サイゾーpremium  > インタビュー  > 【ralph】「グライムとかドリルとかマ...
インタビュー
日本のドリルに先鞭をつけた? 黒いバンダナを巻くラッパー

【ralph】「グライムとかドリルとかマジでどうでもいい」黒いバンダナの最注目ラッパー

+お気に入りに追加

――2010年代は“トラップ”なるヒップホップのスタイルが世界的潮流となったが、今は“ドリル”がキテる。日本でその先鞭をつけたように見える男は、何をたくらむのか?

2009_P022-023_33_520.jpg
(写真/西村満)

 レゲエ、ドラムンベース、ハウスをミックスした、グライムと呼ばれるUK産ヒップホップ。2000年代に誕生し、性急なラップとビートを特徴とするそれは、日本では長らくマイナーな音楽だったが、今、ralphというラッパーの登場で注目を集めている。彼は19年3月に「No flex man」という曲でシーンに突如現れ、同年9月にEP『REASON』を発表。以後もコンスタントに曲を出し、この6月には新たなEP『BLACK BANDANA』をリリースした。本作では、2010年代に米シカゴで生まれ、UKに飛び火してグライムとも混ざり、さらに近年は米ブルックリンに逆輸入されて活況を呈す、ドリルというヒップホップ・サウンドも取り入れているように聴こえる。

「自分としては全然意識してないです。最近よく『日本にドリルを持ち込んだ』とか『グライムのラッパー』と言われるけど、そんなのはマジでどうでもよくて。俺はいつも、自分がカッコいいと思う音楽をやってきただけ。今はスピード感のあるラップだけど、Double Clapperz(グライムを軸としたプロデューサー・ユニット)と出会うまではBPM90とかの曲もあったし。でも、どうせなら人に合わせたりするんじゃなくて、自分が好きなスタイルで勝ち上がりたい。絶対に勝てない相手を前に『もうやるしかない』という場面でこそ、本気が出せるから」

 横浜で生まれ、各地を転々とした後、今再び横浜を拠点とするralph。過去はつまびらかにしないが、低所得者層が住む団地での過酷な生い立ちを歌ったANARCHYのMV「Fate」(08年)を見て、我がことのように感じたという。

「12歳くらいで『Fate』を聴いて、自分の中でモヤモヤしてたものが言語化されたんですよね。自分と近い境遇が“ゲトー”と表現されていたり、『真っ暗な家に慣れた小2』というリリックはその頃の俺にとってリアルだったし」

『BLACK BANDANA』の表題曲で「メンチ切った13、4、5/かっぱらった目出し帽」とラップする通り、10代前半で悪事に手を染める。

「今、思い返せば悪いことをしてたかもしれないけど、あの頃はほかにやり方を知らなかったし、生きていくためには仕方がなかった。でも、だんだん人間の汚い部分に嫌気が差してきて、10代後半で悪事から距離を置くことにしました。ただ、中学もまともに行ってないし、仕事を探すのも難しかった。それで、人づてにファッションの仕事を紹介してもらって、横浜や原宿のセレクトショップで働いてました」

 そうして働いていたが、音楽への興味は尽きなかった。自分の部屋からできる範囲で音楽活動を始め、遊びで作ったDJミックスをSoundCloudにアップ。その過程で先述のDouble Clapperzや気鋭のグラフィックデザイナーGUCCIMAZEなど、日本語ラップ界の外側で活躍するクリエイティブな人脈が少しずつ広がっていった。

「ラップは、12歳頃からひとりでずっとやってました。でも、決定的に変わったのは去年、ラッパーのTohjiが主催したイベント『Platina Ade』に出たとき。Tohjiは知り合いの知り合いくらいの関係だったけど、ある日、MVに出てほしいとツイッターのDMがあって、そこから話すようになってイベントにも誘ってもらいました。今までで一番大きい会場だったし、自分も気持ちの入ったパフォーマンスができた。そしたら、客はちゃんと反応してくれて、本気で向き合えば結果が出ることがわかった。だから、そこから真面目にラップをやってみようと」

 満員の観客を前に無名の自分がラップすることになったその日を、「まさに『もうやるしかない』状況だった」と振り返る。ralphは悪さをしていた10代前半から、“大事な場面”では黒いバンダナを巻くようにしてきた。だから今、ライブでもそれを巻くと自然と気合が入る。『BLACK BANDANA』は彼にとって狼煙のようなものだ。 

(文/宮崎敬太)
(写真/西村満)

2009_P022-023_img001_200.jpg

ralph(ラルフ)
1998年、横浜生まれ。2017年にSoundCloudで「斜に構える」をアップし、キャリアをスタートする。19年、「No flex man」のMVが話題となり、同曲を含むEP『REASON』をリリース。全曲をDouble Clapperzがプロデュースした。20年2月発表のシングル「Selfish」がスポティファイの「Japan Viral 50」のプレイリストにランクインし、6月には2nd EP『BLACK BANDANA』(ジャケット写真)を発表。トラックはDouble ClapperzのほかMURVSAKIも手がけており、グライムやドリルを昇華したサウンドとラップを堪能できる。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ