サイゾーpremium  > 連載  > 更科修一郎の「批評なんてやめときな?」  > 更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【26】/幽霊、液晶の中の猥雑な喜劇を覗く。
連載
更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【26】

今に始まったことではないフジテレビの暗黒……幽霊、液晶の中の猥雑な喜劇を覗く。

+お気に入りに追加

――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

今に始まったことではないフジテレビの暗黒……幽霊、液晶の中の猥雑な喜劇を覗く。の画像1
山田太一と倉本聰はテレビドラマ制作に関連したエッセイが多く、2人の視点を読み比べてみるのも面白い。

 今回は特集記事も書いたので、ひたすらテレビのミステリドラマを観ていたのだが、『貴族探偵』はさておき、観月ありさ主演の『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』が安易なアイドルコスプレドラマの典型で頭を抱えてしまった。どうして20代後半のミステリアス美女が40歳のガサツなおばちゃんになるのだ。夏木マリ主演の『八神くんの家庭の事情』か。連ドラ主演26年連続30回目の記録更新と言われても、現役晩年の金本知憲じゃあるまいし。

 もっとも、フジテレビの暗黒は今に始まったことではなく、社員監督で五社英雄がいたアクション時代劇以外は試行錯誤と枠中断を繰り返していた。『北の国から』のようなヒット作もあったが、これは倉本聰の持ち込み企画にフジ系の北海道文化放送が乗ったことによる偶然の産物で、現代アクションや青春ドラマに強い日テレ、硬軟自在な「ドラマのTBS」、開局から東映テレビ部と組んで刑事ドラマやミステリドラマを作り続けているテレ朝のような独自色は打ち出せなかった。80年代にようやく『月曜ドラマランド』から『スケバン刑事』のアイドルコスプレドラマ路線に活路を見いだしたが、そのチープさを普通のドラマへ近づけると齟齬が生じてしまう。『欽ドン!』に代わって始まった月9では偶然、TBSのトレンディドラマ路線をより軽妙にする効果が出たが、結局、当事者たちは成功の理由をよくわかっていなかったようだ。近年だと、15年の『デート ~恋とはどんなものかしら~』が前述の齟齬を意識的に利用した傑作だったが、いかんせん後が続かない。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年5月号

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ