──ディック、筒井康隆からフランクル、林芙美子、そしてなぜかモー娘。道重さゆみの写真集までなんでもござれ!?
(写真/河西 遼)
愛読書を挙げればキリがない。ディック、筒井康隆などのSF小説。かと思えばフランクルの『夜と霧』、林芙美子の『放浪記』。一方でアイドルオタクでもあり、自身の「引きこもり時代」にはモーニング娘。道重さゆみの写真集に心癒されていた──。濃すぎる読書遍歴が一部で注目を集めているこのハーフ美少女は、西田藍、21歳。講談社が主催する"才能ある新しい女の子"を探すオーディション「ミスiD」に入賞、昨年デビューしたれっきとしたアイドルだ。
7月に広島県で開催された日本SF大会では「アイドルと真剣にSFを語る」なるイベントで小説家・津原泰水、書評家・大森望と鼎談し、老舗文芸誌「文學界」(文藝春秋)にはコラム「ギャツビーがすきだけどきらいなの」を執筆、"文学アイドル"としての地位を着々と築いている。
「多いときは週に6冊くらいは読みます。今読んでいるのは、19世紀イギリスの女性作家エリザベス・ギャスケルの『女だけの町―クランフォード』。イギリスの田舎町の話なんですが、ちょっと笑えるところが好きです。それと、若手SF作家・宮内悠介さんの『ヨハネスブルグの天使たち』もよかった。ハードな世界を描いていますが、戦争映画にきれいなシフォンのカーテンをかけて、カーテンが揺れて覗き見るような感じで」
本好きのきっかけとなったのは、小1の時に読んだミヒャエル・エンデの『はてしない物語』。さらには歴史書からマンガまで乱読するという彼女が愛してやまないのが、吾妻ひでおのマンガだという。
「彼の作品に出てくる女の子が好き。萌え文化の原型だと思います。性的でもあり、一見都合よく扱われるように見えて一筋縄ではいかない少女たちに惹かれるんです」
「今一番やってみたいことは?」と聞くと、「吾妻ひでおさんの選書の表紙モデル!」と大きな目を輝かせながら即答した。
(文/長倉克枝)
西田 藍(にしだ・あい)
1991年10月20日、熊本県生まれ。12年、講談社主催の「ミスiD」にて準グランプリに相当するミスiD2013受賞。現在も熊本に在住し、仕事のあるたびに上京する生活を続けている。趣味は女学生服コスプレ・研究とSFなどの読書。なお、本文最後にある「吾妻ひでおさんの選書」とは、河出書房新社が発行する「Azuma Hideo Best Selection」を指す。