サイゾーpremium  > インタビュー  > 【tofubeats】「水星」発表から10年が経過

――10年前、神戸のベッドルームで名曲「水星」を生み、「平成生まれのトラックメイカー」と呼ばれていたtofubeats。東京への移住、結婚、コロナ禍を経て作り上げた新作とは?

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(写真/西村満)

2010年代のアンセムとして、今なお若手アーティストから繰り返しカバーされ続けている代表曲「水星」が世に登場して今年で10年。音楽プロデューサー、DJ、さらにはシンガーソングライターとして、クラブミュージックはもちろん、ヒップホップやJ-POPの領域で広く活躍してきたtofubeatsが、フルアルバムとしては約4年ぶり、ミニアルバム『TBEP』からも約2年ぶり──つまりは、丸々コロナ禍の状況で作られたニューアルバム『REFLECTION』を完成させた。

「コロナ禍のアルバムととらえられるだろうし、実際そういうものにはなっていると思うんですけど、“鏡/反射”という今回のテーマ自体は、それより前から決めていて。実は2018年の年末に、突発性難聴になってしまったんです。最初の1カ月ぐらいは、やっぱりすごいヘコんでいたんですけど、だんだんその状況が面白くなってきたというか、これはもうネタにするしかないなと思って(笑)」

耳が聞こえなくなったことを自覚した夜、出先のホテルの一室で鏡に向かって自撮りした写真をイラスト化した本作のアートワーク。それが象徴する“鏡/反射”というテーマには、どんなニュアンスが込められているのだろうか。

「鏡に映る自分とか写真の中の自分って、自分が思っていたのとちょっと違ったりするじゃないですか。イメージと現実の乖離というか。その最たるものが、耳が聞こえなくなる現実だった。鏡に映る姿は変わらないのに、耳が聞こえなくなっている。そこで次のアルバムは“鏡/反射”をテーマにしようと決めて、それと同時に日記を書き始めたんです。その日記をまとめたものが、アルバムと同日に出る『トーフビーツの難聴日記』(ぴあ)という本なんですよね」

治療の甲斐もあり、耳のほうは徐々に回復していったものの、そこに今度はコロナ禍がやってくる。見えないウイルスにおびえる日々は、“イメージと現実の乖離”というテーマをさらに深化させると同時に、彼の中で音楽との接し方や曲の作り方そのものも大きく変えてしまったようだ。

「そもそも現場でDJをやれなくなったから、DJ用の新譜をあまり熱心に聴かなくなって。曲を作っていても、クラブで流すことをあまり想定しないようになったんです。だから、普段の自分がDJで使うには複雑すぎるビートをあえて使ってみたり。そういう意味では、DJをまだそこまでやっていなかった大学生の頃のノリに、ちょっと近づいたところがあるかもしれないですね。トレンドを意識するのではなく、あくまで自分の中にあるもの、自分が好きかどうかだけで、今回は決めていこうと。まあ、結果的に結構ポップなものになったので、他人とコミュニケーションを取りたい気持ちはやっぱりあるんだなっていうのは、作りながら自分でも思いましたけど(笑)」

全16曲中9曲が“歌もの”で、特に歌詞の言葉選びはかなり慎重に行ったという本作。そこには、平時とは異なる“今だからこそ”という思いがもうひとつあった。

「かねてよりtofubeatsの問題点として言われていたことがあって……。小器用な若者であることは、まあ間違いないかもしれないけど(笑)、自分が思う以上にマーケティングみたいなものを良しとするイメージを持たれているなあと。実際は全然そんなことなくて、自分の生身の部分を伝えるタイミングが今なんじゃないかと思ったんです。それは本に関しても同じで、この状況下でこういうことを考えながら音楽を作っていたんだよっていうのを、今回はちゃんと提示したかった。だから本のほうも、ぜひ手に取ってみてほしいです。耳が聞こえなくなって以降、コロナ禍も含めた4年間の日々が、そこに克明に記録されているから」

(取材・文/麦倉正樹)
(写真/西村満)

tofubeats(とーふびーつ)

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1990年、神戸出身。中学時代から音楽活動を開始し、高校3年生のときに国内最大テクノイベント「WIRE」に史上最年少で出演する。その後、「水星 feat.オノマトペ大臣」(2012年)がiTunes Storeシングル総合チャートで1位を獲得し、メジャーデビュー。森高千里、KREVA、藤井隆らとのコラボで注目を集める一方、4作のフルアルバムを発表した。近年はさまざまなアーティスト作品への客演やサウンドプロデュースにとどまらず、広告、テレビドラマや映画などの領域でも活躍し、18年には映画『寝ても覚めても』(監督:濱口竜介)の主題歌・劇伴を担当。そして来る5月22日、4年ぶりのフルアルバム『REFLECTION』(ワーナーミュージック・ジャパン)をリリース。収録曲「REFLECTION feat.中村佳穂」「PEAK TIME」「don’t like u feat.Neibiss」が先行配信されている。アルバム発売日には、初の著書『トーフビーツの難聴日記』(ぴあ)も出版。

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