サイゾーpremium  > 連載  > 精神異学~忘れられた治療法~【2】/精神錯乱を【マラリヤ感染】で治癒せよ
連載
精神異学~忘れられた治療法~【2】

【精神科医・岩波明】梅毒末期の精神錯乱をマラリヤ感染で治療せよ!

+お気に入りに追加

[語句解説]マラリヤ療法

1708_ookawa_230s.jpg

20世紀初頭に行われた、精神疾患に対する発熱療法の一種で、患者を意図的にマラリヤに感染させるもの。感染方法としては、マラリヤ患者の血液を静脈注射して行なう。その結、果患者はマラリヤに感染、その40度あまりの発熱によって、梅毒の末期症状である進行麻痺が改善することもあった。この治療法は日本でも行われ、戦前右翼であり思想家の大物、大川周明が受けたことでも知られている。


 かつて精神疾患、特に統合失調症は不治の病と見なされ、有効な治療法が存在しませんでした。そのため今日の視点からすると、多くの奇妙な「治療法」が考案されては姿を消していきました。そうした中で、さまざまな方法で施行されたのが、いわゆる「ショック療法」です。この治療法は、精神疾患の混乱した「脳」に強い衝撃を与えれば回復するかもしれないという、根拠のない仮説から生まれたものでした。

 ショック療法の中で、現在まで形を変えて生き残っているものに電気ショック療法が挙げられますが、今回のテーマとしては、発熱療法の一種である「マラリヤ療法」を取り上げましょう。マラリヤはマラリヤ原虫によって発症する感染症で、熱帯から亜熱帯に広く分布しているもの。マラリヤは断続的に出現する高熱を特徴とし、適切な治療を行わないと死に至ることもある重大な疾患です。

 高熱が精神疾患を改善させるケースのあることは、ギリシア・ローマ時代から知られていました。19世紀の中盤には、腸チフスやコレラ、ジフテリアなどの感染症によって精神症状が改善したことが報告されています。マラリヤ療法は、マラリヤに人為的に感染させ、その時に生じる高熱によって精神疾患の症状を改善させようというものでした。この治療法は、オーストリアの医師ヤウレックによって研究が進められ、彼はマラリヤ療法が「進行麻痺」という精神疾患に有効であることを発見しました。この治療法が考案された当時、進行麻痺は精神科の扱う重要な疾患でした。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年8月号

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 小栗有以(AKB48・アイドル)──多忙な日々の中で心と身体の調和を保つ秘訣とは
    • 水道橋博士(お笑い芸人)──「うつ病」発症は国会の重責が原因ではなかった?
    • 3li¥en(アーティスト)──キャリアは浅くとも人間味がディープすぎるフライガール

連載

    • 【マルサの女】つんこ
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【最終回】【AmamiyaMaako】スタジオはいります
    • 【Yoru】艶やかに躍動する 気韻生動の肉体美
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【アンジェラ芽衣×梅本剛史】身長172センチの女性モデルが “あえて”ツナギを着てみた!
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ