サイゾーpremium  > 連載  > 小田嶋隆の「東京23話」  > 「小田嶋隆の東京23話」/文京区

東京都23区――。この言葉を聞いた時、ある人はただの日常を、またある人は一種の羨望を感じるかもしれない。北区赤羽出身者はどうだろう? 稀代のコラムニストが送る、お後がよろしくない(かもしれない)、23区の小噺。

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(絵/ジダオ)

「八百屋お七って知ってる?」

 と、七子がいきなり話しかけてきたのは、10月の第一月曜日のことだ。

 当時、私が所属していたICS(インター・カレッジ・ソサエティ)というサークルは、毎週月曜日と木曜日の午後、高田馬場の駅の向かいにある巨大な喫茶店に集まるならわしだった。

「サークル」という言い方は、必ずしも正確ではない。ICSは、当時、東京でいくつか生まれていたインターカレッジの社交クラブの走りで、より実態に即した言い方をするなら、メンバーから会費を徴収して、定常的な合コンを開催している一種のパーティー企画集団だった。

 インターカレッジとは言うものの、男子メンバーのほとんどはW大の理工学部の学生だった。あとはT大生が10人ほどと、R大G大など、近隣の大学からそれぞれ数名ずつの参加者がいた。私はW大の本部校舎から通っている少数派だった。

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