで、普通の人も飛びついた。だから、アメリカでのiPhoneのインパクトって、日本におけるiモードみたいなものだったかもしれない。

クロサカ ということはスティーブ・ジョブズ【2】は、アメリカ版夏野剛【3】さんということなのか。

石野 でも、ドコモの500iシリーズって、すごかったですよね。あんな機械的に付けられた型番が一般の人にブランドとして受け入れられていましたから。

クロサカ 確かにすごかった! そう考えると、あの頃はiモードこそマスでした。それと比べて、今のスマホはマスと言えるのでしょうか?

石野 iPhoneがこれだけ普及したけど、まだマスではない。おそらく、従来型ケータイがなくならない限り、出荷台数もどんどんペースが落ちていくのでしょう。従来型ケータイは、ちょっとしたスマホ並みの機能を備えているので、アプリを必要としない人たちは、料金も上がるし、スマホに乗り換えるメリットがないんですよね。

クロサカ 実は地方では、パケット定額サービスに未加入の人が多いです。メールが日に数通、たまのネットはせいぜいヤフーと楽天。全部従来型ケータイで済みますね。海外だと、そういったことすらスマホが必要。見方を変えると、日本はそもそも「スマホ」(と同じサービスの)普及率が100%なのかもしれません。

石野 一方で、従来型ケータイって、どんどん値段が上がっていますよね。もはや数が出ないし、作れるメーカーも減ってしまいました。サービスも、ヤフー、楽天、あとツイッターくらいまでは従来型ケータイで使えるけど、いつまでも続けるとは限らない。実際、グーグルはさっさと脱従来型ケータイに舵を切っちゃいました。従来型ケータイ周辺のエコシステムが崩壊し始めている。

 あと、従来型ケータイが残り続けることで、最も大きい問題がメールです。

クロサカ そうなんですよ! 子どもが小学校に入るとPTAの活動があるんですが、親同士の連絡が大変。従来型ケータイしか持っていない親御さんはまだまだ多いし、Gメールから送るとフィルターではじかれてしまう。

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