サイゾーpremium  > 限定  > 【山岸由花子】の普通じゃない恋愛模様と地面の記憶

――第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した「ジョジョリオン」。長く愛される「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズに眠る、知られざる音楽的世界を知ればもっとジョジョが面白くなる!

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『Love Deluxe』(シャーデー)

第四部『ダイヤモンドは砕けない』
出演:山岸由花子
スタンド:ラブ・デラックス
引用:Love Deluxe

 まだ"ヤンデレ"という言葉が存在していなかった1992年。恋愛未経験の者の甘き理想を粉微塵にしてしまった人物――それほど衝撃的で、妄執的。そして、あまりにもデラックスな愛を抑えきれない女子高生、山岸由花子の登場である。

 山岸由花子は、第四部の主人公である東方丈助と同じ高校に通っており、仗助の友人である広瀬康一に恋心を抱く。ルックスは美人でスタイルも抜群、とくれば、広瀬康一も日々たくましい妄想に耽る健全な男子高校生だ。そんな彼女に頬を赤らめて恥らいながら、

「あたし、康一くんのこと好きなんです」

 と、愛を告げられたら、二つ返事でOK……しかし、康一は純朴を絵に描いたような男、突然のこともあり戸惑い、返事を躊躇っていると――

「どっちなの!? あたしのこと! 愛してるの!? 愛してないの!? さっさと答えてよっ! こんなに言ってるのに!」

 と、由花子はプッツン。さらに行動はエスカレートし、康一を自宅に監禁。その様はまさにスティーブン・キングの小説『ミザリー』さながらのサイコスリラーだ。その後の台詞はこうだ。

「あたしのことを愛するようになるまでこの家から出さないわ。絶対に! 愛させてみせる! さもないと……殺してしまうかも……ぶっ殺すわッ! 康一くん!」

「このままこのションベンたれのチ●●コひっこぬいてそこから内臓ブチまけてやるわッ! ますます好きになってきたわ! あたしぜんぜん相手にされなくてもいいッ! 康一くんのこと思ってるだけで……」

 と、帰結。これはもう普通ではない。普通じゃない愛、つまり「No Ordinary Love」。このタイトルは、ボーカリストであるシャーデー・アデュを擁するバンド、シャーデーの4枚目のアルバム『Love Deluxe』(1992年)のリード曲で、同曲でシャーデーは1994年にグラミー賞を獲得している。そして、アルバム・タイトルである"ラブ・デラックス"は、言わずもがな山岸由花子のスタンド・ネームだ。

 当時『Love Deluxe』のジャケットで、シャーデー・アデュがヌードを披露したことで衝撃が走ったが、それ以上にジャケットに写し出されたアデュの風貌は、髪型といい眉の形といい、山岸由花子のモデルとなっているのは間違いないだろう。そして、「No Ordinary Love」の世界観こそ、決定的に山岸由花子なのだ。

 非常に張り詰めた静かなトラックに乗せて歌われる詞の内容は、「わたしはすべてを捧げてあなたを愛した」ことをツラツラと述べ、ラストは「I’m Falling」で締めくくられる。PVも観れば、より納得できるだろうが、少々恐怖を感じるラブソングとなっている。

 シャーデー・アデュはメディアへの露出がほとんどないことで知られているが、荒木飛呂彦はそんなシャーデー・アデュの人柄を「じつはこんな女性かもしれない」という発想を「No Ordinary Love」から得たのではないだろうか。 結果的に、広瀬康一と山岸由花子はカップルとなり第四部は完結したが、その後の2人のことは描かれていない。2人は幸せに過ごしているのか、ファンなら気になるところだ。

 ちなみにシャーデー・アデュは1986年に映像作家であるカルロス・スコラと結婚しており、その幸せな毎日をおくっていたものの、『Love Deluxe』制作時にはすでに結婚生活は破綻している(正式な離婚は1994年)。「No Ordinary Love」には、そんな当時の彼女の心境が反映され、不毛とわかっていても一度失ってしまった愛を取り戻そうという執念が込められている。まるで山岸由花子は、そんな彼女の生き写しかのように華麗に髪を振り乱す。


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