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萱野稔人と巡る超・人間学【第14回】

萱野稔人と巡る【超・人間学】――少子化問題から見える結婚と孤独(後編)

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――人間はどこから来たのか 人間は何者か 人間はどこに行くのか――。最先端の知見を有する学識者と“人間”について語り合う。

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(写真/永峰拓也)

前号から続いて社会学者・赤川学氏と議論を展開。少子化とリベラリズムの関係、生物学的な男性の孤独・存在の軽さについて語り合う。

今月のゲスト
赤川 学[東京大学大学院人文社会系研究科教授]

萱野 前回の議論では、日本で出生率が上がらない背景には女性の上昇婚志向があるというご指摘をいただきました。上昇婚とは、女性が自分より学歴や収入、社会的地位が高い男性と結婚することです。そこでおうかがいしたいのは、女性の上昇婚志向は人間の本性に根ざすものなのか、それとも女性の社会的地位が男性と比べて低いという社会的な仕組みによって生まれてくるものなのか、ということです。

赤川 女性の上昇婚志向と少子化問題の関係については、“剥き出しのエゴイズム”のようなものが原点にあると考えています。萱野さんは「日経ビジネス」のインタビューで、リベラリズムは社会が豊かで安全になったからこその“贅沢品”だとおっしゃっていましたね。そして、集団として生き残るために資源を最適化しようとする功利主義のほうが人類にとって根源的な思想だ、と。私も同意見ですが、女性の上昇婚志向のエゴイズムには、さらに根源的なものがあると思うのです。

萱野 上昇婚志向の根源には、人間が集団として生き残ろうとする衝動よりも深い、まずは自分が生き残ろうとする衝動がある、ということでしょうか?

赤川 自分の遺伝子を残そうとする生物学的なエゴイズムともいえるかもしれません。どれだけ多くの子孫を次世代に残せるか、その適応度を最大化するために最適な戦略を選ぶのは生物として自然な行動です。その観点からすると、女性が自分に豊かな生活を提供し、子供の生存確率を上げてくれるパートナーを求めることは、ある意味で当然ともいえます。

萱野 その点でいうと、功利主義の起源にも同じエゴイズムがあるといえるかもしれません。功利主義は集団全体の利益がもっとも大きくなる選択をよい選択だとみなしますが、そもそも人間集団の原型は血縁にもとづく親族です。つまり功利主義の根底には、血縁で結びついた遺伝子を残すための最適解を求めようとする人類の志向性がある。そう考えると、上昇婚志向も功利主義も、どちらも結局は遺伝子を残すためのエゴイズムに行き着きますね。

男女平等は少子化を防ぐか

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