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サイゾー×プラネッツ『月刊カルチャー時評』VOL.34

『闘会議2015』ニコニコ史上初のゲーム特化型一大イベントで見えた、ゲーム業界の全体性

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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×稲葉ほたて[ライター]

 いまニコニコ動画では「ゲーム実況」と呼ばれるジャンルが、一大人気を誇っている。業界のあり方すら変えつつあるこのブームを含め、日本のゲームが置かれている状況を、ニコニコのゲームオンリーイベントから読み解いてみよう。

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「闘会議」当日の様子。レトロゲームコーナーに興じるものあり、人気ソーシャルゲームの有名プレイヤーの登場ありと、各所に人が散らばっていた。

宇野 「闘会議2015」(以下、「闘会議」)には、公式放送のコメンテーターとして最終日の午後から参加したんだけど、正直カルチャーショックだった。まず目についたのは、若い女子が実況生主【1】系のブースに大量に押しかけていたこと。彼女たちが「アイドル」として生主や実況者を消費していて、その動員力もすごい。いや、もちろん「歌ってみた」「踊ってみた」の頃からある現象なんだろうけど、それ以上のショックだった。

 それに合わせて、客層の断絶も感じた。例えば中村光一【2】さんの来場に盛り上がる往年のサブカル/ゲーム好きと、実況生主好きの女子中高生という2つの世界観に分かれていて、それらが基本的には没交渉という(笑)。

 ただ、こうした断絶も含めて、ここにはいま「ゲーム」をめぐる状況が全部詰まっていると思った。要するに、スマホがプラットフォームのひとつとして定着した現代のゲーム業界地図がきれいに出ていたと思うのね。大手ソフトメーカーとガンホーのような新興勢力が並んで、中央にはかたくなにスマホを拒否している任天堂が独立して静かに鎮座している、みたいな(笑)。そしてそれとは別にニコニコ動画を中心に、実況というゲームプレイを見るだけ、つまりコミュニケーションツールとしてのゲームという文化が定着した。

 ゲームバブルの崩壊からさらに二重三重の破壊があって初めてゲーム業界の硬直化が結果的にほぐれて、全体性を記述しうるイベントができるようになったんだな、というのが僕の大雑把な感想だね。

稲葉 ニコニコ動画の初期は、同人文化が盛り上がっていったシーンを経験したオタクたちの作ったカルチャーで、担い手は明らかに男が多かったんです。ところが、その後ボカロや歌い手の勢力が強くなるにつれ、10代女子のユーザーが増えていった。宇野さんは「断絶」と言いましたが、それも奇妙な断絶の仕方になっていて、いわゆるかつての同人的なサブカルチャーを相当変質した形で引き継いでいるのが実は10代女子のカルチャーなんです。『艦隊これくしょん』に続いてDMMが出した『刀剣乱舞』【3】が女子に爆発的に受けているのがわかりやすい例ですが、これは近年のオタクカルチャー全体における隠れた論点です。深夜アニメのタイムラインで興奮してるアニメアイコンって、実はいま女子が相当に多いじゃないですか。

宇野 オタクの人数の割合として、起業したり制作側に回るのは男性が多いから目立っていなかっただけで、アニメやマンガはもともと女性ユーザーが多いという説はずっとあるんだよね。それがニコ動経由で、歌い手文化などをきっかけにゲームに流れ込んできたというのは有力な仮説かもしれない。

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